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未来優駿2023総括


クローズアップ

2023.12.26 (火)

ネクストスターが新たに未来優駿に
 ダートグレード3戦はJRA勢が圧倒

ダート路線の体系整備にともない、この年の2歳戦から1着賞金1000万円のネクストスター競走が各地で始まった。今年から未来優駿は従来の南関東の重賞4競走に加え、そのネクストスター8競走が対象レースとなった。これにともない各地の2歳重賞路線にも変更が見られた。各地のネクストスターの日付順に見ていく(カッコ内はネクストスターの実施日)。

金沢(9月24日)ではネクストスターの新設にともない、これまで未来優駿として10月に行われていたが休止となった。

佐賀(10月1日)では、これまで未来優駿として行われていた九州ジュニアチャンピオンがネクストスターのトライアルとなって1カ月ほど繰り上がった。

盛岡(10月3日)ではネクストスターの新設で、同時期に行われていた北海道と交流の知床賞が休止。またこれまで未来優駿として行われていた南部駒賞は、かつての実施時期だった11月中旬に繰り下げられた。

門別(10月5日)ではネクストスターの新設にともない短距離路線の充実が図られ、サッポロクラシックカップが1700メートルから1200メートルに距離短縮。時期も8月下旬から1カ月繰り上げられた(7月27日)。

笠松(10月12日)ではこれまで2歳重賞は牝馬限定のラブミーチャン記念と、年末のライデンリーダー記念の2戦のみだったが、ネクストスターの新設によって2歳重賞が3レースとなった。

園田(10月12日)では、前年まで未来優駿として行われていた兵庫若駒賞の時期が1カ月半ほど繰り上がり(8月31日)、ネクストスターの前哨戦の位置付けとなった。

高知(10月29日)では、従来の黒潮ジュニアチャンピオンシップがネクストスターに置き換わった。

名古屋(10月31日)では、昨年準重賞として新設された弥富記念がネクストスターに置き換わり、その弥富記念は元日に3歳戦として行われる。

そのほか、2歳重賞の拡充を図る主催者もあった。

これまで2歳重賞が行われていなかった浦和では、2022年に準重賞として始まったルーキーズサマーカップ(8月30日)を重賞に格上げ。南関東で一番最初に行われる2歳重賞となった。

兵庫ではこれまで9月下旬の園田プリンセスカップ(牝馬限定)が2歳最初の重賞だったが、前述のとおり兵庫若駒賞が8月31日に繰り上げられ、さらに8月10日には兵庫ジュベナイルカップが新設された。

また高知では、ネクストスターに加え、準重賞の堆金菊特別(9月9日)、潮菊特別(9月30日)、土佐寒蘭特別(11月25日)の4競走が、高知では初めてのJRA認定競走として行われた。

少し前までであればホッカイドウ競馬以外の地方競馬では、2歳重賞はほとんど秋以降に設定されていたが、近年は多くの競馬場で2歳重賞の開始が徐々に早まっている。これは早い時期から高素質の2歳馬の入厩を期待しての変化なのだろう。

各地の2歳戦がレベルアップ

ネクストスターでまず特徴的だったのが、地元生え抜き馬の活躍だ。これまで秋以降の各地の2歳重賞では北海道からの移籍馬の活躍が目立ったが、門別以外7つのネクストスターで北海道からの移籍馬が勝ったのは、もっとも遅い日程で行われた名古屋のミトノユニヴァースだけ。出走全馬が地元デビュー馬だった園田はともかく、それ以外6つのネクストスターにはいずれも北海道からの転入馬が出走していたが、勝ったのは地元生え抜きだった。それだけ全国の競馬場に素質の高い2歳馬が入厩していたと考えられ、実際に勝ち馬の関係者からも「早くからネクストスターを意識していた」というような声が聞かれた。

ネクストスター勝ち馬のせり取引価格を見ても、ウルトラノホシ(佐賀)1650万円、フジユージーン(盛岡)550万円、トラジロウ(門別)792万円、プリフロオールイン(高知)880万円など、以前であれば南関東以外の地方競馬にはほとんど入厩しなかったであろう高額取引馬も少なくなかった。ネクストスターの“1着賞金1000万円”は、2歳馬の流通にも影響を与えたと思われる。

またネクストスターではデビューから連勝で勝った馬が目立ち、それは高素質馬が早くから各地に入厩したことの証でもあるのだろう。ダヴァンティ(金沢)は3連勝、フジユージーン(盛岡)は4連勝、ワラシベチョウジャ(笠松)は5連勝、マミエミモモタロー(園田)は4連勝でそれぞれネクストスターを制した。またトラジロウ(門別)はデビュー戦2着のあと5連勝、プリフロオールイン(高知)もデビュー戦2着のあと3連勝でネクストスターを制した。

南関東の未来優駿対象レースでも連勝馬がいた。ゴールドジュニア(9月21日・大井)ではクルマトラサンがデビューから2連勝、ハイセイコー記念(10月31日・大井)ではダテノショウグンが無傷の5連勝とした。ダテノショウグンの森下淳平調教師からは「ダート三冠を目指す」との言葉が聞かれ、新たな三冠戦線で地方馬として注目の1頭となりそうだ。

先に、ネクストスターでは北海道からの転入馬がいても地元生え抜きの活躍が目立った、と書いた。しかしながらやはりホッカイドウ競馬の2歳馬はトップレベルで強さを見せた。鎌倉記念(川崎)をサントノーレが勝利し、平和賞(船橋)ではカプセル、キタノヒーローがワンツー。その3頭ともが、今シーズンもホッカイドウ競馬で圧倒的なリーディングトップとなった田中淳司調教師の管理馬だった。

未来優駿各競走の勝ち馬の血統では、近年の傾向どおり日本のダートで活躍した種牡馬の産駒が目立った。

ダヴァンティ(金沢)、トラジロウ(門別)の父ダノンレジェンド、マミエミモモタロー(園田)の父ニシケンモノノフ、ダテノショウグン(ハイセイコー記念)の父バンブーエールは、いずれもJBCスプリントの勝ち馬。ウルトラノホシ(佐賀)の父はダートGI/JpnI・10勝のホッコータルマエ、クルマトラサン(ゴールドジュニア)の父はマイルチャンピオンシップ南部杯JpnI連覇のベストウォーリアなど。またサントノーレ(鎌倉記念)の父は北海道2歳優駿JpnIIIを勝ち、ドバイのUAEダービーGIIでも2着に好走したエピカリスで、この世代が初年度産駒だった。

世界にも通じる未来優駿

南関東の4重賞とネクストスター8戦を終えた時点では、北海道だけでなく各地でデビューする地方の2歳馬のレベルが相当上がっているように感じたが、ダートグレードの3戦では中央勢の強さを見せつけられた。

JBC2歳優駿JpnIIIでは、わずか3週前にダートの新馬戦を勝ったばかりのフォーエバーヤングが後方追走から豪快に差し切った。

兵庫ジュニアグランプリJpnIIは、ネクストスター門別を制したトラジロウが果敢に逃げたが、中央でダート2連勝だった2頭の一騎打ち。イーグルノワールがサトノフェニックスをハナ差でしりぞけた。父はアメリカから輸入されこの世代が初年度産駒となるブリックスアンドモルタル。

そして迎えた全日本2歳優駿JpnIは、単勝2倍台で人気を分け合ったフォーエバーヤング、イーグルノワールが3コーナーから馬体を併せて先頭に立ち、一騎打ちかに思われた。しかし直線を向くとフォーエバーヤングがあっという間に突き放して7馬身差の圧勝。3着には鎌倉記念を制していた北海道のサントノーレが入って意地を見せた。

思えば昨年の全日本2歳優駿JpnIを制したデルマソトガケは、3歳になってドバイのUAEダービーGIIを制し、初めての古馬挑戦となったブリーダーズカップクラシックGIで2着に好走。3歳時は日本で走ることなく世界のダートのトップクラスと互角に戦った。

一方、地方馬でも昨年デビューから4連勝でハイセイコー記念を制したマンダリンヒーローが、地方馬として初めてアメリカに遠征し、サンタアニタダービーGIで僅差2着に好走。ケンタッキーダービーGIにも出走(12着)した。

中央だけでなく、日本のダート競馬のレベルはもはや世界のトップクラスと肩を並べるまでになっている。

斎藤修

写真 いちかんぽ