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ヤングジョッキーズシリーズTR 門別

ルーキー長浜騎手が初戦を逃げ切る
  復帰した木澤騎手は今年の初勝利

今年も、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)が始まった。東西各6カ所で、年末のファイナルラウンド出場をかけて争われるトライアルラウンドの緒戦の舞台は、東日本地区の門別競馬場。昨年よりも約1カ月遅い開幕だ。丁度JRAでは北海道シリーズがたけなわ。夏競馬のムードで盛り上がる北の大地に、地方7名・JRA5名の若手騎手たちが集結し、今年のシリーズ最初の戦いに挑んだ。

今年デビューの新人騎手も、地方から藤田凌駕騎手(北海道)、JRAから長浜鴻緒騎手と、2名が参戦した。戦前の取材に対して、藤田騎手が「他場の騎手たちのレースや乗り方の形があるはず。いつもとは違うレースになるだろうと思う」と話せば、長浜騎手も「流れや隊列の出来方が違ってくると思うので、上手く回って来たい」と抱負を述べた。いずれの言葉にも、デビューからこれまでに経験してきたものとは異なるであろうレースに向かう心構えと、意欲と、そして緊張感が透けて見えた。

例年よりもジメジメとした陽気となることが多い今年の北海道。この日の門別でも、日中には見えていた青空が夕方の第7レース発売中に行われた騎手紹介イベントの際には低い雲に覆い尽くされた。やがて落ちてきた雨は断続的に降り続き、コースを湿らせる。馬場状態の変化も若手騎手たちの思惑に微妙な影響を与えつつ、戦いの時を迎えた。

ワンターンの1200メートル戦で争われた第1戦の第9レース。長浜騎手がYJS緒戦でいきなり結果を出した。騎乗したピエールオレゴンもこれまで4戦3勝とまだ底を見せていない素質馬だったが、スタート直後の攻防を制してハナに立つと楽な手応えで道中を消化。直線ではライバル達を一方的に引き離していき、4馬身差をつける圧勝となった。

2着には佐々木大輔騎手(JRA)。馬に気性的な課題がありそうと感じとり気をつけていたそうで、「(前の馬の)キックバックを被ったらうわずった感じになった」馬を最後まで追い通して動かしての健闘には、デビュー3年目で先日重賞制覇まで成し遂げた(函館2歳ステークスGIII)彼が、ここまで積み上げてきた経験値の高さと技術を感じた。

一方、自身の「経験のなさ」と残念そうに振り返ったのが、デビュー2年目の阿岸潤一朗騎手(北海道)。「進路取りのミス。内で詰まってしまった」結果、2着馬からさらに1馬身遅れた3着という成績に、「これだけいい馬に乗せてもらっていたのに」と悔しさをあらわにしながらも、レースの流れを繰り返し反芻し、そして反省していた。これも向上心の表れ。こうした反省が次の“結果”に結びついていくのだろう。

第11レースで行われた第2戦は、コースを1周回る1700メートル戦。第1戦での敗因のひとつに「思ったよりレースが流れなかった。積極的に乗れば良かった」と自身のペース判断の失敗を掲げていた宮内勇樹騎手(北海道)が、その反省もあってかスタート後馬を促し先手を取りに行く。しかしそれに対して、徹底先行の逃げ馬を駆る佐々木大輔騎手が内から抵抗し、レース序盤から両者激しく競り合う波乱含みの展開となった。3番手から前を追っていた1番人気の秋山稔樹騎手(JRA)が3~4コーナーで先行2頭を交わして前に出たものの、そこまでに馬が消耗しており直線では余力なし。

横にずらり広がった攻防の中から抜け出してきたのは、道中馬群から離れて後方2番手にいた木澤奨騎手(大井)。更に離れた最後方から連れるように追い込んだ及川烈騎手(浦和、高知で期間限定騎乗中)を、半馬身退けた。1馬身差の3着に入った土田真翔騎手(JRA)が「前が速かったので、溜めたぶん馬が頑張ってくれた」と激戦を振り返ったように、先行馬は総崩れ。冷静に展開を捉えることが出来た騎手が上位を占めた。

ゴールの瞬間、馬の首筋を大きくポンと叩いて喜びを表現した木澤騎手は、体調を崩して長らく戦列を離れており、先週およそ5カ月ぶりに復帰したばかり。ようやく掴んだ今年の初勝利に「いまは体調も良いので、これを崩さず乗って行きたいです。地元の大井でももっと勝ちたい」と、笑顔で抱負を語った。

2戦を終えて、地元の新人・藤田騎手は7着・4着。42ポイント(4着・1着)の木澤騎手、22ポイント(9着・2着)の及川騎手に次いで、現時点で地方東日本地区3位となる18ポイントを獲得した。レース後「最初は緊張したが、新鮮な体験が出来た。この経験をこれからに生かしたい」と話したように、こうした経験の一つひとつが糧となり、成長へと繋がっていくのだろう。

このあと、9月5日には園田競馬場で西日本地区の最初のトライアルラウンドが行われる。東日本地区の次戦は少し間隔が開いて10月8日の川崎競馬場。今年のYJSでも、12月に園田競馬場・JRA中京競馬場で行われるファイナルラウンドとそこに至る予選、という位置づけとしてだけでなく、一戦一戦新たな経験をし、それを身につけ、成長していく若手騎手たちの戦い振りに期待しつつ、注目していきたい。


取材・文坂田博昭

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 長浜鴻緒騎手(JRA)

素直に凄く嬉しいです。発馬後二の脚で前に出て、コーナーに入る前に息が入って直線では勝ったなという感じでした。人(自分)は少し焦ったけれど、馬が落ち着いて走ってくれました。ファイナルラウンドに残るためにいい結果が出たので、流れにこのまま乗れるようにいい結果を出し続けて行きたいです。

第2戦1着 木澤奨騎手(大井)

返し馬から元気よく、馬のリズムを崩さず自分が焦らずに乗れればと思っていました。4コーナーを「勝つしかない」という手応えで、自信を持って回ってこられました。しっかり決め切れたので嬉しいですし、気持ちよかったです。このままファイナルラウンドまで行きたい。そこで勝ちたいです。