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第1回ネクストスター名古屋

早めに仕掛け直線独走5馬身差
  細川騎手は自厩舎で重賞初制覇

全国各地で行われてきた2歳のネクストスターも、いよいよ名古屋で最終戦を迎えた。出走資格は地方デビューかつ開催場の所属馬。それゆえ、地方競馬間であれば移籍の有無は問われず、ミトノユニヴァースやニジイロハーピーらは門別でデビューし、名古屋に移籍してきた。

中でも単勝1.7倍の断然人気を集めたのはミトノユニヴァース。移籍初戦の前走1500メートルを1分35秒9の好タイムで勝ったことが評価を大きく上げた。出走馬中最多タイの3勝を挙げる同馬主・同厩舎のミトノウォリアーの持ちタイムより1秒3も速く、2歳戦のレベルが高い門別で1勝している点もファンには魅力的に映っただろう。その2頭はこれまで岡部誠騎手が手綱をとってきたが、お手馬が重なったことで岡部騎手はミトノウォリアーに、ミトノユニヴァースには角田輝也厩舎所属でデビュー4年目の細川智史騎手が乗ることとなった。

レースはリンクビーナスが一旦は先頭に立ったが、1コーナー手前でニジイロハーピーが先頭へ。ミトノユニヴァースは出ムチを2発入れられたがダッシュがつきづらく、外のネッサローズが前に入った。それによってミトノユニヴァースはやや後手を踏む形となったが、なんと1コーナーを回ったあたりで早くも外から動いた。向正面に入ると前2頭に並びかける強気な競馬で、並みの馬なら直線でバテてしまいそうなところだが、ミトノユニヴァースは3コーナー過ぎからリードを広げ、5馬身差で初代ネクストスター名古屋の王者に輝いた。

その瞬間、「よしっ!」という雄叫びが角田調教師のいる辺りから聞こえてきた。本人は「そんな声、出ていました?(笑)」とあしらい、声の主は分からないが、愛弟子との重賞初制覇は大きな喜びだったに違いない。「調教に乗っている馬だからレースでも乗せる、と最初からしてしまうと全国で戦えるジョッキーになれないと思い、ずっと下積みをさせてきました。嫌な思い、大変な思いを乗り越えて強くなると思いますし、こうしたチャンスをどう生かすか、ですよね」と、厳しく育ててきた胸の内を明かした。

師匠の親心に細川騎手はここ一番で応えたわけだが、レースぶりはまだ課題も多い。「早めにマクって勝てたのは馬が強いから。馬にとって負担の大きな乗り方で、結果良ければ全て良し、ではありません」と辛口評価を下すと、細川騎手も「汚いレースになってしまいました」と反省。岡部騎手からもその点については指摘され、本人にとってはほろ苦い勝利となったが、周囲からの期待と愛情の証でもある。

その岡部騎手とミトノウォリアーは中団の前から最後に差を詰めて2着。「今日はモタモタしていて、成長していかないと勝つのは厳しいかな」と振り返った。

対して、明るい表情だったのはクビ差3着サンヨウラフェスタの大畑雅章騎手だ。単勝177.5倍の低評価ではあったが、前走の勝ちタイムはこのメンバーでも上位。「テン乗りでしたけど、チャンスがあるなと思っていました。直線の伸びがすごくて、距離が延びていいと思います」と大畑騎手は話すと、前走で騎乗した甥っ子の大畑慧悟騎手に向かって「来年のダービージョッキーだな」と冗談めかした。今後の鞍上もローテーションも未定だが、携わった馬の活躍は若手騎手にとって大きな刺激となるだろう。

勝ったミトノユニヴァースの次走は未定。「馬の状態を見て考えようと思います。ゴールドウィング賞もありますが、選択肢は名古屋だけに限りません」と角田調教師は話した。

取材・文大恵陽子

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

細川智史騎手

いい馬ですごくプレッシャーがありましたが、調教にも乗せてもらって感覚を掴めて自信を持てました。スピードを殺して馬の気分を損ねても、と思い早めに動きました。直線は余力があって、気の悪さを出していました。間違いなくこの先も良くなっていくでしょうし、距離が延びても大丈夫だと思います。

角田輝也調教師

1番人気になると分かっていて乗せるのは正直、勇気がいりましたが、細川がこれまで頑張ってきた分、チャンスをあげたかったです。今日は積極的に乗って、すごくいい点もありました。馬は移籍してきた頃は調教で外に張るなど気の悪さがありますが、それがいい方に出ています。