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第38回全日本新人王争覇戦

第1戦を制した細川騎手が優勝
  古岡騎手は1ポイント差で2位

昨年は雪のため全日本新人王争覇戦第2戦の2レース後となる第6レース以降が取り止めとなった高知競馬場。今年も第8レースの前後から雪がチラつき始めたが、新人王は快晴の下、行うことができた。

注目は昨年149勝を挙げた塚本征吾騎手(愛知)。新人王に出場する免許取得後5年以内の騎手の中には通算勝利数がその数字にまだ達していない人も少なくない中、1年間でそれだけの勝利と信頼を積み重ねた。当地で活躍する塚本雄大騎手の弟でもあり、「昔は仲が悪かったですけど、兄の姿を見て騎手になろうと思ったこともあり、いまは仲がいいです」と兄弟並んで笑顔で話した。

JRAからは昨夏に史上最年少で函館開催リーディングに輝いた佐々木大輔騎手や、2023年度のJRA賞・最多勝利新人騎手に輝いた田口貫太騎手などが顔を揃えた。

第1戦はそのJRA2騎手が人気を分け合う形。内から佐々木騎手が逃げ、外に田口騎手がついて前半400メートル26秒0のゆったりしたペースとなった。向正面半ばにさしかかると先団7頭がひとかたまりになり、その馬群の中にいたのが細川智史騎手(愛知)。手応えがありそうに見えるが、前も両隣も囲まれて万事休すかと思われたが、3~4コーナーで馬群がバラけたところを逃げた馬の内から抜け出すと、粘る佐々木騎手に1馬身差をつけて勝った。

ハナ差で田口騎手が3着に入り、4着は4コーナーで勝ち馬の内を選んだ西塚洸二騎手(JRA)、5着はさらにインでほぼ内ラチ沿いを回った塚本騎手だった。「外に出そうと思ったんですけど、外にいた馬の手応えが良く見えずに内に行ってしまって。判断ミスです」と塚本騎手。さすがに高知のラチ沿いは砂が深すぎて最後は脚が上がってしまった。

JRA交流競走を挟んでの第2戦のため、各騎手はバタバタと片づけをするとすぐに装鞍に向かい、合間を縫って地元騎手とレース映像を振り返る姿もあった。

第2戦は近走で逃げていた馬が多数のメンバー構成だったが、大外枠から加茂飛翔騎手(佐賀)が好ダッシュから先手を取って前半400メートルは第1戦よりもやや速い25秒5で運んだ。縦長の隊列となり、最後方から徐々に位置取りを上げた古岡勇樹騎手(川崎)が3コーナー大外からグングン脚を伸ばして勝利。

2馬身差の2着は直線一旦は先頭に立った鷲頭虎太騎手(JRA)で、「しまいに甘い面を僕が頑張って動かせればと思ったのですが」と、障害レースとの二刀流に挑戦中の若武者は悔しさをにじませた。

さらに4馬身差の3着は魚住謙心騎手(金沢)で、4着が塚本騎手。5着の加茂騎手はレース前に騎乗馬がゲートに寄りつかず数分ゴネてしまい、「スタート前に体力を使ってしまいました」と肩を落とした。第1戦でも佐々木世麗騎手(兵庫)が本馬場入場でその場に立ち止まろうとする騎乗馬を上手く動かせない場面もあり、若手にとっては初騎乗馬への対処法を考える機会にもなっただろう。

総合優勝は細川騎手。1着・8着で58ポイントを獲得し、JRA騎手の4連覇を食い止めた。2位に9着・1着でわずか1ポイント差で古岡騎手、3位は2着・6着の佐々木大輔騎手だった。

細川騎手は2020年ヤングジョッキーズシリーズ・ファイナルラウンド園田第1戦では、中団から向正面で先頭まで捲って押し切り勝ちを決めるなど、大胆な騎乗が印象に残る。「考えるより、感性で乗るタイプなんです」と自身も分析する性格。所属の角田輝也厩舎は全国リーディング上位の常連で「これからは角田先生に恩返しできるように頑張ります」と意気込んだ。


取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 細川智史騎手(愛知)

(2戦目を勝った古岡)勇樹が1戦目でいい着順を獲っていると思っていたので、優勝は「まさか」です。第1戦は出遅れましたが、後ろからでも展開一つで変わるだろうと返し馬で感じていました。どこを走っていいかイマイチ分からなかったですけど、勝てて運が良かったですし、関係者に感謝です。

総合2位 古岡勇樹騎手(川崎)

2戦目はゲートで長く待っている間に落ち着いてしまい、前に行ければと思ったのを思い切って切り替えて違う乗り方をしました。向正面から上がって行く時は慌てて追わず、少しずつ完歩を伸ばすイメージで乗りました。総合2位は悔しくて、1戦目をもう少し頑張りたかったです。

総合3位 佐々木大輔騎手(JRA)

高知は馬場が特殊だと聞いていて、返し馬での感触を元にレースを進めました。逃げた1戦目は向正面で後続が来るのが少し早いかなと思いましたが、直線で飲み込まれそうなところをよく踏ん張ってくれました。昨年のYJSより順位は上ですが、今年に入ってあまり調子が良くなく、これを機に頑張りたいです。