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第27回かきつばた記念JpnIII

前年覇者にクビ差で競り勝つ
  初の右回りを克服し重賞初制覇

今年のかきつばた記念JpnIII(1500メートル)は、フェブラリーステークスGI(東京1600メートル)の翌日に組まれた。GI出走が叶わず当レースに回ってきた馬がいる中、かしわ記念JpnIなど重賞6勝馬シャマルの参戦は注目に値する。

シャマルを管理する松下武士調教師はレース前の取材に、「(ワンターンの)東京は合わないと思うし、このあと(前年同様)かしわ記念やさきたま杯を目指しているので」と当レースを選んだ理由を説明。ダートグレード競走の路線が整備され、各馬の適性や臨戦過程を考慮した上でレースが選択できる時代となった中で、当レースのような地方の競馬場の主要競走がもつ意義もまた向上しつつあることが窺われた。

そんな流れにふさわしく、レースは大激戦となった。

先行が主戦法のエートラックスが先手を奪うと、その直後をシャマルが巧みに確保。ロードフォンスが内から、ペイシャエスが外からそれぞれ好位を固めた。懸念のあったスタートを決めたサンライズホークも、5番手の外目と好位置に続く。

レースは、向正面で早くも動いた。逃げ馬が空けて通る内を突いてロードフォンスが進出し、逃げ馬を交わしていく。外から呼応するようにシャマルも追い、2頭で競り合いつつ約2馬身リードを取った。一方、中団外から差を詰めてきたサンライズホークが、3コーナーを回って内へと切り返し、直線入口で前2頭の内に並ぶ。直線半ばで3頭の攻防からシャマルが力尽き脱落すると、代わって外から追い上げたペイシャエスが前に迫って大混戦。最後は、ロードフォンスが内のサンライズホークをクビ差で競り落とし勝利をもぎ取った。

ロードフォンスには現状、右にもたれて走る課題があり、管理する安田翔伍調教師は戦前「右回りを試す意味でここを使うが、調教の感じからは向かないのではないか」と話していた。今回、馬場が重たい内を空けてレースが進む名古屋のコース、最内1番枠など「全体的なことがかみ合っての結果」(横山和生騎手)だったとは言え、課題克服に向けて挑戦して得たこの勝利は、人馬にとって千金に値するものとなるだろう。

サンライズホークは、前走に続いて2着惜敗。当レース連覇はならなかった。3コーナーでの進路の取り方についてミルコ・デムーロ騎手は「前走で外を回って甘くなったので、今回は違うことをしようと思った」と振り返り、このあたりが「気性面で課題がある馬」(同騎手)に最後まで力を発揮させるための工夫と推察される。一方、更にクビ差で3着だったペイシャエスは、そのサンライズホークの動きで進路が交錯。「3~4コーナーで不利があった」(小西一男調教師)との談話と合わせると、そこでのロスが響いたものと推察される。

シャマルは、更に1馬身半遅れて4着だった。川須栄彦騎手は「出来はすごく良かった。(勝ち馬より3キロ重い)59キロを背負った中、堂々としたJpnI馬らしいレースだった」と振り返り、正攻法で健闘した馬を称え、自身も胸を張った。

地方馬期待のサントノーレ(大井)は6着。レース後荒山勝徳調教師は「(レースに向かう)スイッチが入っていなかったようだ」と馬の様子を振り返った上で、引き続きダートグレード戦線への挑戦に含みをもたせた。今後の動向が注目される。

なお、当レースの売得金額は10億3千5百万円余りで、最高額を更新した。

取材・文坂田博昭

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

横山和生騎手

返し馬から右にもたれていたし、簡単な競馬にはならないなと思っていました。正直少し乗りづらかったです。枠が外だったり厳しい流れだったら、着を落としていたかも知れません。難しい面は感じましたが、状態の良さで凌ぎきってくれました。初めての名古屋競馬で格好良い所を見せられて良かったです。

安田翔伍調教師

調教で感じていた通りの状態の良さが、最後までファイト出来た要因だと思います。内を空けるコースですが、外に出して戦うという対応力は出せないだろうから、内枠を引いた時点で内を狙うしかない、という話は事前にしていました。まだ幼さもあるので、対応力をもっと身につけていく必要がありますね。