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第73回川崎記念JpnI

直線二枚腰を発揮し逃げ切る
  地元川崎で歓喜のJpnI初制覇

1951年に行われた第1回(第27回までは開設記念)以来、一貫して冬に実施されてきた川崎の風物詩が、ダート競走の体系整備により4月に移設された。第2回のキヨフジ(52年)から、イチカントー(58・59年)、ゴールドスペンサー(80・81年)、カウンテスアップ(85~87年)、ロジータ(90年)、ホクトベガ(96・97年)、アブクマポーロ(98・99年)、そしてホッコータルマエ(2014~16年)と、数多の名馬が勝ち馬に名を連ね、ダート競馬の歴史そのものといえる一戦。その大きな変革期に名を刻んだのは、地元・川崎のライトウォーリアだった。

JRA勢も決して手薄ではなかった。前走のダイオライト記念JpnIIを完勝したセラフィックコール、長距離に適性を示すグロリアムンディ、昨年の東京大賞典GIで0秒3差4着のノットゥルノなど、例年通りのレベル。前哨戦の報知オールスターカップを制して復調を示していたライトウォーリアだったが、これまでのGI/JpnIで5着止まりだった実績を考えれば、単勝7番人気という評価も致し方ない。しかし、管理する内田勝義調教師は、抜群の動きを見せた最終追い切りの内容に秘かな期待を抱いていたという。前残りで推移していた馬場も後押しした。

内枠の馬を見ながら、じんわりと先手を奪ったライトウォーリアと吉原寛人騎手。道中は時おり13秒台のラップを挟みながら後続を翻弄する。しかし2周目3コーナー過ぎから吉原騎手の手が激しく動き、並びかけてきたアイコンテーラー(JRA)は抜群の手応え。残り200メートル付近では万事休すかと思われたが、ここから驚異的な粘りを発揮して盛り返すと、鋭く追い込んできたグランブリッジの追撃もしのぎ、アタマ差で勝利をもぎ取った。

ライトウォーリアはJRAでデビュー。5勝をマークして22年の夏に川崎へ移籍すると、埼玉新聞栄冠賞と勝島王冠を制して、一躍南関東の中心的存在となった。その後はなかなか勝ち切れなかったが、昨年の勝島王冠で2着、続く報知オールスターカップで久々のタイトルを獲得。上昇カーブを描いてここに臨み、苦杯をなめてきたダートグレード、しかもJpnIの舞台で一矢を報いた。

殊勲の吉原騎手は「気持ちいいですね。最高です。まくり切られずに4コーナーを回ることができたので、それが大きかったです」と笑顔。前走で引っ掛かったことを踏まえて無理に押っ付けることなく先手を奪い、道中もしっかりと折り合ったことが、しまいの粘りにつながった。緩急を織り交ぜたラップも含めた緻密なレースの組み立てが、ビッグタイトルにつながった。

内田調教師はGI/JpnI初制覇。1500勝近くを挙げ、川崎の顔ともいえる名トレーナーが悲願の地元JpnIタイトルを獲得した。「夢のようだね。騎手時代に唯一勝った重賞が、この川崎記念(83年カネシヨウスーパー)。ものすごく減量して51キロで勝った思い出深い一戦だから、なにがなんでも調教師として勝ってみたかった」と感慨もひとしおといった様子。「鞍上もうまく乗ってくれた。スタートで3頭の外になりそうだったところを、ちょっとだけ出してスーッとハナに立った、あの微妙な匙加減。本当にすごい」と吉原騎手のエスコートを絶賛した。

中・長距離では苦戦を強いられてきた地方勢だったが、変革の年に“光の戦士”という一筋の光明が差し込んだ。このあとは放牧に出される予定だが、復帰後も軽快な先行力と持ち前の勝負根性で、この路線を牽引するに違いない。

2着のグランブリッジは中団の追走から直線で猛追。結果的にはアタマ差だけ及ばなかったが、牡馬相手のJpnIで、前残りの馬場も考慮すれば上々の走りだった。昨年のエンプレス杯JpnII以来、勝利から遠ざかっているが、堅実な末脚は大きな武器。展開次第でチャンスが巡ってくる。

懸命に食い下がったアイコンテーラーだったが、最後は力尽きてハナ差3着。とはいえ、直線でいったんは先頭に立つ見せ場十分の内容だった。昨秋にJBCレディスクラシックJpnIを勝ったことで別定戦では負担重量との戦いは付きまとうが、今後もダート路線をにぎわす存在であることは確かだ。

取材・文大貫師男

写真いちかんぽ(築田純、岡田友貴)

Comment

吉原寛人騎手

前走で引っ掛かったので、丁寧にハナを切ろうと工夫しました。4コーナーでは相手との手応えが全然違ったのですが、出口まで踏ん張ってくれればチャンスがあると思っていました。最後はクビほど出たままで50メートルほど走ってたので、なんとかこのままでと思って追いました。アツかったですね。

内田勝義調教師

ジョッキーとは今回はそっと出していって、あとは折り合いを重視しようと話していました。ゴールに入るまではドキドキしていました。今後は放牧に出して様子を見つつ、オーナーサイドと相談して復帰させようと思います。やはり中距離が合っているので、この路線を使っていくつもりです。