経験値の違いで他馬を圧倒
国内無敗で再びアメリカへ
1999年にスーパーダートダービーGIIを発展的に解消する形で新設されたジャパンダートダービーが、四半世紀を経て新たな装いをまとった。頂上決戦からダート三冠の最終関門へ、施行時期も秋に移行された。
振り返れば第1回は1着オリオンザサンクス(大井)、2着オペラハット(船橋)、3着サマーシャドウ(大井)と、地方勢が上位を占めた。当時はダート路線が整備され始めたばかり。出走枠の関係もあってJRA勢のエントリーは3頭だけだった。しかし25年後の今年、ダート熱の高まりと体系の整備により、世界レベルの戦いが繰り広げられるほどに発展。国内ダートの一翼を担う地方競馬としては、前週の日本テレビ盃JpnIIと同様、成功の象徴といえるレースになった。
注目はなんといってもケンタッキーダービーGI・3着のフォーエバーヤング。全日本2歳優駿JpnIを含め、国内では3戦無敗。サウジダービーGIII、UAEダービーGIIを制すなど、世界屈指の実力がある。このレースを使ったあとはブリーダーズカップ・クラシックGIへの参戦も表明しており、勝ちっぷりが焦点となった。
そのフォーエバーヤングは、スタート直後にバランスを崩したものの、1コーナーの進入までに2番手の外を確保。逃げたカシマエスパーダを見ながらレースを進めた。久々のぶんもあるのか、3コーナー過ぎで置かれ気味となったが、直線に向くとエンジンに火が入り、敢然と抜け出した。2着ミッキーファイトとの着差は1馬身1/4にとどまったが、勝ちタイム2分4秒1(良)は優秀。上々の始動戦となった。
手綱を取った坂井瑠星騎手は「内でもまれるのが嫌だったので、ハナに行ってもいいなと思っていましたが、2番手からに切り替えました」と振り返る。スタートで体勢を崩しながらも挽回した馬のセンスはもちろんだが、他馬に蓋をされないように進路を確保した鞍上のエスコートも光った。矢作芳人調教師も「正直、戦ってきた経験値が違うと自信をもっていましたが、強いメンバーがそろっていたので、よく勝ち切ってくれました」と胸をなでおろし、「今後は疲れを取って、14日から検疫に。22日にアメリカに出発する予定です」と、来たる世界決戦を見据えた。
2着のミッキーファイトは先行集団の後ろを追走。直線で外に持ち出すと、フォーエバーヤングに鋭く迫った。戸崎圭太騎手は「スタートが良くなかったけど、展開的にはいい流れになってくれました。最後はもしかしたら、と思いましたが、相手が強かったですね」と勝ち馬に脱帽。ただ、「前走より状態は良かったし、緩い面も良くなっていました。先につながるレースになったと思います」と好感触を口にした。これでデビューから5戦4連対。古馬との戦いへ向け、期待が高まる好内容だった。
不来方賞JpnIIからの連勝を狙ったサンライズジパングは、好位の外を進んで5馬身差の3着。最後の直線で後退しかけたが、外を伸びたミッキーファイトを追いかけるようにして盛り返した。武豊騎手は「思ったより前につけることができて、いい形で進められました。ただ、右回りではコーナーでスピードが落ちるようなところがあるので、左回りのほうがいいと思います」。馬場差こそあるが、マーキュリーカップJpnIIIの勝ち時計を上回った前走を見れば、古馬トップクラスが相手でも力は互角。今後も左回りで注目したい一頭だ。
東京ダービーJpnIを制したラムジェットは勝負どころで早めに押し上げ、直線でもじわじわと伸びたものの4着まで。三浦皇成騎手は「ずっと促しながらの競馬になってしまいました。今までとメンバーも違うし、スピードアップされたときに差が出た感じです」と肩を落としたが、最後までバテずに走り切った内容は悪くなかった。18キロの馬体増を考えれば、使ったぶんの良化も見込める。次戦以降でダービー馬としての輝きを取り戻すに違いない。
高知のシンメデージーが5着で、東京ダービーJpnI(4着)に続く地方最先着。2着のミッキーファイトに次ぐ上がり時計をマークし、JRA勢に割って入った。「思ったより後ろになったけど、最後はしっかり脚を使ってくれましたね。このメンバーで掲示板に入ったのは誇りに思います」と吉原寛人騎手。今後への期待がふくらむ内容だけに、レース選択によってはダートグレード制覇のチャンスも巡ってくるはずだ。
取材・文大貫師男
写真いちかんぽ(岡田友貴、早川範雄)
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矢作芳人調教師
戦ってきた経験値が違うと自信をもっていましたが、強いメンバーがそろっていたので、よく勝ち切ってくれたと思います。2着馬も良い脚で来ていたのでひやひやしましたが、来たら来ただけ伸びてくれました。自分が生まれ育った場所で、瑠星騎手も思い入れが強い競馬場。結果を出せてうれしいです。
坂井瑠星騎手
負けられないと思っていたので、ほっとしています。休み明けでも十分に走れる状態でしたし、この馬の力を出せれば勝てると思っていました。国内ではまだ負けていないですし、春は悔しい思いもしたので、そのリベンジをという気持ちが強いですね。また強いフォーエバーヤングをお見せできればと思います。