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第26回かきつばた記念JpnIII

鞍上の好判断で逃げ切る
  DG3連勝でJBCを視野に

4年に一度のうるう日は、天気予報通り第3レースの前からポツポツと冷たい雨が降り始めた。良馬場でスタートした名古屋競馬は、第7レースで稍重へ変わり、かきつばた記念JpnIIIの後には重へとさらに悪化した。

雨中決戦となった当レースは、過去10回で地方馬が3勝を挙げる。これまで4月末から5月初旬の大型連休恒例だった一戦は2月末に施行時期を変えても、地方馬勝利の期待が寄せられた。

その中心にいたのは、スマイルウィ(船橋)。少しずつ力をつけ、5歳の2022年に京成盃グランドマイラーズで重賞初制覇を飾ると、豊富なスピードを武器に昨年はさきたま杯JpnIIとテレ玉杯オータムスプリントJpnIIIで2着と、ダートグレード制覇まであと一歩だった。初タイトルへ向けて、ファンは単勝5.6倍の4番人気に推した。

対して、上位人気3頭はいずれもJRA馬。とはいえ、抜けた人気馬はおらず、単勝3~4倍台にユニコーンステークスGIII勝ちの4歳馬ペリエール、ダートグレード2連勝中ながら気性の難しさを覗かせるサンライズホーク、長期休養明けをひと叩きされたダートグレード4勝馬シャマル、またスマイルウィと単勝オッズが並ぶ形で安定感抜群のヘリオスとなった。

注目は逃げ・先行争いだった。前述の上位人気馬のほとんどが序盤から前付けしたいタイプで、中でも好スタートからハナを取ったのはラプタス。3月5日付で定年引退の松永昌博調教師の最後の重賞出走には、主戦・幸英明騎手からの提案で弟子の森一馬騎手が手綱をとった。その彼が1~2コーナーで選んだ進路は内ラチ沿いを10頭分近く大きく空けた馬場のど真ん中。それは、2日前に幸騎手がJRA条件交流レースで逃げ切り勝ちを収めた時と似た進路取りに見えた。結果も同じになればよかったのだが、違った。一つは雨で馬場傾向が変化してきていたこと。そしてもう一つは、ダッシュのつかなかったサンライズホークが行き場を最内に見出し、コーナリングで先頭に立ったこと。

3コーナー手前でラプタスは鞍上の手が大きく動きはじめて後退。対照的に、3番手のヘリオスが手応え抜群に先頭のサンライズホークに並びかける。そのまま交わす勢いに思われたが、ライバルが来たことで再び闘争心が入ったサンライズホークが直線で引き離し、1馬身半差で勝利。3着には直線脚を伸ばしたスマイルウィが入った。

地方馬最先着ながら3着だったスマイルウィの矢野貴之騎手は「今日はやんわり乗りすぎたかもしれません。久しぶりの2列目で、砂を嫌がっていました」と話した。それでも最後まで脚を伸ばしており、念願のダートグレード制覇が待たれる。

師匠への感謝を胸に挑んだラプタスと森騎手は9着。「結果を出したいと思っていたので、悔しさが強いです」と唇を噛んだ。

勝ったサンライズホークは兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIのレポートでも触れた通り、デビューに漕ぎつけるまで非常に時間と手間のかかった馬。それだけに関係者の喜びもひとしおで、牧浦充徳調教師は安堵と嬉しさの混じった表情でレース後の人馬を出迎えた。

「今でも調教でかなりピリピリしていて難しさのある馬なので、レースは走ってみないと何とも言えない部分があります」

パドックではパワーアップした馬体を輝かせていたが、スタート直後に他馬と接触し、決して砂が軽いとは言えない内を走ることになるなど不安要素もあったが、それらを跳ね除けての勝利には成長が窺える。ゲート試験合格まで半年も要した馬の重賞3連勝は、陣営の執念の賜物だろう。

取材・文大恵陽子

写真岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

M.デムーロ騎手

思ったより出遅れたけど、内が空いていてよかったです。3コーナーでユタカさんが外から来た時、まだソラを使う余裕があって、「これなら負けないかな」と感じていました。気難しい面があって、前走は先頭に立って少しソラを使っていましたが、今日は前走よりも止まっていませんでした。

牧浦充徳調教師

スタート直後はごちゃついた場所に入って出られなくなるのではと心配しましたが、騎手の好判断で内に行ってくれました。結果的には、この形で進路を取りやすかったのが良かったのかもしれません。今年の目標はJBCスプリントで、まだ賞金加算が必要。次走は黒船賞を視野に確実に賞金を加算したいです。