1番人気にこたえ差し切る
今年も北海道勢が上位独占
プリンセスカップがグランダム・ジャパン2歳シーズンの対象レースとなったのは2012年。同時に2歳牝馬による特別から重賞へ昇格した。過去11回の所属別優勝馬は北海道6頭、岩手4頭、浦和1頭。
プリンセスカップは地元岩手2歳牝馬のレベルを測る格好なレースでもある。岩手所属の優勝馬は12年からブリリアントロビン、サプライズハッピー、ゴールデンヒーラー、フジラプンツェルの4頭。共通するのは牡馬とも互角以上の勝負を演じてきた強豪だということ。来シーズンの3歳戦線を占う意味でも重要な一戦に位置づけられている。
今年は北海道から5頭、迎え撃つ岩手9頭の計14頭で覇を競った。昨年、開催時期が早まり、活躍が目立ったエーデルワイス賞JpnIII組の出走はなかったが、1番人気から5番人気まですべて北海道勢。結果も昨年と同様、北海道所属馬が3着までを独占し、改めて層の厚さを見せつける一戦となった。
レースを振り返ってみたい。主導権を握ったのは岩手のラポジートだった。牡馬相手にビギナーズカップを完勝した時、岩本怜騎手が「リズム良くレースを進めないと戦意を喪失するタイプ」と語ったが、メンバーと枠順を見渡して逃げの戦法を選んだ。その動きを見て11番枠に入ったリコーシュペルは2番手を追走。3番手にハッピータレイア、4番手インにスティールブライト。
1番人気に支持されたエイシンナデシコは「腰を落としたときにゲートが開いた」(山本政聡騎手)ため若干出遅れたが、すぐに立て直してヴィルミーキスミーの内から5番手まで押し上げた。
ラポジートは前半35秒8のハイラップを刻んで逃げたが、常に厳しいレースを経験している北海道勢には通常の流れ。4コーナーでは2馬身ほどリードしていたが、直線を向いて後続が一気に差を詰める。
中を割ってスティールブライトが残り200メートルで先頭に立ち、最内からピカンチフラワー、外からリコーシュペル、ハッピータレイアが襲いかかる。スティールブライトがこれらを振り切ったのもつかの間、さらに大外からエイシンナデシコが強襲。一完歩ごとに差を詰め、ゴール前できっちり差し切ってクビ差で快勝。待望の初重賞を手にした。
山本政聡騎手は、9月19日のフローラルカップ(門別1600メートル)以来となる重賞制覇。同レースのゼロアワーもエイシンナデシコも奇しくも北海道所属だった。レース後、村上正和調教師から何か指示はあったのか聞いたところ、「特になかったけど、阿部龍騎手から、仕掛け始めるとササる癖があり、ここ2戦は2着止まりだった」と。
それゆえ直線でもたついたのは折り込み済み。「2回続けて北海道のいい馬に乗せてもらって感謝しています。いい仕事ができました」
この日はアメリカ・ブリーダーズカップデー。エイシンナデシコの父タリスマニックは17年ブリーダーズカップ・ターフGIを優勝したが、奇しくも今年と同じデルマー競馬場が舞台だった。プリンセスカップ馬となったエイシンナデシコの動向に注目したい。
取材・文松尾康司
写真佐藤到(いちかんぽ)
Comment
村上正和調教師
鞍上が能力をうまく引き出してくれた。走れない時期もありましたが、ようやく立ち直ってくれました。まだ若さが残っているのでササったりモタれたりしますが、素質は高いと思っていました。今後については考えていません。グランダムも中央入りの選択肢もありますからね。オーナーと相談して決めます。
山本政聡騎手
スタートで出遅れましたが、すぐに態勢を立て直せた。相手はヴィルミーキスミーだと思って位置を取り、あとは流れ次第といった感じでした。ペースは意外と落ち着いていたので2、3番手の馬が渋太く残りそうなムード。(山本)聡哉にやられたかな、と思いましたが、最後はしっかり脚を使ってくれました。