web furlong ウエブハロン

地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロンPresented by National Association of Racing

Copyright(C) 1998-NAR.All Rights Reserved.

第26回兵庫ジュニアグランプリJpnII

直線弾けゴール前抜け出す
  ダート三冠へ夢が広がる勝利

例年、兵庫ジュニアグランプリJpnIIにはJRAから2勝馬が複数頭参戦するが、今年はコスモストームのみ。それ以外の4頭は1勝馬というメンバー構成になった。それでも単勝1番人気は1勝馬のハッピーマンで2.6倍。コスモストームが3.2倍で続き、ネクストスター門別2着のべラジオドリーム(北海道)が4番人気でJRA勢に割って入るという構成だった。

JRA馬も人気の一角べラジオドリームも1400メートル以下で先行しての勝利経験があり、ペースはある程度流れるかに思われた。しかし、真ん中からコパノヴィンセントが先手を取るとほどなくして隊列は決まり、吉村智洋騎手は落ち着いた流れに持ち込んだ。その直後のインで虎視眈々と狙っていたのはヤマニンシュラ。最後の直線入口で外に出されると、勢いよく前に迫った。しかし、それによって進路が開き、2頭を上回る勢いで伸びたのがハッピーマン。ゴール手前で抜け出すと、コパノヴィンセントに1馬身半差をつけ勝利を手にした。

この爆発力にはビックリで、2着に粘ったコパノヴィンセントの吉村騎手や、3着ヤマニンシュラの幸英明騎手は口を揃えて「勝ち馬が強かったです」と称えた。

勝ったハッピーマンはこれまでの2戦では砂を被ったことがなく、馬群で揉まれる競馬もこれが初めてだったが、克服した。

調教に自らも跨る寺島良調教師は「デビューの頃から動くし、能力が高いなというイメージでした」と期待を寄せていた。「初戦でいい勝ち方をして、前走は展開と馬場で負けましたが、競馬を少しずつ覚えさせる内容ある競馬でした」とここまでの歩みを振り返った。

さらに、鞍上の判断も光った。坂井瑠星騎手は「小牧(太)先輩に『今日は内やで』と言われたので」とロスない立ち回りを振り返ったが、どの競馬場に行ってもレース前に自らの足で馬場を歩いて確認しているだけに、足の裏から伝わる感覚もあったことだろう。

2着吉村騎手は「勝ったと思ったんですけどね。まだ緩さを残しますが、しっかり走れていてのびしろを感じます」と話し、3着幸騎手も「キックバックを気にせずリズムよく走れていました」と、それぞれ敗れた中にも今後への可能性を感じたよう。

一方で、5着コスモストームの秋山稔樹騎手は「敗因があまり分かりません」と思案顔。デビュー2戦目は揉まれて7着に敗れた一方、2勝はいずれも外からスムーズに運んでのもので、この日も大外枠を生かした競馬だったが「3~4コーナーで鞭を入れてからの反応が微妙でした。スピード型という感じはなく、距離はもう少し延ばしてもいいかもしれません。オーナーや調教師と相談したいです」と去っていった。

地方最先着の4着はヴィグラスデイズ(北海道)。服部茂史騎手は「直線ではジリジリとしか伸びていなくて、門別1200メートルまでしか使っていない差が出たかな」と話した。

勝ったハッピーマンは12月11日の全日本2歳優駿JpnIを選択肢の一つに入れる。さらに寺島調教師は「気のいい馬なのでまだ分からないですけど、距離延長もこなしてくれれば、ダート三冠が整備されているので、そこを目指せるようにやっていきたいです」と話した。

取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

坂井瑠星騎手

いいスタートを切って引っ掛かりたくなかったので、遅れてもいいかなと思っていました。行きっぷりが良くて抑えるのが大変でしたけど、じっとしておくだけでした。1周競馬の1400メートルをこなして今後の幅が広がったと思います。距離が延びても対応できるよう厩舎と相談してやっていきたいです。

寺島良調教師

枠順からは外を回って、砂を被ることになってもそれはそれでいいかな、と戦前は思っていました。実際には思ったよりも1列後ろからになりましたが、道中は上手く我慢して、短い直線でもこれだけの瞬発力で差し切ってくれて収穫あるレース。この競馬ができるなら、可能性が広がります。