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第36回かしわ記念JpnI

恵みの雨でスピード発揮
  選択肢広がるJpnI初制覇

2005年にJpnI(当時表記はGI)に昇格して今回が20回目。フェブラリーステークスGIとの親和性も相まって、春のマイル王決定戦として定着し、今年も好メンバーが集結した。ダート競走の体系整備により1カ月半後のさきたま杯JpnI(1400メートル)、帝王賞JpnI(2000メートル)への分岐点という意味合いも強くなり、より注目度が高まった。

単勝人気は割れ加減。東京大賞典GI、フェブラリーステークスGIはともに5着も、JBCクラシックJpnIで圧勝して以来となるジョアン・モレイラ騎手とのコンビが復活したキングズソードが3.3倍の1番人気に支持された。東海ステークスGIIで重賞初制覇を果たしたウィリアムバローズが3.6倍の2番人気。以下フェブラリーステークスGIを制したペプチドナイル、海外重賞2勝馬クラウンプライドと、JRA勢が上位人気を形成した。

折からの雨で、この日の船橋は第2レース以降、不良馬場。勝ち時計こそ平均から少し遅めだったが、前残りの傾向で推移していたことがレースの結果を大きく左右した。

先手を奪ったのは6番人気のシャマル。外枠から好ダッシュを決めたペプチドナイル、キングズソードが続き、クラウンプライドは1コーナーの手前でペプチドナイルと接触しながらも、その後ろを追走した。前半の3ハロンは35秒6。その後もよどみない流れで進み、勝負どころを迎えた。

シャマルは3コーナーでも単独先頭。ペプチドナイルとキングズソードも仕掛けるが、その差はなかなか詰まらない。中団からはタガノビューティーだけが手応えよく上がってきたが、直線の入口でシャマルが突き放したところで勝敗はほぼ決した。前残りの馬場でこの差なら、捉えられることはない。ゴールまで力強く脚を伸ばしたシャマルが、鞍上の川須栄彦騎手とともに初のJpnIタイトルを手にした。

笑顔で戴冠の喜びをかみしめた川須騎手。「最高にうれしいですね。残り200メートルで他馬の脚音が聞こえなかったので、ゴールまでかみしめながら追いました」。2010年のデビューから14年。初めて手にしたGI/JpnIのタイトルに、晴れやかな表情を見せた。今回出走したJRA勢のなかでは最低人気だったが、今回の勝利を含めて不良馬場は7戦5勝と相性が良く、短距離で実績を残してきただけにスピード能力も一枚上。その持ち味を存分に生かした見事な騎乗だった。

管理する松下武士調教師も「この馬が走るときは、よく雨が降るんです」と恵みの雨に感謝。順調ならさきたま杯JpnIに向かう予定で、「これで使いたいレースを使えるようになると思いますし、JBCが行われる佐賀も以前に勝っているので」と先を見据える。さきたま杯がJpnIに昇格し、JBCスプリントJpnIも佐賀1400メートルが舞台。2024年はシャマルが大きく飛躍する年になりそうだ。

5番人気のタガノビューティーが2馬身半差で2着。道中は後方につけていたが、3コーナーでインを突いて位置取りを上げると4コーナーで外に切り替え、猛然と脚を伸ばした。前年2着に続く好走に、石橋脩騎手も「よく頑張ってくれて、馬に感謝です。道中はうまく運べたし、進路も開いてくれました。でも、結果的に前残りでしたから」とパートナーをねぎらった。後半3ハロン38秒4は、もちろんメンバー最速。マイルチャンピオンシップ南部杯JpnI、フェブラリーステークスGIでともに4着だったことを考えても左回りのマイルはベストで、今後も条件が整えば戴冠のチャンスがある。

ペプチドナイルは絶好の2番手を追走したが、直線で伸び切れず3/4馬身差の3着。藤岡佑介騎手は開口一番、「1コーナーの手前でクラウンプライドに迷惑をかけてしまいました」と頭を下げ、「最後は脚が上がってしまいましたが、道中は盛り返して頑張ってくれましたし、GI馬の力を見せてくれたと思います」と話した。重馬場での好走歴もあるが、ベストは乾いた馬場。巻き返しの余地は十分に残されている。

1番人気のキングズソードは4着で、モレイラ騎手も「この馬にとってベストの馬場ではなかった」と天を仰いだ。大外枠から3番手につけたレース内容は悪くなく、マイルにも十分に対応できているが、もう少しタフなレースになったほうが持ち味が生きそう。馬場や距離次第で見直しが可能だ。

大井のミックファイアが5着で、地方勢では最先着。もともと陣営が復調を口にしていただけに、吉原寛人騎手も「スタートが合わなかったのは運の部分もあったかと思います。ただ、雰囲気は良かったですし、先々も良くなる感じがありますね。秋には大仕事をやってくれそうです」と手応えをつかんだ様子だった。完全復活なるか、今後の動向とレースぶりに注目したい。

取材・文大貫師男

写真いちかんぽ(国分智、早川範雄)

Comment

川須栄彦騎手

最高の気分です。ラスト200メートルになっても後続の脚音は聞こえてこなかったので、離してるんだろうなと、最後までかみしめるように追いました。前走を勝って馬が自信を取り戻していたし、暖かくなってきて体調のほうもさらに上向いていました。雨もこの馬にとって追い風になってくれましたね。

松下武士調教師

(雨で)天が味方してくれました。前走のダメージが少なかったので、仕上げはしやすかったです。スタートは一番速いと思っていたし、前のレースでも逃げ切りが多かったので、行ってもらおうと思っていました。次走は状態を見て、さきたま杯へ。佐賀も勝っているコースなので、JBCも視野に入れたいです。