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レディスジョッキーズシリーズ2025 エキシビションレース


5年ぶりのエキシビション
 女性騎手が帯広に集結

レディスジョッキーズシリーズで帯広・ばんえい競馬のエキシビションレースが復活した。8名の女性騎手が来場し、ばんえい競馬の竹ケ原茉耶騎手、今井千尋騎手とともにレースを繰り広げた。

2020年以来4回目。女性騎手たちの希望で実現したといい、濱尚美騎手(高知)は「(2022年)ばんえいに今井千尋騎手が入ったから、やりたい!と言いました」。過去4回全て出場している木之前葵騎手(愛知)は「若い騎手も増えたので実現したかった」と話す。関係者の話では宮下瞳騎手(愛知)からも強い要望があったといい、私用で参加できずかなり残念がっていたそうだ。

全国から8名+ばんえい2名が参加

帯広では2月4日、全国ニュースになるほどの大雪が降った。ところどころ雪山が残るが、除雪を続けてファンの受け入れを整えた。「前回よりは寒くない」と関本玲花騎手(岩手)が言うとおり、例年よりは暖かいが騎手らはそろって「寒い」。レース前は、出場騎手がソリに乗るイラストが描かれたおそろいのコートに身を包み、騎乗練習を行った。

神尾香澄騎手(川崎)、深澤杏花騎手(笠松)、佐々木世麗騎手(兵庫)、塩津璃菜騎手(兵庫)が初参加。中島良美騎手(浦和)は2度目だが前回は怪我のためエキシビションレースには参加できなかった。

練習前には馬とふれあい、4人一緒にハクウンリューの背中に騎乗するシーンも。体重の軽い女性騎手とばん馬だからこそだろう。神尾騎手は「性格もおだやかでかわいい。大きく、力も強くて暖かい」。練習馬の1頭、PR馬のハクウンリューは各競馬場へ遠征しており再会を喜ぶ騎手もいた。「大きい」「かわいい」と写真を撮る姿は普通の馬好きの女性に見えるが、全員が騎乗の飲み込みが早く、2回目となる濱騎手は1人でそりを操っていた。手綱さばきとハミ使いの把握にプロ騎手の実力を見た。

その後抽選会が行われ、今井騎手は塩津騎手と、竹ケ原騎手は深澤騎手と、ほかの6人は男性騎手とコンビを組んだ。

出場騎手はばん馬に乗って入場。佐々木騎手は初めて裸馬に乗ったといい「広い背中に安心感があった。後肢の動きを感じた」と騎手らしいコメント。

1着は初出場の佐々木世麗騎手

重賞ファンファーレでレースがスタートした。軽量のため軽快なスピードで進み関本玲花騎手(岩手)は「サラブレッドとは違う速さがある」。佐々木騎手と長澤幸太騎手のショータイム、中島騎手と島津新騎手のフェアリーマイが先行する展開。第2障害手前までは女性騎手のほとんどがソリに座り、障害を越えてから動き出した。

佐々木騎手は障害の降り始めから「いけいけいけー!」と中腰のまま両手綱で馬を追い始めた。そのあとを木之前騎手と大友一馬騎手のアサツユが追い、外から塩津・今井コンビのジェイマリアが飛んできた。ショータイムの先頭は変わらず、長澤騎手がゴール前で“幸太の舞”を舞った。そのまま1着でゴールし、佐々木騎手はガッツポーズ。ゴール後には出場騎手が集まり、興奮した表情で盛り上がっていた。

「めっちゃうれしかった!」と佐々木騎手。馬の大きな尻が目の前にあることで、馬上とは違い客観的に馬の頑張りを感じられたという。「顔も体も2倍なのでかわいさも倍増。背中に乗って園田まで帰りたい」と喜んだ。LJS第2戦は地元園田での開催となる。「コース取りが難しい競馬場なので慣れている分リードできているかな。勝ちたいですね」と表情を引き締めた。

2着の中島騎手は「映像より体感が速くジェットコースターみたいな感覚」と表現。濱騎手と鈴木恵介騎手のコンビは最下位での入線だったが、早い段階から手綱を完全にまかされた濱騎手は「楽しかった!」と笑顔だった。

今井騎手は、この日重賞など8レースに騎乗する中での初参加だった。「ずっと楽しみだった」といい、女性騎手同士はもちろん「他地区との交流が増えてほしい」。レースでの交流がないばんえい騎手の思いだ。竹ケ原騎手は「若い子が増えたね。楽しんでくれてよかった」と笑顔を見せた。

物産展やステージイベントも

この日はトークショーやサイン会もあり、翌日20歳の誕生日を迎える塩津騎手に花束のプレゼントも。全国から来たファンも楽しんでいた。

当日は佐賀競馬の公式アイドルグループ『UMATENA』、園田競馬のアイドルユニット『SKNフラッシュ8』が来場し、UMATENAには帯広のファンもコールで盛り上げた。岩手と兵庫の物産展、グッズ販売や各地区の紹介ブースもあり、盛岡競馬場名物・元祖ジャンボ焼き鳥の『鳥喜』には行列ができていた。

この日は調教を終えてから遠く北海道まで来た騎手もいた。帯広の日々が今後に生かされ、一時の安らぎになってくれればと思う。多くの騎手が「ばんえいのレースを見ることがある」と話していたのもうれしかった。

女性騎手たちは一体感と闘志を盛り上げ、3月8日のLJS第1ラウンド、佐賀に向かう。

エキシビションレース結果

着順 騎手名 馬名 ばんえい騎手
1着 佐々木世麗騎手(兵庫) ショータイム 長澤幸太騎手
2着 中島良美騎手(浦和) フェアリーマイ 島津新騎手
3着 木之前葵騎手(愛知) アサツユ 大友一馬騎手
4着 塩津璃菜騎手(兵庫) ジェイマリア 今井千尋騎手
5着 関本玲花騎手(岩手) ゴールドクイーン 藤本匠騎手
6着 神尾香澄騎手(川崎) フナノギムレット 村上章騎手
7着 深澤杏花騎手(笠松) リオノカーニバル 竹ケ原茉耶騎手
8着 濱尚美騎手(高知) ジェイサファリ 鈴木恵介騎手

取材・文小久保友香

写真早川範雄(いちかんぽ)