直線での一騎打ちから抜け出す
金沢の女傑が断然人気で連覇
今年も園田にハクサンアマゾネス(金沢)がやって来た。昨年の当レースが初めての遠征競馬。長距離輸送が心配されたが難なくこなすと、3馬身差の完勝で、他地区重賞でも強さを見せたのだった。その後、重賞勝利数を23に伸ばし、国内平地重賞最多勝記録を更新し続けている。
そうなれば、今年は連覇が期待されるところ。昨年の当レースや、その後に制した兵庫クイーンカップと異なる点と言えば、年齢を1つ重ねたことと、南関東の重賞勝ち馬との対戦ということ。また、地元馬ではJRA3勝クラスから移籍初戦の前走が僅差の2着だったスマートムーランが有力視された。それでも単勝1.2倍の圧倒的1番人気に支持された通り、ハクサンアマゾネスは今年も強さを見せつけた。
好スタートから先手を取ったのはアンティキティラ(高知)。その外にサーフズアップ(船橋)がつけて、ハクサンアマゾネスはさらに外の3番手につけた。2周目の3~4コーナーで徐々にスピードに乗せて先頭との差を詰めると、直線では逃げ粘りを図るアンティキティラとの追い比べ。両者譲らぬ走りに大歓声が起きたが、直線半ばでハクサンアマゾネスが抜け出すと1馬身半差で勝利を収めた。ウイニングランでスタンドに向かって吉原寛人騎手がガッツポーズをすると、女傑の強さにファンからは拍手が起きた。
一方、「いやぁ、勝ちたかったです」と悔しさを滲ませたのは2着アンティキティラの多田羅誠也騎手。「手応えがまだ残っていたし、追い比べに持ちこめるのでは、と思いました。でも、勝ち馬が強かったですね」。前走で減った馬体重を戻し、状態は良くなっており、この馬のスピードを生かす形に持ち込んだが、完敗といった雰囲気だった。それでも3着を8馬身離しているのだから力は示しただろう。
その3着はグレースルビー(大井)。1周目スタンド前ではじわっとポジションを上げて勝ち馬の後ろにつけられたが、「小回りでペースが忙しく、この馬には不向きな展開でした。少し疲れも抜けきっていない感じを受けました」と達城龍次騎手は話した。
2番人気のスマートムーランは重賞初挑戦で9着、3番人気サーフズアップは「広いコースの方がいいのかも」(赤岡修次騎手)と、8着だった。
勝ったハクサンアマゾネスはこれで重賞24勝目。いよいよオレノココロ(ばんえい・21年引退)が持つ国内重賞最多勝利記録まであと1に迫った。平地に比べて競走馬寿命が長いと言われるばん馬の記録を更新すれば大偉業。ただ、女傑にも課題が一つあり、夏をどう過ごすか、がポイントとなる。
「若い頃は体質が弱くて、夏は休んでいました。昨年9月の秋桜賞(10着)の調整が難しくて、レース前に短期放牧に出したけど、馬の気の入り方が難しくて」と吉原寛人騎手が相棒の状態を話すと、加藤和義調教師も「放牧から戻ってきてから時間がなくて、気の乗りが弱かったです」と当時の状況を説明した。今年については「帰ってから馬の状態を見て、このまま読売レディス杯(8月6日)に向かうかもしれません」とのこと。昨夏の経験を糧に、暑い夏を上手く乗り越えられれば、大偉業が見えてきそうだ。
取材・文大恵陽子
写真桂伸也(いちかんぽ)
Comment
加藤和義調教師
梅雨で気温が抑えられていて、今日もなんとか耐えられる暑さで良かったです。メンバーが強くなっても、馬の力さえ出し切ってくれれば結果は出ると思っていました。レースはジョッキーが腹を括っていたと思います。前が一瞬離した時には「あれ?」と思いましたけど、この馬もよく走ってくれました。
吉原寛人騎手
今日は外枠が来ていたので、外からガンガン来られるくらいなら外3頭目でいいかなと思いました。逃げ馬の激走には警戒していて、3~4コーナーで相手が一瞬伸びた時には踏み遅れたのかなと思いましたが、こちらは焦らせると良くないタイプ。最後はなんとか交わしてくれました。