長浜騎手が2勝目を挙げ躍進
土田騎手はシリーズ初勝利


ヤングジョッキーズシリーズTR 盛岡
東日本地区のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドは、10月下旬に集中した日程。第4週の火曜日が浦和、そして最終週は火曜日が盛岡で、木曜日の船橋で順位が決まる。
ただ、盛岡ラウンドに出場した地方所属騎手は、5名ともここまで3着以内がゼロ。そしていずれも2日後の船橋に出場する予定がないため、ファイナル進出の可能性を確保するためには、ここで2戦とも上位に入る必要がある。
逆にJRA所属騎手は7名のうち4名が船橋にも出場予定。そのうちのひとりが、YJSラストイヤーとなる原優介騎手。今年は盛岡からのスタートで、ファイナル進出を狙うには、ここで好成績を残さなければならない。
第7レース後の騎手紹介式では、その原騎手が指名されてエピソードトークを披露。続いて地元所属の新人、坂井瑛音騎手がマイクを持ち、即興で頭に浮かんだネタであいさつ。しかしウイナーズサークルの周辺は苦笑いに包まれてしまった。それでもたくさんの視線の前で物怖じしない度胸は見せた。
その約1時間半後、夜の景色になったパドックに出場騎手が再び姿を見せた。
第1戦はC1クラスのメンバーによるダート1200メートル戦。原騎手と佐々木志音騎手(岩手)が単勝2倍台の支持を受け、続いて土田真翔騎手(JRA)、藤田凌駕騎手(北海道)が10倍未満となっていた。
レースはYJSでよく見られる、最後の直線で差し馬が台頭する形。逃げた坂井騎手が前半3ハロンで刻んだ時計は36秒5で、この日の前半に行われた同じC1クラスより遅かったが、追走する騎手の目標にされる形になってしまった。
その流れをもっともうまく利用したのが、3番手あたりにつけた長浜鴻緒騎手(JRA)。最後の直線に入ったところで徐々に伸びて先頭に立ち、その直後から差を詰めてきた佐々木騎手をクビ差抑えて勝利を挙げた。
長浜騎手はトライアルラウンド門別に続いての2勝目で、ファイナル進出が一気に近づいた。逆に2着の佐々木騎手は「3コーナーで外からのプレッシャーがきつくて……」と、くやしそう。ファイナルにつなげるためには、最終戦となる次のレースで2着以内に入らなければならなくなった。2着から3馬身差の3着に入った藤田騎手も、第2戦でもう一度上位が必須となった。
原騎手は後方からの競馬で4着まで。「スタートでもたついてしまったので脚を溜める形に切り替えたら、よく伸びてくれました」とのこと。原騎手は4回しか騎乗機会がないだけに、大きい着順は避けたい状況だ。
続く第2戦は宮内勇樹騎手(北海道)が単勝2.4倍で、横山琉人騎手(JRA)が3.4倍と人気が集中。ただ、30倍未満が9頭と割れた分布になっていた。
舞台となる盛岡ダート1600メートルは、スタートから第3コーナーまでの距離が国内のダートコースとしては最長。その設定に不慣れな騎手が多いためか、スタート後の先行争いは激しくならず、神尾香澄騎手(川崎)が楽な形で先頭に立った。コンビを組んだことがあるコスモキルカスに乗れたことは神尾騎手にとってアドバンテージといえたが、佐々木騎手、長浜騎手、藤田騎手がその直後につけて、その後ろが7~8馬身ほど開いた流れは、少し速かったのかもしれない。
それでも神尾騎手は4コーナーで内ラチ沿いを走らせ、残り100メートル付近では逃げ切れそうな雰囲気。しかし後方から神尾騎手と同じ場所を通って伸びてきた土田騎手が、ゴール寸前で差し切った。
「インコースを選んだのが良かったです」と、トライアルラウンドでの初勝利を決めた土田騎手は笑顔。半馬身差で2着の神尾騎手は「この馬としてはペースが遅かったので勝てるかなと思ったんですが、でも頑張ってくれたと思います」と話した。
2着からクビ差の3着は宮内騎手。「ゲートで外に行ってしまいました。距離も微妙な感じでしたし、道中では落鉄もしていましたが、それでもこの馬の力は出してくれたと思います」とのこと。宮内騎手はここまで通算95勝。「今年中に100勝したいと思っているんですが、届かなかったらまた来年もですね」と苦笑いしていた。
この結果、トライアルラウンド盛岡に出場した地方所属騎手4名は、7位以下が確定。JRAでは長浜騎手が65ポイントで2位に躍進し、ファイナル出場の可能性が高くなった。
第2戦を制した土田騎手は55ポイントで4位。ポイント加算の可能性がある小林脩斗騎手との差は21となっている。土田騎手はおそらく、木曜日の船橋の結果を緊張しながら見守ることになるのだろう。
取材・文浅野靖典
写真佐藤到(いちかんぽ)
Comment
第2戦1着 土田真翔騎手(JRA)
砂をかぶりたくないと思っていたのですが、後ろからになってしまいました。そこでロスを少なくして、馬のリズムを重視していこうと切り替えて、最後はインコースにスペースがあったので、そこに賭けてみようと思いました。道中で脚を溜めた分、最後の伸び脚につながったのだと思います。
第1戦1着 長浜鴻緒騎手(JRA)
急かさなくても大丈夫なタイプだと感じたので、じっくりと進める形で乗りました。最後は後ろから圧をかけられましたが、しっかりとハミを取ってくれたので押し切れるなと思いました。今日は青森から親戚が来てくれていて、その前で勝つところを見せられたのでとてもうれしいです。