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第66回道営記念

6頭落馬のアクシデントも
  4コーナー先頭で昨年の雪辱

ホッカイドウ競馬の関係者が目標とする古馬の最強決戦。春のコスモバルク記念を勝ち中央・南関東を転戦してきたシルトプレ、今年の三冠馬ベルピット、ダートグレード2勝のアナザートゥルース、連覇を目指すサンビュートなど各世代のトップホースが集結し、年度開催の締めくくりにふさわしいメンバーとなった。

恒例となった地元・富川高校吹奏楽部による生ファンファーレでスタートした。11頭全頭がそろって飛び出し、エンリルが予想通り先頭でネクサスハートが2番手。ベルピット、スコルピウスのあとに1番人気のアナザートゥルース、2番人気のシルトプレが続く。

向正面でベルピットが2番手に上がり、3コーナーを過ぎたところでさらにレースが動いた。アナザートゥルースとサンビュートが前を窺い、最後方にいたホッコーライデンも追い上げる。各馬がスピードに乗ったタイミングで先頭のエンリルが転倒。後ろのベルピットがつまずき落馬した。後続馬たちも避けきれず、次々と落馬しスタンドからは悲鳴が上がる。

それでも外を回ったシルトプレが4コーナー手前で先頭に立ち、アナザートゥルースが続く。どよめきの中、騎手を乗せてゴールを通過したのはわずか5頭。シルトプレがアナザートゥルースに4馬身差をつけての決着となった。

ゴールした騎手は沈鬱な面持ち。カラ馬も数頭がみずから検量前のスペースに戻り、落馬した騎手が一人、また一人と戻るたびに人に囲まれる。表彰式での勝利騎手インタビューは取りやめとなり、久しぶりに開催されるはずだったジョッキー交流会も中止となった。

6頭落馬の中での勝利となったが、シルトプレは「これで負けたら仕方がない、というくらい悔いのない出来」と石川倭騎手がいうほどの状態に仕上げ、昨年2着の雪辱を果たした。生産した藤原牧場の藤原悟郎代表は、シルトプレの母エアディケムは「開腹手術を5回行った」と教えてくれた。シルトプレが生まれる直前にも手術を行ったそうだが、21歳の今も繁殖牝馬として過ごす。「元気いっぱいで病気もしなかった」2019年生まれの仔馬は、名門牧場が大事に育てた血脈から受け継がれた強い生命力と、遠征によって自ら高めた経験値で頂点をつかんだ。

最終戦の大レースでアクシデントが起きたが、各馬が力を出しきった輝きは失われるものではない。あらためて競馬が危険と隣り合わせの上で、見る者に感動を与え続けてくれていた、と気づく。出走した人馬のけがが軽症であることを祈りたい。

門別競馬場のダートは今季、オーストラリア産の白い砂に換わり、札幌駅からの無料バスやイベントも復活。幅広いファン層が門別競馬場を訪れた。開催日は昨年より3日少なく、馬券発売額は512億8091万円余りで前年を下回ったが、1日当たりの発売額では前年を上回った。

リーディングは2日前にホッカイドウ競馬の年間最多勝記録を更新した落合玄太騎手が153勝で2年連続2回目。田中淳司調教師は140勝で9年連続9回目となった。

取材・文小久保友香

写真浅野一行(いちかんぽ)

Comment

石川倭騎手

(遠征で)経験を積んできたので、どんな競馬でもできるだろうと思い、ポジションはこだわらず流れの中で決めようと思いました。終始余力ある走りだったので、いつでも展開に乗せていける感じでした。馬体も充実して成長を感じています。交流競走でいい走りをしているので、今後勝ちたいと思います。

米川昇調教師