後方からまくった2頭の追い比べ
ハナ差の接戦を制し地方馬初勝利
今年の兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIでは、JRA全勝の記録にピリオドが打たれた。
兵庫には20回以上の歴史があるダートグレードが3つあるが、兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIだけは優勝馬がすべてJRA。このことは実況放送などで毎年触れられている。しかしそれも今年で最後。川崎のフォーヴィスムの勝利は、とても大きいハナ差だった。
そのフォーヴィスムは単勝4番人気で9.4倍。スタートがいまひとつで、1コーナーでは9番手だった。ただ、エートラックスが向正面まで単騎逃げの形になったため、前半800メートルの通過タイムは49秒7と、速いものではなかった(昨年は48秒8秒で、一昨年は49秒2)。
向正面から外を回って目立つ伸び脚で上昇したのがフォーヴィスム。2コーナーでも最後方にいたサンライズホークが直後を追いかけると、3コーナー手前では馬群全体が8馬身ほどと、ほとんど一団に。
直線に入ると、逃げるエートラックスを競り落としてフォーヴィスムが先頭に立ち、そこにサンライズホークが迫ってきた。残り50メートル付近からは2頭のマッチレース。ゴールの瞬間は観客席からは判別できないほどの僅差だったが、スローVTRが再生されてフォーヴィスムが先着したことが分かると、スタンドからは再び大きな歓声が沸き起こった。
「馬主さんと『歴史を塗り替えましょう』と話していました。でも(当初は)補欠で、ギリギリで出走馬に入れた運の強さをいかせたと思います」と、有言実行を果たした吉原寛人騎手。その2週間前の選定馬には、兵庫のイグナイターなどが入っていた。
ただ、イグナイターのハンデは60.5キロ。管理する新子雅司調教師は、同じく選定されていたアラジンバローズだけを送り出した。ファンの多くも『歴史を塗り替えるのは兵庫の馬』と期待して、単勝4.8倍の3番人気に押し上げていた。しかし結果は中団のまま8着。下原理騎手は「内に閉じ込められてどうしようもなかったです。この馬にとっては佐賀のほうがレースをしやすい」と話した。
一方、連覇目前だったサンライズホークは、ミルコ・デムーロ騎手が「本当にくやしい。でも勝った馬はずっと手ごたえがよかったですね」と残念そう。確かにゴール直前では鼻先が前に出たシーンもあった。これは本当に、時の運というしかないものだろう。
ハナ差の後ろは5馬身差で、エートラックスが3着に粘った。「前走の大敗は夏負けの影響もありましたが、寒くなって状態が良くなっています」と、宮本博調教師。2月下旬のかきつばた記念JpnIIIや3月下旬の黒船賞JpnIIIで注目できる存在になりそうだ。
3着から3/4馬身差の4着には北海道のスペシャルエックス、アタマ差の5着には船橋のギガース。地方馬の健闘が目立った今回は単勝万馬券の馬がゼロで、ファンの興味を大いに誘った。それが2008年のJBCクラシックJpnIを6千万円近く上回る、9億7004万5200円という兵庫県競馬における1競走の売得金額レコードにつながったのだろう。
取材・文浅野靖典
写真桂伸也(いちかんぽ)
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内田勝義調教師
スタートで遅れてアレっと思ったんですが、最近は後ろから脚を使う競馬もできるようになってきましたね。このレースで初めて地方の馬が勝ったと聞いて、とてもうれしく思います。今年は川崎記念も勝てましたし、ウチの厩舎の年内最後の出走で大きいレースを勝てて、とてもいい1年になりました。








吉原寛人騎手
前走は大井のマイルで乗り難しくて、自分のなかでも反省点がありましたが、園田の1400メートルならと考えていました。馬の状態は上がっていて、前の馬を行かせる形の展開も向いたと思います。最後は相手に出られた瞬間もあったのですが、勝つことができてよかったです。