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第69回東京大賞典GI

世界を制した脚で連覇
  ドバイでも連覇目指す

今年の東京大賞典GIで最も注目を集めたのは、昨年の優勝馬であるウシュバテソーロ。ただ、今回は11月4日のアメリカ・ブリーダーズカップクラシックGIからの帰国初戦という点が心配材料で、1.7倍という単勝オッズはそのあたりを含めての数字だったのだろう。

続く2番人気はJBCクラシックJpnIで初重賞制覇を飾ったキングズソードで4.0倍。ここまで無敗のミックファイア(大井)は6.7倍で3番人気となった。さらに10倍台前半にチャンピオンズカップGIで1ケタ着順だった3頭が、ドゥラエレーデ、ノットゥルノ、ウィルソンテソーロの順で続いた。

たくさんの観客に囲まれたパドックで各馬はゆったりとした歩きを見せていたが、ミックファイアだけは鞍下に汗が目立っていた。そして本馬場に出ると、どうにも落ち着かないというような動き。それが影響したのか、ゲートが開いた瞬間に飛びあがるような形になってしまった。

それを横目で見て、スタートから出していったのがウィルソンテソーロの原優介騎手。「逃げる予定はなかったのですが、ミックファイアがゲートで突進したのを見て前に行くことにしたら、誰も行こうとしないので」という判断で先頭に立った。

流れは向正面でハロン13秒台のラップが3回と、同じ舞台のJBCクラシックJpnIと比較すると遅い流れ。そうなると逃げるウィルソンテソーロ、その直後をマークするドゥラエレーデ、3番手につけたノットゥルノが有利になる。ウシュバテソーロはスタート後の先行争いに参加せず、向正面では8番手。はたしてここから間に合うのかと、レースを見守る人々の多くは思ったことだろう。

しかしウシュバテソーロは力の違いを見せつけた。3コーナー手前あたりから馬群の外を通って徐々に加速。最後の直線に入ったところでも7番手だったが、そこから馬場の中央付近を通り、前にいた各馬を一気に抜き去った。

粘り込みを見せたウィルソンテソーロは半馬身差で2着。チャンピオンズカップGIは4コーナー13番手からの2着で、今回は真逆の戦法になったが「センスの良さを見せてくれました」と原騎手は振り返った。

続く3着はクビ差でドゥラエレーデ、そして4着がノットゥルノだから、全体的には前残りの形。ウシュバテソーロはそれで差し切ったのだから、改めて地力の高さを証明する形になった。

その結果にウィルソンテソーロを管理する小手川準調教師は「相手に敬意を表さないとならないですね。でもこちらも充実してきたと思います。今日、装鞍所で(ウシュバテソーロの)川田騎手に『一段と良くなりましたね』と言われたんですが」と苦笑い。そして「まだ4歳。高速ダートも合いそうなので、サウジカップに登録しました」と意欲を見せた。

そしてウシュバテソーロもサウジカップGI(2月24日)に登録済み。2024年から川崎記念JpnIが4月に移るため、サウジカップGIを経てドバイワールドカップGIの連覇を狙う予定だ。

東京大賞典GIの連覇を見届け、表彰式を終えて厩舎へと戻る高木登調教師は、肩の荷が下りたという様子。「ジョッキーは2コーナーでハミを取ったので最後の直線で間に合うと判断したらしいんですが、見ているほうはヒヤヒヤですよね。でもこれまでを考えると、初ダートのレースを勝って、昨年ははじめての重賞でしたが勝てて、そして今につながっているんですからね。馬が“持っている”んでしょうね」と表情が緩んだ。

なお、今年の東京大賞典GIの売上は82億9054万6100円で、地方競馬における1レースあたりの最高記録を更新。また、この日の大井競馬の発売金額も124億円あまりと、1日あたりの最高を記録した。

取材・文浅野靖典

写真早川範雄、築田純(いちかんぽ)

Comment

川田将雅騎手

気持ちを持っている馬だと思います。なによりドバイを勝っていますから、それにふさわしい走りができればと思っていました。今日は馬のリズムを大事にしながら進めました。4コーナーでは前の馬もいい走りをしていましたが、ゴールまでには届くと思いました。

高木登調教師

レースを重ねて良くなっていくタイプで、アメリカから帰ってきてから正直なところ、じっくり仕上げるとはいかなかったです。でも最後はさすがの脚を見せてくれました。昨年のこのレースを勝って、それからずっと高いレベルで走ってくれて感謝しています。来年は7歳ですが、まだ元気に頑張っていきます。