直線末脚弾けて差し切る
目標の短距離で重賞初勝利
ダート競走の体系整備に伴い、北海道スプリントカップJpnIIIは3歳以上から3歳限定戦へと変わった。JRAから4頭、大井から1頭、スピード自慢が門別に遠征。冬期に他地区へ移籍することの多かったホッカイドウ競馬所属馬にとっても目標となり、古馬1600メートル戦から昨年度より3歳1200メートル戦へと条件が変わった前哨戦の星雲賞を勝ったトラジロウ、ネクストスター北日本の勝ち馬ストリームなど地元馬は8頭、計13頭によって争われた。
時期も6月から8月のお盆時期へと変わり、スタンドの収容人数が1300人の門別競馬場に2694人が入場。めったに夏日にならない門別で最高気温は30.2度まで上がり、熱い盛り上がりを見せた。
ホッカイドウ競馬のナイターが30周年を迎えたことを記念し、2013年まで使われていた重賞ファンファーレで新生・北海道スプリントカップJpnIIIがスタート。
兵庫チャンピオンシップJpnII勝ち馬エートラックスを交わし、先頭に立ったのがホッカイドウ競馬随一のダッシュ力を持つオスカーブレイン。リコーシャーマン、ジョーローリットが続く。3連勝中で1番人気のエスカル、チカッパは中団からレースを進めた。
3コーナーにかけて徐々にレースが動き、4コーナー手前でエートラックスが抜け出しを図る。直線を向いて、その外からチカッパがはじけた。残り100メートル付近で先頭に立つと、最後は抑える余裕も見せ2馬身差をつけて優勝。勝ちタイムは1分12秒6だった。
2着は粘ったエートラックス、じわじわと追い上げた門別デビューのティントレット(大井)が3着。パドックで迫力を見せていた牝馬のヴィヴィアンエイトが地元最先着の4着。人気のエスカルは7着だった。
チカッパには初騎乗の武豊騎手は、馬の素質と調子の良さを信じて勝利に導き千両役者ぶりを見せつけた。14日には門別競馬場でのトークショーに出演の予定だったが、台風で代替開催となったクラスターカップJpnIIIへの騎乗で門別には来場できず。そのことを詫びつつ「なんとか結果で返したかった」と話すと場内が盛り上がった。表彰式までの通路ではたくさんのファンとハイタッチする場面もあった。
チカッパは兵庫チャンピオンシップJpnII・2着以来のレースで、中竹和也調教師は「番組がなく久しぶりになったが、(3歳限定戦となって)迷わずここを目標にしました」。8月の開催になってJRA勢にとっては北海道で調整できることも利点だが、チカッパは火曜日に栗東から門別入り。プラス21キロの馬体重も「成長分だと思う」と言うとおり、パドックでも全く太くは見えず、目標に向けた順調な調整具合がうかがえた。園田競馬場と同じ白い砂も「パワーのいるダートは向いていると思う」といい、適性を花開かせるレースとなった。
取材・文小久保友香
写真浅野一行(いちかんぽ)
Comment
中竹和也調教師
強い内容で勝ってくれたので非常にうれしいです。ここを目標に管理してきて思うような仕上がりで出走できたかと思います。これからさらに良くなりそうで、この先も楽しみです。可能性を感じる馬ですね。門別は以前も重賞を勝たせていただき好きな競馬場です。みなさんの応援が後押しになりました。
武豊騎手
ラストでいい脚を使うと聞いていたので、末脚を信じて道中はじっとしていました。ゴーサインを出してからの反応が良すぎて、早めに先頭に立つとゴール板を気にしていましたが思った以上の末脚を使ってくれました。非常に素質を感じる馬で、まだまだ良くなりそうなので今後が楽しみです。