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第26回黒船賞JpnIII

1年ぶりの勝利で連覇
  地方勢が2・3着に健闘

高知競馬の大一番、黒船賞JpnIII。JRAから5頭、地方他地区から4頭の遠征馬が、海を渡って高知競馬場にやってきた。ダートのスプリント戦線で活躍する強豪達を、3頭の高知勢が迎え撃つ。

単勝1.6倍の1番人気に推されたのは、ダートグレードを3連勝中のサンライズホーク。前年覇者のシャマルが2番人気に支持された。2年連続で黒船賞JpnIII・2着のヘリオスが3番人気。4番人気はマルモリスペシャルで5番人気はレディフォースと、JRA勢が上位人気を独占した。ところが1400メートルの不良馬場を舞台に波乱が巻き起こった。

どの馬が逃げるのか。ゲートが開くや主導権争いが勃発した。内から2番シャマル、4番サンライズホーク、7番マルモリスペシャル、11番ヘリオスが4頭横並びでハナを狙う。引くか引かぬかの駆け引きを経て、シャマル&川須栄彦騎手が内枠を生かして先手を取り切った。2番手がサンライズホーク、3番手がヘリオスという隊列で1コーナーをまわる。2コーナー、虎視眈々と先行争いを見ていたヘルシャフト&吉原寛人騎手が内に潜り込み、するするとポジションを上げる。さらに、向正面でサンライズホークが失速し、ヘルシャフトが2番手に浮上した。

直線に入ってもシャマルの脚色は衰えず、軽やかに黒船賞JpnIII連覇を達成した。そして高知のヘルシャフトが、2馬身差の2着に粘り込んだ。兵庫のタイガーインディが外から脚を伸ばし、半馬身差の3着に食い込んだ。2番人気→6番人気→7番人気で、3連単の配当は38万馬券という大波乱で決着した。

昨年のシャマルは川田将雅騎手を背に、5番手追走から4コーナーで先頭に立ち押し切った。今年はガラリと変わって、川須騎手を背に逃げ切り勝ち。そもそもシャマルが逃げを打つのは「デビュー以来、初めて」。管理する松下武士調教師も「逃げんねや……」と驚いたらしい。川須騎手はこう振り返る。

「相手の出方次第というところももちろんあったんですけど、シャマルが好スタートを決めてくれたので、この馬のリズムで自然と取ることができた位置だと思います。枠順も、すごくいい枠があたりました。前走で負けた馬もいましたが、この馬のことだけを考えて騎乗しました」

2走前からコンビ復活となった川須騎手の好判断、人馬一体の信頼関係が1年ぶりの勝利をたぐりよせた。競走中止や競走除外等、辛い出来事を乗り越えてつかんだ勝利に陣営の笑顔が弾けた。

2着ヘルシャフトの手綱を取った吉原騎手は、「ペースが流れたので『よっしゃ』と思っていました。1~2コーナーを上手にまわることができたのが大きいと思います」。地の利を生かしたかな、と言ってほほ笑む金沢の名手。絶妙なコーナリングで2着を確保した。高知所属馬が黒船賞で連対を果たしたのは、1998年の第1回黒船賞GIIIをリバーセキトバが勝利して以来の快挙。管理する打越勇児調教師は「一瞬、夢を見ました」。今後は1400メートルに生まれ変わるオグリキャップ記念(笠松、5月23日)を視野に調整を進めるとのこと。JRAから兵庫を経由して高知に転入し、最下級のC3クラスからオープンクラスへ駆け上がり、ダートグレード初挑戦で2着に食い込んだヘルシャフト。今後が本当に楽しみだ。

3着タイガーインディの追い込みも素晴らしかった。廣瀬航騎手は「このメンバーと走って、こういうレースをして結果が出たのは大きいですね」と声を弾ませた。

◆お知らせ

レース後に妹尾将充騎手が聴き取り、書き起こした騎手のコメントが、高知競馬の公式サイトに掲載されています。

https://www.keiba.or.jp/?postracecomment=2024032605

取材・文井上オークス

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

川須栄彦騎手

返し馬の感触がすごくよかったですし、『今日の馬場はシャマルにマッチするだろうな』という手応えをつかんでゲート入りを迎えることができました。他の馬のことよりも、シャマルとの走りに集中して、自信を持ってゴーサインを出しました。本当によく頑張ってくれて、あらためてすごい馬だと思います。

松下武士調教師

前走後はトモに疲れがあったんですけど、その疲れも十分にとれて、前走時と変わらない状態で臨むことができました。1年ぶりに勝利できてよかったです。今後の出走レースを選択する上で、賞金を加算できたことも大きいですね。レースセンスがいい馬ですし、気性面も成長してどっしりしてきました。