地方1位通過は兵庫・土方騎手 第2戦勝利の古川騎手はJRA4位
ヤングジョッキーズシリーズTR 金沢
西日本地区のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドは金沢競馬場が最後の舞台。地方、JRAともに出場騎手全員にファイナル進出の可能性が残っている。
地元金沢からの出場は2023年デビューの加藤翔馬騎手。今年ここまで88勝、金沢では80勝でリーディング3位と大活躍。通算でも150勝をあげており、YJSには最後の参戦だ。「先輩たちからもがんばれと言ってもらいました。(兄弟子の)吉原寛人騎手はYJSのレースもチェックしてくれています。JRAで乗れるチャンスなのでがんばりたいです」と意気込んだ。
紹介式の後、並んで笑顔で帰ってきたのは高知の二人。阿部基嗣騎手は「十分チャンスがあるので、最後まで上のポイントを狙います」。ルーキーの城野慈尚騎手は「他場で乗るのは初めてなんです。地元の多田羅騎手や岡村騎手に金沢コースについて聞いてきました」と緊張と期待が混じった表情。その城野騎手はエキストラ騎乗で2勝をあげる活躍を見せた。
その後ろでは、角田大和騎手(JRA)と地元の松戸政也騎手が話し込んでいる姿があった。「松戸騎手が声をかけてくれて、2戦目の馬について教えてくれました。自分もレースを全て見てきて難しそうな馬だと思ったのですが、松戸騎手の話を聞いて納得しました。イメージのすり合わせができて有難かったです」と角田騎手。地方、中央の垣根を越えて交流できるのも、このシリーズの良さである。
第1戦、行く構えを見せたのは青海大樹騎手(佐賀)だったが、大外から高杉吏麒騎手(JRA)が競りかけ2頭の先行争いとなった。それでも意外とペースは上がらなかったようで、向正面に入ると角田騎手がスッと直後の3番手につけ、半ばあたりでは望月洵輝騎手(愛知)も外から動いていった。直線では高杉騎手が単独先頭に立ち、外から角田騎手と望月騎手が伸びてきたところに、土方颯太騎手(兵庫)が内から突き抜けて1馬身半差で勝利を手にした。2着争いは3人が接戦で、最後まで粘った高杉騎手が2着、クビ差の3着に望月騎手、半馬身差の4着に角田騎手で、5着に加藤騎手が続いた。
レースが終わり誰よりも早くポイントを確認しに来たのは加藤騎手の父で師匠でもある加藤和義調教師。「まだまだですねぇ。もっと強気に乗らなくちゃ」と言いつつも「今、何位になった?5着だったから上位ですよね?」とポイント表をチェックしていた。当の本人はレース前からしっかりとポイントを確認していたようで「入着できれば、土方と望月に先着されても大丈夫なはず」と10ポイント獲得できたことには安堵していた。
集計が終わり、この時点で地方西日本は上位4人が確定。今回出場した騎手では土方騎手、望月騎手、加藤騎手がファイナル出場圏内に入った。好騎乗で勝利を掴んだ土方騎手は「勝った瞬間、これでファイナル行けるかもと嬉しくなりました。他地区での勝利は初めてなんです。もう一つ勝てるようがんばります」と満面の笑顔。望月騎手は「同期の土方に負けたのは悔しいです。今日は名古屋開催を休んできているので、こっちで勝ちたいです」と意気込みながらも、「一緒にファイナル行きます!」とルーキー二人が肩を組んでいた姿が微笑ましかった。
一方、JRA西日本は、田口貫太騎手が4位以内を確定。しかし圏内の争いは大接戦で、5人いずれもチャンスが残されていた。第1戦が悔しい2着だった高杉騎手は「次勝ちます」と言って最後のレースへと向かった。
その混戦に決着をつけたのは古川奈穂騎手(JRA)だった。第2戦も先行争いが激しくなり、松本大輝騎手(JRA)が2コーナーでハナを取り切り、その直後で城野騎手、角田騎手、高杉騎手が横並び。古川騎手はその集団を見る絶好ポジションでレースを進めた。直線に入ると外から脚を伸ばし、残り100メートルあたりで先頭を捉え半馬身差で押し切った。2着は中団うしろから良い末脚を見せた土方騎手、3着は逃げ粘った松本騎手で、4着加藤騎手、5着角田騎手と続いた。
「馬の手応えがとても良かったので、自分さえ焦らなければと。勝てばチャンスは来るだろうと思っていました。YJSはこれまでファイナルへ進めなかったので嬉しいですね」古川騎手は微笑んだ。
これにより地方西日本は、1位・土方騎手、2位・長江慶悟騎手(笠松)、3位・加藤騎手、4位・望月騎手。JRA西日本は、1位・橋木太希騎手、2位・河原田菜々騎手、3位・田口騎手、4位・古川騎手となった。
東日本地区のトライアルラウンド最終戦は、10月31日に船橋競馬場で行われる。
取材・文秋田奈津子
写真岡田友貴(いちかんぽ)
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第2戦1着 古川奈穂騎手(JRA)
スタートが良い馬だったので前々でレースをしたいと思っていました。最後は馬ががんばってくれるのを信じて追っていました。金沢競馬場は今まで何回も騎乗させてもらっていたので一つ勝てて良かったです。(ファイナルの)園田競馬場も勝ったことがある競馬場なのでいいイメージです。優勝狙ってがんばります。
第1戦1着 土方颯太騎手(兵庫)
直線は外の馬が良い脚に見えたので内を選びました。最後はがんばってという思いで追っていました。トライアルラウンド1位という結果には驚きましたね。同期の望月と行けるのは心強いです。中京は直線が長いし、道中はじっとしていた方が良いイメージです。ファイナルラウンドの経験がある大山騎手に教えてもらいます。