レディスジョッキーズシリーズで帯広・ばんえい競馬のエキシビションレースが復活した。8名の女性騎手が来場し、ばんえい競馬の竹ケ原茉耶騎手、今井千尋騎手とともにレースを繰り広げた。
2020年以来4回目。女性騎手たちの希望で実現したといい、濱尚美騎手(高知)は「(2022年)ばんえいに今井千尋騎手が入ったから、やりたい!と言いました」。過去4回全て出場している木之前葵騎手(愛知)は「若い騎手も増えたので実現したかった」と話す。関係者の話では宮下瞳騎手(愛知)からも強い要望があったといい、私用で参加できずかなり残念がっていたそうだ。
全国から8名+ばんえい2名が参加
帯広では2月4日、全国ニュースになるほどの大雪が降った。ところどころ雪山が残るが、除雪を続けてファンの受け入れを整えた。「前回よりは寒くない」と関本玲花騎手(岩手)が言うとおり、例年よりは暖かいが騎手らはそろって「寒い」。レース前は、出場騎手がソリに乗るイラストが描かれたおそろいのコートに身を包み、騎乗練習を行った。
神尾香澄騎手(川崎)、深澤杏花騎手(笠松)、佐々木世麗騎手(兵庫)、塩津璃菜騎手(兵庫)が初参加。中島良美騎手(浦和)は2度目だが前回は怪我のためエキシビションレースには参加できなかった。
練習前には馬とふれあい、4人一緒にハクウンリューの背中に騎乗するシーンも。体重の軽い女性騎手とばん馬だからこそだろう。神尾騎手は「性格もおだやかでかわいい。大きく、力も強くて暖かい」。練習馬の1頭、PR馬のハクウンリューは各競馬場へ遠征しており再会を喜ぶ騎手もいた。「大きい」「かわいい」と写真を撮る姿は普通の馬好きの女性に見えるが、全員が騎乗の飲み込みが早く、2回目となる濱騎手は1人でそりを操っていた。手綱さばきとハミ使いの把握にプロ騎手の実力を見た。
その後抽選会が行われ、今井騎手は塩津騎手と、竹ケ原騎手は深澤騎手と、ほかの6人は男性騎手とコンビを組んだ。
出場騎手はばん馬に乗って入場。佐々木騎手は初めて裸馬に乗ったといい「広い背中に安心感があった。後肢の動きを感じた」と騎手らしいコメント。
1着は初出場の佐々木世麗騎手
重賞ファンファーレでレースがスタートした。軽量のため軽快なスピードで進み関本玲花騎手(岩手)は「サラブレッドとは違う速さがある」。佐々木騎手と長澤幸太騎手のショータイム、中島騎手と島津新騎手のフェアリーマイが先行する展開。第2障害手前までは女性騎手のほとんどがソリに座り、障害を越えてから動き出した。
佐々木騎手は障害の降り始めから「いけいけいけー!」と中腰のまま両手綱で馬を追い始めた。そのあとを木之前騎手と大友一馬騎手のアサツユが追い、外から塩津・今井コンビのジェイマリアが飛んできた。ショータイムの先頭は変わらず、長澤騎手がゴール前で“幸太の舞”を舞った。そのまま1着でゴールし、佐々木騎手はガッツポーズ。ゴール後には出場騎手が集まり、興奮した表情で盛り上がっていた。
「めっちゃうれしかった!」と佐々木騎手。馬の大きな尻が目の前にあることで、馬上とは違い客観的に馬の頑張りを感じられたという。「顔も体も2倍なのでかわいさも倍増。背中に乗って園田まで帰りたい」と喜んだ。LJS第2戦は地元園田での開催となる。「コース取りが難しい競馬場なので慣れている分リードできているかな。勝ちたいですね」と表情を引き締めた。
2着の中島騎手は「映像より体感が速くジェットコースターみたいな感覚」と表現。濱騎手と鈴木恵介騎手のコンビは最下位での入線だったが、早い段階から手綱を完全にまかされた濱騎手は「楽しかった!」と笑顔だった。
今井騎手は、この日重賞など8レースに騎乗する中での初参加だった。「ずっと楽しみだった」といい、女性騎手同士はもちろん「他地区との交流が増えてほしい」。レースでの交流がないばんえい騎手の思いだ。竹ケ原騎手は「若い子が増えたね。楽しんでくれてよかった」と笑顔を見せた。
物産展やステージイベントも
この日はトークショーやサイン会もあり、翌日20歳の誕生日を迎える塩津騎手に花束のプレゼントも。全国から来たファンも楽しんでいた。
当日は佐賀競馬の公式アイドルグループ『UMATENA』、園田競馬のアイドルユニット『SKNフラッシュ8』が来場し、UMATENAには帯広のファンもコールで盛り上げた。岩手と兵庫の物産展、グッズ販売や各地区の紹介ブースもあり、盛岡競馬場名物・元祖ジャンボ焼き鳥の『鳥喜』には行列ができていた。
この日は調教を終えてから遠く北海道まで来た騎手もいた。帯広の日々が今後に生かされ、一時の安らぎになってくれればと思う。多くの騎手が「ばんえいのレースを見ることがある」と話していたのもうれしかった。
女性騎手たちは一体感と闘志を盛り上げ、3月8日のLJS第1ラウンド、佐賀に向かう。