ハナ差で逃げ切り連覇達成
国内ジーワン無敗のまま引退
2024年のチャンピオンズカップGIには前年の優勝馬であるレモンポップが参戦。そして、その日の最終レース後に引退式が行われると発表された。国内では連対率100%、GI/JpnIで負け知らずという実績の持ち主は、はたして有終の美を飾ることができるのか。
レースの3日前に発表された馬番は、昨年の“15”とは対照的な“2”となった。それを鞍上の坂井瑠星騎手が知ったとき、「これは行くしかないな」と思ったそうで、田中博康調教師は「思い切った競馬をしようと考えていたことが、1コーナーまでの動きで伝わってきました」とレース後に振り返った。
レモンポップはその気持ちに応えて2年連続で逃げ切ったが、最後の直線で猛追してきたウィルソンテソーロとはハナ差。ゴールの瞬間は場内の至るところから悲鳴のような声が聞こえてくる、ギリギリの勝利だった。
しかし坂井騎手はゴールの瞬間、「勝った」と思ったとのこと。実際に「ゴールのあと、川田さんに『おめでとう』と言われた」そうで、レース直後に放映された映像では、ゴールの瞬間にウィルソンテソーロの川田将雅騎手が苦笑いしたように見えた。そのあたりは騎手にしか分からない感覚なのだろう。
それでもレース回顧のイベントでは「着順表示を見たら“写真”だったので、不安になりました」と振り返っていた。レース後に芝コースに出たのはレモンポップだけ。向正面から常歩でスタンドの前に戻ってきたところでようやく、着順表示の1着に“2”が点灯。その瞬間、坂井騎手は大きく左手を挙げた。
2着のウィルソンテソーロもすばらしい走りを見せた。韓国のコリアカップGIII・2着後は渾身の仕上げでJBCクラシックJpnIを制覇。そこから中3週で再び大舞台に向けて調整するのは相当に難しかったと思われるが、パドックでは好調時に見せる首を傾ける仕草をしながら力強い歩きを披露。ゲート入りの前は鞍下に汗が目立っていたものの、それを吹き飛ばす豪快な末脚を発揮した。
それだけに、レース後に小手川準調教師が「これだけ激しい競馬をしたので」と話したのは無理からぬところ。昨年は12番人気での2着、今年は2番人気での2着だったが、昨年2着の東京大賞典GIに向かうのかどうかは、今後の陣営の判断次第となる。
1馬身半差の3着はゴール直前でインコースから瞬発力を見せたドゥラエレーデ。1着から3着までが昨年と同じという、国内の平地GIでは初の結果になった。
チャンピオンズカップGIは2000年にジャパンカップダートGIとして創設され、14年に中京競馬場に場所を移したタイミングで現在のレース名になった。それ以降は内枠が優勢で、8枠のピンク帽で3着以内に入ったのは昨年1着のレモンポップが唯一だ。そして今年、チャンピオンズカップGIとしては初の連覇。田中調教師は共同記者会見で「いろんなジンクスが聞こえてきましたが、それを打ち破ってくれたすごい馬だと思います」と讃えた。
と同時に不安もあったそうで、今年の雰囲気には「昨年のチャンピオンズカップがピークだったのでは」という感覚があったとのこと。「目に見えない部分での衰えのようなものも感じ取れたので、(能力を)どれだけ維持できているか」というところもあったそうだ。それを支えたのが、担当する田端誠厩務員であり、穂苅寿彦調教助手。表彰式を終えて検量エリアに戻り、係員からレモンポップの曳き手を渡された田端さんは、厩舎に戻るときに「ありがとうございました」と言って笑顔を見せた。
一方、地方競馬ファンの注目を集めたのが、大井所属のミックファイア。過去2戦で手綱を取った吉原寛人騎手は金沢所属のため、現在のルールではJRAのレースで大井の馬に騎乗することはできない。そこで起用されたのは、クリストフ・ルメール騎手。JRAのリーディングジョッキーとのコンビ結成はサプライズと言えるものだったが、結果は13着だった。
「ゲートが開く瞬間にトモを落としてしまったようで、ジャンプスタートのような形になってしまいました。輸送があっても前走からマイナス5キロで、中京競馬場に着いてからの雰囲気も良い感じだったのですが」と、渡邉和雄調教師。ただ、馬場入場の際に気難しい面を見せていたところを含めて「まだ気性的に幼いところがありますね。ルメールさんにもそう言われました」と話した。
それでも今年のフェブラリーステークスGIでは、勝ち馬から0秒8差での7着と健闘している。今回の単勝人気はそのときより1つ下の10番人気で60.5倍だったが、締め切り5分前は40倍台の後半で9番人気。ミックファイアにはそれだけの夢が賭けられていた。この経験を糧として、久しぶりの勝利に繋がることを期待したいものだ。
取材・文浅野靖典
写真いちかんぽ(早川範雄、桂伸也)









