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第28回さきたま杯JpnI

早め先頭からねじ伏せる
  イグナイターも意地の2着

今年度、地方競馬で開催が予定されている14競馬場(平地のみ)において、1400メートルのコース設定がないのは門別だけ(船橋も設定はあるが現在実施なし)。1周1200メートル前後の馬場が多く、オーソドックスに4コーナー付近にゲートを設置すれば1400メートルとなるため、ほぼ毎日、全国のどこかでこの距離のレースが行われている。いわば“地方競馬における根幹距離”のはずだが、持ち回りのJBC競走を除き、不思議と1400メートルのGI/JpnIは存在しなかった。

しかし、ダート競馬の体系整備により、さきたま杯がJpnIに格上げ、兵庫チャンピオンシップJpnIIも短縮され、一気にこの距離の存在感が高まった。国際グレードの取得を目指している昨今、根幹距離の定義を世界標準に合わせることは当然だが、スピードと器用さの両面を競う1400メートルを、地方競馬のアイデンティティとして内外にアピールするのも一考だろう。

そんな1400メートルで行われる初の“常設JpnI”で、JRA賞最優秀ダートホースのレモンポップと、NARグランプリ年度代表馬のイグナイター(兵庫)が激突。かしわ記念JpnI制覇で勢いに乗るシャマルも含め、頂上決戦にふさわしい好メンバーが集結した。ただ、レモンポップの強さは広く知られるところであり、小回りコースをこなせるかだけが焦点。他馬が付け入る隙は、むしろそれしか見当たらなかった。

そして迎えたスタート。大方の予想通りアランバローズ(船橋)、シャマル、イグナイター、レモンポップ、バスラットレオンが激しい先行争いを展開。最内枠のアランバローズが先手を取り切ったが、レモンポップが外からシャマルを抑えて2番手へ。イグナイターは想定より1列後ろの5番手からになった。

前半の3ハロンは34秒8のハイペース。それでもレモンポップ鞍上の坂井瑠星騎手は手綱を緩めない。向正面の半ばからアランバローズをつつくと、3コーナーの手前で早くも先頭に立ち、リードを広げにかかる。しかしシャマルも食らいつくように2番手に浮上し、イグナイターも外から挽回。4コーナーを回ったところで勝負の行方は3頭に絞られた。

最後は220メートルの直線が長く感じられるほど、激しい攻防が繰り広げられた。実際ラスト1ハロンは14秒6と脚は上がっていて、3頭は意地と精神力でゴールを目指していた。結果、軍配が上がったのはレモンポップ。2馬身差でGI/JpnI・4勝目を飾った。

初めての小回り1400メートルを克服したレモンポップ。常に前々を意識して厳しい流れを作り、力でねじ伏せた。「小回りも無事にこなしてくれましたし、どんな競馬でも負けないのが強みですね。JpnIに昇格した記念すべきレースを勝ててうれしいです」と自信に満ち溢れた表情で話した坂井騎手。その言葉通り、自在に立ち回ることができ、小回りを克服したことで死角は見当たらなくなった。次走は未定だが、今後も日本のダート競馬を象徴する存在として活躍してくれるに違いない。

直線での競り合いからイグナイターが2着を確保した。スタートで進路が狭くなったうえ、アランバローズが逃げたことで陣営が思い描いた位置よりも後ろになったが、それでも地方のエースとして意地を見せた。笹川翼騎手は「海外帰りでよく走ってくれました。スタートで進路が狭くなったぶんもリカバリーできましたし、さらに“ひと馬力”がついています」とパートナーを称えた。新子雅司調教師も「シャマルが逃げる展開なら楽でしたが、控えたことで1列後ろになって、そのぶん外を回らされました。でも、よくあの位置から追い上げてくれました」とねぎらった。2着とはいえ、帰国初戦で変わらぬ走りを見せたことで、今後の展望も明るい。マイルチャンピオンシップ南部杯JpnIやJBCスプリントJpnIなど、秋のJpnI戦線も地方のエースとして盛り上げてくれそうだ。

結果は3着だったが、シャマルの充実ぶりにも目をみはった。インの3番手からの競馬になったが、勝負どころでも反応を示し、ゴールまでしぶとく走り切り2着とは半馬身差。「レモンポップのスタートが速く、前に行かれてしまったけど、気持ちを切らさずに走ってくれました。最後は差が詰まりそうで詰まらなかったですが、素晴らしい走りでしたし、力をつけています。ほめてあげたいですね」と川須栄彦騎手。JpnI連勝はならなかったが、こうした競馬ができれば安定感も増してくるはず。さらなるタイトル獲得へ期待が高まる。

取材・文大貫師男

写真いちかんぽ(早川範雄、築田純)、NAR

Comment

坂井瑠星騎手

五分にスタートが切れれば力は上だと思っていました。2番手にいければと思っていましたが、そこまで位置取りはこだわっていなかったですね。ペースは気にせず馬のリズムに気をつけました。国内で自分が乗ったときには、どんな条件でも負けていないですし、負けないところが強みです。

田中博康調教師

ここ2走は馬の雰囲気が良くなかったですね。チャンピオンズカップは勝ちましたが、サウジカップのときは馬が雰囲気にのまれて舞い上がっていた感じです。最後は少し一杯になった感じでしたが、初めての小回り1400メートルもこなしてくれましたし、とても強い競馬だったと思います。