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JBC2023総括


クローズアップ

2023.11.13 (月)

4年ぶりに入場制限のないJBC開催

大井競馬場での開催は2020年以来3年ぶり9回目、門別競馬場では2020年から4年連続となった今年のJBC。新型コロナウイルスの流行により、2020年から入場制限などを行って開催してきたが、昨年の盛岡開催でかなり制限が緩和され(指定席のみ抽選販売。一般入場は事前発売のみとされていたが、結果的には当日販売も実施された)、今年はいよいよ入場制限などがない中での開催となった。

3年前、コロナ禍で初めて開催されたJBCは今回と同じ大井×門別。入場制限や取材規制を敷いて厳戒態勢の中で行われたことを思い出す。当時、大井では事前応募による抽選で、発表された入場は777人。あれから3年が経ち、制限がなくなった今年は開門前からたくさんのファンが行列を作ったため、当初の予定よりも10分早い9時40分に開門となった。開門時の入場者数は約1900人で、最終的な入場者数は2万4506人。門別競馬場ではJBC初開催だった2020年から昨年まで入場制限が行われ、2020年240人、2021年667人、2022年842人と推移してきたが、今年は制限なしで2606人が来場した。

大井競馬場の場内はたくさんのファンで賑わい、この開催だけのJBC特別仕様で歴代の勝ち馬たちの写真が並んだ。レストランや食堂、売店はどこも長い列。オープンスペースであるウマイルスクエアでは『北海道なまらうまいもんキャンプ』が行われ、北海道の味を堪能できるキッチンカーがずらり。その中心にあるメガツリーの下には、家族やカップル、友達同士などで楽しむファンの姿があった。小さな子供たちはメガツリーを珍しそうに眺めたり、追いかけっこをしたり、まるでピクニックをしているような光景が印象的だった。振り返ってみると、3年前と今回とでは、競馬場の雰囲気も社会全体の雰囲気もまるで違う。まだまだ油断できない部分もあるけれど、それでも、家族や友人たちと気軽に「競馬場へ行こう!」と言えるようになった今、やっとコロナ禍前に戻ってきたと実感した。

開催前に入れ替えた砂の影響は?

今回のJBC開催の直前、大井競馬場ではより安全な馬場を目指して砂の入れ替えが行われた。以前の砂は採取地の砂資源が減少しており、安定的な砂の採取が難しくなってきたこと、粒子が細かいためにシルト化(砂の粒子が細かくなって粘土質になること)しやすく、雨の日などは騎手のゴーグルや馬の体についた砂が取れづらいという面から、関係者から砂の変更についての要望が出ていたという。今回はこれまで使用していた青森県産から、タイプの違うオーストラリアのアルバニー産に替わり、砂厚も8cm→10cmに変更されたため、馬場傾向がガラッと変わることになった。

この時期に行われたのは、開催期間が3週間開くのが10月中旬と冬場しかなく、冬場は凍結などの問題があるために、10月2~6日の開催を終えた後、10月29日から始まるJBC開催の前に行われることになった。

10月2日からの開催では、JBCの前哨戦と言えるRoad to JBCの東京盃JpnIIとレディスプレリュードJpnIIが行われ、雨が降って水が浮く不良馬場になったこともあって相当速い時計での決着が続いた。東京盃JpnIIは1番人気だったドンフランキーが1分10秒0というコースレコードで勝利。2011年のJBCスプリントJpnIでスーニがマークした1分10秒1を0秒1上回った。

ドンフランキーのスピード能力を賞賛しつつ、1カ月後に新しい砂で開催されるJBCでは、傾向がまったく変わるのではないかと想像した。すでにオーストラリアのアルバニー産を使用している園田、船橋、門別の傾向を見ると、それぞれに特徴はあるものの、特に砂を変えた当初はこれまでより時計が掛かり、先行有利の馬場傾向になる、というイメージ。実際に10月29日から始まった大井開催も、やはり前開催より1秒5程度時計が掛かる印象で、ある程度先行した馬たちでの決着が目立っていた。

兵庫所属馬がJBC初勝利

各レースの詳細なレポートがあるのでここでは簡単に振り返っていく。

15時20分発走のJBCレディスクラシックJpnIは、1番人気アイコンテーラーが快勝。楽に2番手につけて、直線4馬身引き離す強い内容だった。初の地方コース、タフになった大井の砂などをまったく問題にすることなく新女王に輝いた。マルシュロレーヌ引退後、ダート牝馬戦線は次々に新しい馬が参戦し、レースごとに勝ち馬が異なる戦国時代に突入。その中でも昨年のJBCレディスクラシックJpnIを勝ったヴァレーデラルナと、牝馬ダートグレードで4勝を挙げているグランブリッジの4歳コンビが中心だったが、アイコンテーラーの勝ち方は頭一つ抜けたような印象を受けた。芝でも実績を挙げた上でダートへ転向、初めての地方挑戦でダートグレード競走を勝つというのはマルシュロレーヌと同じ。このまま女王として君臨するのか、今後の牝馬戦線に注目していきたい。

16時00分発走のJBCスプリントJpnIは、この日一番の歓声と盛り上がりの中、兵庫のイグナイターが1着でゴールした。スタートで落馬し空馬となったダンシングプリンスの影響で不本意なレースとなった馬たちもいたが、イグナイターは好スタートから終始スムーズな競馬で力を出し切った。兵庫に初のJpnIタイトルをもたらした新子雅司調教師は、「放牧に出さず、自分で調教に乗って調整してきました。坂路施設がない園田でも、強い馬づくりができると証明できて嬉しい」と語った。イグナイターの勝利は、兵庫の関係者はもちろん地方競馬に携わる人たちにも大きな刺激を与えたのではないだろうか。来年からダート改革が大きく進むタイミングで、地方競馬の施設で調教を積んだイグナイターがJBCを勝った意義は大きい。

16時30分に門別競馬場で発走したJBC2歳優駿JpnⅢは、10月14日に新馬戦を勝ったばかりのフォーエバーヤングが、直線力強く伸びて2連勝を飾った。2着もJRAのサンライズジパングで、地元北海道所属馬は後方から3着に追い上げたブラックバトラーが最先着だった。昨年のこのレースを勝ったゴライコウも、今年のフォーエバーヤング、サンライズジパングも、早めに門別入りして最終追い切りを門別の馬場や坂路で行っている。来年以降もこの流れは続く可能性があり、JRA勢の移動時期にも注目していきたい。

17時00分発走のJBCクラシックJpnIは、オープン特別連勝から挑んだキングズソードが初タイトルを掴んだ。3番手追走から直線抜け出す王道の競馬で3連勝。昨年12月に2勝クラスを勝ち、4歳になった今年は5戦4勝で初重賞制覇と大きく飛躍した。管理する寺島良調教師によると、それでもまだ成長途中だという。これからさらに成長して完成の域に達したら、どんな強さを見せてくれるかとても楽しみだ。1番人気に支持されたメイショウハリオは伸び切れず4着という結果。新しい砂が味方するのではないかと想像していたが、この馬本来の末脚を見ることはできなかった。レース後の関係者の表情は悲喜こもごも。ひとまずダート頂上決戦は終了したが、レースは続いていく。勝った馬たちのさらなる活躍、そして負けた馬たちの巻き返しにも期待したい。

JBC2歳優駿は売得レコード

JBC4競走の売得額は表のとおり。

2023年 2022年 前年比
クラシック 2,660,832,500円 2,500,491,500円 106.4%
スプリント 1,893,263,600円 1,951,771,300円 97.0%
レディスクラシック 1,470,877,700円 1,474,655,100円 99.7%
2歳優駿 1,008,753,000円 946,243,600円 106.6%
JBC4競走合計 7,033,726,800円 6,873,361,500円 102.3%

前年比が一番大きかったのがJBC2歳優駿JpnIIIで、106.6%で10億875万3000円。従来レコードだった2020年の9億7489万8000円を更新した。JBCクラシックJpnIは前年(盛岡)比106.4%の26億6083万2500円。JBCスプリントJpnIは前年(同)比97.0%、JBCレディスクラシックJpnIは前年(同)比99.7%となったが、JBC4競走の合計は前年比102.3%で70億3372万6800円。JBC4競走を含む当日の大井と門別の総売得額は、前年比110.0%で95億2010万1540円だった。さすがに2020年のレコード(100億8854万1950円)には及ばなかったものの、高い水準をキープしつづけている。

来年は初の佐賀開催が待っている。佐賀競馬場ではJBC開催に向け、距離を新設したり、最寄り駅からのアクセスを整えたりと、着々と準備を進めていると聞く。いよいよ本格的にダート改革が始まり、ダートグレード競走が大きく変わる1年。佐賀×門別へとつづく道のりをじっくりと見て行きたい。

赤見千尋

写真 いちかんぽ、NAR