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第22回若草賞土古記念

意欲の連闘で女王へ大きく前進
  セブンカラーズは連勝止まる

今年、対象レースの大幅な改変が行われたグランダム・ジャパン(GDJ)古馬シーズン。昨年まで3歳限定戦として行われていた若草賞土古記念は、4歳以上のレースに模様替えして、古馬春シーズンに編成された。対象全7戦の4戦目となる本レースは、優勝を目指す馬とその周囲の人々にとってはシーズンの折り返しにあたり、文字通り正念場のレースとなった。

そもそも、名古屋競馬場で行われる全国交流レースは、その場所柄から東西幅広い地域から遠征馬が挑戦して来るケースが多い。今回も、南関東から4頭、高知から1頭の遠征馬を迎えた。いずれも一定の実績の持ち主ではあったが、わずか9日前に笠松競馬場で行われたシリーズ3戦目のブルーリボンマイル出走馬の中から2頭が、2走続けての輸送を経て連闘で遠征してきたことはひとつの話題となった。

当時休養明けで4着だったジュランビル(大井)は、ブルーリボンマイルを使われる前から福永敏調教師が「2週続けて遠征の予定」と表明していた。また同レースを勝ち、シリーズ表彰対象となる地方馬としてポイントでトップに立ったグレースルビー(大井)は、堀千亜樹調教師が前走後「繊細な馬で長距離輸送は苦手。次走は未定」と話していただけに、再度の輸送が必要な本レースへの出走に踏み切ったことは、シリーズ優勝へ向けての強い意欲の現れと見て取れた。

一方、迎え撃つ地元東海勢では、セブンカラーズに大きな注目が集まった。8戦土つかずで昨年の東海ダービーを制した後、脚部の治療のため休養に入っていたが、2月の笠松の特別戦・プリマヴェーラカップで8カ月ぶりの実戦かつ初の古馬相手となった復帰戦を快勝。実績が示す高い素質への期待感は、単勝1.3倍というオッズにも表れていた。

レースは、2番枠からセブンカラーズが先手を主張。直後の外2番手にモンサンラファータ(高知)がつけたあと、サーフズアップ(船橋)がセブンカラーズの真後ろの好位置を獲得した。一方、同じ位置を狙ったものの「サーフズアップに先に行かれた」(達城龍次騎手)グレースルビーは、更に後ろの3列目中団となり、最近数戦とは異なる待機策で機を窺う展開となった。

ピッチが上がった3コーナーから、セブンカラーズが後続を一旦振り切りリードを取った時には、そのままゴールまで押し切るかとも思われた。しかし、直線に向いて急激に速度を鈍らせ、最後の100メートルで様相が一変する。馬場の中程から目を瞠るような鋭い末脚を繰り出し躍り上がってきたのは、グレースルビー。逃げ切った前走とは全く異なる差し切り勝ちで、ゴールでは後続に2馬身半もの差をつける快勝だった。

2着には、4コーナーで勝ち馬に内から捌かれたあと連れるように末を伸ばしてきたサーフズアップが入った。笠野雄大騎手は「好位置が取れて、セブンカラーズを交わせばと思ったが、その分後ろから来られた」と展開を振り返る一方、「前回の休養明けと異なり状態は良かった」と力を出しての結果には納得の表情を見せた。

1馬身差で3着に入ったモンサンラファータの林謙佑騎手は、「砂を被らぬ理想の位置が取れた。向正面で早々に手応えが怪しくなったが、終いまで渋太く走ってくれた」と、馬の健闘を称えた。

直線で後退したセブンカラーズは、半馬身差の4着。デビュー10戦目にして土がついた。今回は、戦前に川西毅調教師が「順調に調整は進んだが、(2番という)枠が気になる」と話しており、内目が重い馬場状態を考慮して逃げの戦法を陣営として選択したようだ。レース後、山田祥雄騎手は「これまでも終いに止まる傾向があり、逃げの戦法は合わないかも知れない。ただ、一度も負けていない中で(経験のない控える競馬をする)冒険も出来ないから……」と、胸の内を明かした。その一方で「シュッと行く一瞬の脚は持っている馬。(今後)控える戦法でも戦えると思う」とも話し、レースを振り返る言葉には、今後に向けての可能性と巻き返しへの期待感もにじんだ。

グレースルビーは、今回の勝利で更にGDJのポイント15を獲得。2位のキャリックアリード(クイーン賞JpnIII・3着)に20ポイントの差をつける40ポイントの首位でシーズンを折り返した。対象レースの日程間隔に長短がある中、短いレース間隔で連続での輸送を含む2走で結果を出し、シリーズ優勝に大きく前進する“勝負駆け”を成功させた陣営の“胆力”と、その中で馬の力量を引き出した“技術力”は、大いなる称賛に値する。この日、堀調教師は不在で次走予定は明確にならなかったが、達城騎手によるとオーナーはシリーズ最終戦のエンプレス杯JpnII(5月8日・川崎)への出走を希望しているとのこと。今後の動向が注目される。

取材・文坂田博昭

写真国分智(いちかんぽ)

Comment

達城龍次騎手

前走の笠松では輸送のせいかイレこんでいたのですが、今日は落ち着いていました。馬体重も少しプラスで臨めたのは、厩務員さんのお陰です。位置が後ろになった分折り合いがつき、終いの脚に繋がったと思います。7歳ですが、若い4歳ぐらいの牝馬に乗っているような雰囲気があり、いま充実していますね。