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2024地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ

第2戦制した吉村騎手が優勝
  森騎手は同ポイントも2位

今年は顔ぶれも戦い方も、例年とはやや異なる地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ(JCS)だった。各地のリーディングジョッキーが集う当レースは豊富なキャリアを持つベテランが多数を占める。しかし、今年は出場12名中4名がデビュー10年未満の20代。

「僕たち、一緒にヤングジョッキーズシリーズのファイナルラウンドに出場したんですよ」と笑い合ったのは渡邊竜也騎手(笠松)と栗原大河騎手(金沢)で、2017年の話だ。渡邊騎手は一昨年、昨年と笠松競馬の年間最多勝記録を塗り替え、いまや笠松を引っ張る存在。2年連続での出場では、同じく地元で年間最多勝記録を持つ落合玄太騎手(北海道)もそう。それに対し、栗原騎手と山田義貴騎手(佐賀)は今回が初。そんな彼らを見て、「この中ではオジさんの部類に入るようになりました。中年パワーで頑張ります」と岡部誠騎手(愛知)は笑った。

そうした中、あちらこちらから聞こえたのは「今年は園田の2戦だけで決まるからなあ」という嘆き声。コロナ禍を除き、長年2ラウンド4戦で行われ、時に大逆転などのドラマを生んだが、今年は「勝たないとチャンスがないですからね」(高知・赤岡修次騎手)と、勝利が求められた。

第1戦は2戦連続2着の馬に騎乗の岡部騎手に専門紙で重い印が並んだ。最内と中ほどの枠には近走で逃げた馬に乗る森泰斗騎手(船橋)と村上忍騎手(岩手)。その中で序盤のハナ争いを制したのは森騎手だった。直線入口からスタートする1230メートル戦は1コーナーまでの距離が短いのだが、すんなり隊列が決まると、4コーナーを回っても逃げる森騎手のリコーグロックの脚色は衰えない。3番手のインに控えた岡部騎手も差を詰めようとするが、5馬身差で森騎手が勝利。2着に岡部騎手、3着に後方から追い込んだ山田騎手だった。

これを見た地元の調教師は「昨日の第1レースから逃げ馬有利が続いているね」と、馬場傾向をしっかり味方につけた勝利を振り返った。喜びの表情で帰ってきた森騎手に山崎誠士騎手(川崎)は「泰斗さん、ついにですか!」と、優勝へリーチをかけたとも言える先輩を祝福。それに対し本人は「まだ2戦目もありますからね。内が軽い馬場と感じていて、次は外枠。考えて乗ります」と、13回目の出場(前身のスーパージョッキーズトライアルを含む)にして悲願の初優勝に向けて表情を引き締めた。

しかしながら、第2戦は非情にも1頭力の抜けた馬がいた。単勝1.7倍の1番人気に推されたブリッツェンシチーは、高知からの移籍初戦だった前走が強い馬相手に少差の2着。加えて抽選の結果、吉村智洋騎手(兵庫)が前走に続いて騎乗できることになったのだ。第1戦後、「このシリーズは運頼み。第1戦は8着やったもんなぁ……」と立ち去った背中に余裕さえ感じられたのは、第2戦に有力馬が控えていたからだろう。その予想通り、2番手から直線で抜け出した吉村騎手が4馬身差で完勝。2着には山崎騎手が入り、3着の矢野貴之騎手(大井)がゴールを駆け抜けた後、注目を集めたのは森騎手の着順だった。7着以内であれば、首位をキープしての初優勝。

ファンも関係者も固唾を呑んでリプレイで着順を確認していたところ、ライバル・吉村騎手は引き上げてくるなり余裕の表情でカメラマンに向かって手を振った。その舞台裏はこうだった。「帰ってくる時に森さんから『たぶん吉村騎手が優勝だよ。僕は8着だと思う』と聞いたんです」

ともに1着と8着で同ポイントながら、『第2戦の着順上位者を優先する』という規定はジョッキー交流戦常連の2人は把握済み。これにより、吉村騎手の19年に続く2回目の優勝が決まった。

吉村騎手は18年に初めて地方全国リーディングに輝いて以降、JRA初勝利を挙げ、子息の誠之助騎手がJRAで騎手デビューし、毎週末はそのレースを見る日々へと変わった。「いま、競馬に乗っていてすごく楽しい」という気持ちも、この間の大きな変化だ。一発勝負と表現しても過言でなかった今年の地方競馬JCSを僅差で優勝した昨年の地方全国リーディングジョッキーは、8月24・25日にJRA札幌競馬場で再び世界戦に挑戦する道が開けた。

取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

総合優勝/第2戦1位 吉村智洋騎手(兵庫)

園田で行われる以上、僕が負けては地元の威厳が保てないと思っていました。第1戦がもう少し上の着順なら、こんなにドキドキしなくて優勝できたでしょうね。第2戦は馬も強くて、強い馬相手の前走からの上積みがあって自信を持って乗れました。2回目のWASJはもっと上を目指して頑張ります。

総合2位/第1戦1位 森泰斗騎手(船橋)

第1戦は行ければ逃げたいと考えていて、少し主張したら隊列が決まり、マイペースで運べました。それ以上に馬のリズムが完璧で、3コーナーでは「勝った」と思いました。WASJには行きたいと毎年思いながらもなかなか縁がなかったですが、第1戦を勝って札幌がチラつき、欲を出した分、ダメでした。

総合3位 岡部誠騎手(愛知)

第1戦はポジションはベストでしたが、差し切れない面が出てしまいました。2着、5着で勝てませんでしたけど、総合3位。また頑張ります。