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第23回JBCスプリントJpnI

直線抜け出し人気馬を完封
  地方4頭目のスプリント制覇

JBCスプリントJpnIは、昨年の盛岡から連覇を狙っていたダンシングプリンスがスタート直後に落馬するまさかのアクシデント。その後、カラ馬のままレースの隊列に近寄り、3コーナーではリュウノユキナやケイアイドリーがラチに寄せられリズムを崩すなど、不利を受けた馬もいた。

1枠から好ダッシュを決めたギシギシがハナを切った。ラプタス、イグナイターがすぐ外につけ、ペースが上がった3コーナーでギシギシは後退。替わってラプタスが先頭に立った。直線に入るとリュウノユキナや外を回ったジャスティン、さらにインから盛り返したギシギシも加わって5、6頭が差なく横に広がる混戦。

その中から直線半ばでイグナイターが抜け出すと、大外から猛追するリメイクを1馬身半封じてゴール。笹川翼騎手の左手が大きく上がり、昨年は5着に泣いたスプリント王の座をついに掴んだ。今春のさきたま杯JpnII以来となる4つめのダートグレード制覇で、JpnIは初優勝となった。

場内から沸き上がる『ササガワ』コールに、笹川騎手は大きく手を上げて喜びを表した。

「夢かなと思うくらいの気持ち。本当に気持ち良いです。イグナイターがよく頑張ってくれました。乗せてもらって4回目ですが、馬の感触は掴んでいて、1200メートルはけっして悪くないと自信を持って挑みました。手応えは抜群で、思っていたより1列前で運べたのであとは馬のリズム。ハナに行っている馬をかわしてからが凄く長く感じて、本当に馬も必死に頑張ってくれていましたし僕も必死でした。園田の皆さんのおかげ。僕は良いバトンだけを任せてもらっている立場なので、本当にありがたいですね」と話した笹川騎手は、東日本での近走で手綱を任されてきた。

そしてインタビューの最後には、「園田の皆さんやりました!イグナイターをJpnI馬にできて僕も本当に嬉しい!皆さんにイグナイターの歴史的レースを見せることができて良かったと思います」と高らかにメッセージを送った。デビューから11年目の笹川騎手は現在29歳。もっか南関東リーディングのトップを走っている。2023年も残り約2カ月だが初のリーディングジョッキーが見えてきたところだ。

イグナイターは兵庫の新子雅司厩舎所属。新子調教師は11年に調教師補佐から調教師へ転身してこれが重賞64勝目。イグナイターの調教にもみずから跨がって仕上げ、初めてのGI/JpnIタイトルを兵庫にもたらした。地方所属馬のJBCスプリントJpnI制覇は07年フジノウェーブ(大井)、19年ブルドッグボス(浦和)、20年サブノジュニア(大井)に続いて4頭目となった。

新子調教師はマイクを向けられると「やっと勝てた。今年一番のデキでしたね。これで選択肢が広がったので今後は海外も視野に入れてレースプランを立てたい」と話した。15年の大井・JBCスプリントJpnIに出走させたタガノジンガロが14着で入線後に急性心不全を発症したことから、「きっとジンガロが後押ししてくれたんだと思います」と感極まるシーンもあった。

2着には武豊騎手から御神本訓史騎手へと乗り替わりになったリメイク。クラスターカップJpnIIIからコリアスプリントGIII勝ちと勢いに乗っていたこともあり1番人気に推されていた。直線勝負にかけた末脚に、今後の期待を募らせるばかりだが、「スタートして一歩目でつまずいたのとカラ馬の影響が多少ありました。それ以外はうまくいきましたが走りきらせてあげられなかった気がします。外に出したときは『勝った』と思いましたが、勝ち馬の伸びも良く差し切れなかった。結果を残し切れず申し訳ないです」と御神本騎手は話していた。

アクシデントにより不本意なレースになった馬もいたとはいえ、ゴール前のイグナイターは陽差しの中から1頭違う輝きで抜け出して素晴らしい勝利を見せてくれた。父エスポワールシチーとはJBC父子制覇の勲章となった。

今後、いくつかの選択肢の中から陣営がイグナイターをどう羽ばたかせるのか楽しみでならない。

取材・文中川明美

写真築田純、早川範雄(いちかんぽ)

Comment

笹川翼騎手

厩舎の方々が良く仕上げてくれて、返し馬の感じは素晴らしいなと思っていたので、それも実った結果だと思います。この馬に恥じないよう自分の技術を磨いていかなければと思わせてくれる馬。JBCを地方馬で勝つことは簡単ではないので、皆さんにイグナイターの歴史を見せることができて良かったです。

新子雅司調教師

やっと勝てたという思いですね。今回、仕上げ切った分、ちょっとゲートの中でピリピリしていたみたいなんですけど、笹川騎手がうまく乗ってくれました。気合が入りながら落ち着きもあって今年一番のデキで挑めたと思います。海外も視野に入れてレースプランを組み立てたいと思います。