木之前騎手が首位守り連覇達成
地元で巻き返し佐々木騎手が2位


レディスジョッキーズシリーズ2025園田ラウンド
園田競馬場で初めて開催されたレディスジョッキーズシリーズ(LJS)。佐賀ラウンドと同様、この日も場内イベントが盛りだくさんで、関係者からも「今日は平日開催だよね?」という言葉が聞かれるほど賑わっていた。さらに、第1レースから関本玲花騎手(岩手)が騎乗し、第4レースでは中島良美騎手(浦和)が勝利するなど、LJS参加騎手のエキストラ騎乗も注目を集めていた。
騎手紹介式が始まるかなり前から西ウイナーズサークルには多くのファンが集まり、女性騎手たちが登場すると大きな拍手に包まれた。特に佐々木世麗騎手(兵庫)と塩津璃菜騎手(兵庫)には「がんばれよー!」などと地元らしい声援。また先日、入籍を発表したばかりの濱尚美騎手(高知)には「おめでとう!」などと温かい言葉が贈られていた。騎手たちも終始和気あいあいとしており、この和やかな雰囲気はLJSならではだ。
第1戦は1230メートル戦。木之前葵騎手(愛知)が先行しようとしたところに、大外枠から佐々木騎手が先頭を奪った。3番手に宮下瞳騎手(愛知)、4番手に塩津騎手が続きやや縦長の展開。向正面半ばを過ぎると宮下騎手と塩津騎手が並びながら前との差を詰め、その後ろにいた濱騎手も接近した。
そして3~4コーナーでは後続も追い上げて、直線入口では9頭全馬がほぼ一団の大激戦。それでも佐々木騎手は最後まで先頭を譲らず力強く押し切った。1馬身3/4差がついての2着争いは塩津騎手と、外から伸びた深澤杏花騎手(笠松)が接戦だったが、写真判定の末、深澤騎手がハナ差先着。6、7、9番人気での決着で人気馬総崩れ。3連単は68万円を終える超える波乱となった。
「うれしー!!」と大喜びの佐々木騎手。「先輩に、ひと脚使うタイプではないので流したほうがいいとアドバイスをもらい、その通りに乗ったら勝てました」とホームの利を存分に活かした勝利だった。2着の深澤騎手は「展開がはまってよしと思ったのですが……。今朝、(所属厩舎の)田口先生からも頑張ってこいと言われたので、なんとしてもがんばります!」と2戦目に向けて気合を入れた。最低人気馬で3着に好走した塩津騎手は「道中、手応えが良く3着にもってこれて嬉しいです」と納得している様子だった。
この時点でも暫定トップは変わらず木之前騎手。第2戦は実績上位の馬が当たり、しっかり結果を残したいところだ。「どんなレースになるのか楽しみでです。心躍ります!」と余裕たっぷりの笑顔。一方、ポイント表を見ながら報道陣と話しこむ3位の関本騎手。「4位とは12ポイント差だから……」と他の騎手の順位をチェックしていた。
第2戦で木之前騎手が騎乗するのは4連勝中の実力馬で、単勝1.1倍と圧倒的な人気を集めた。このオッズには相当なプレッシャーもあっただろうが、レース前の表情通り、横綱相撲の勝利を飾った。
好スタートを切った木之前騎手だったが、外から他馬が来るなり、スッと下げて3番手の内でレースを進めた。先手を取ったのは中島騎手で、2番手に深澤騎手。木之前騎手の後ろに濱騎手、塩津騎手などが続いた。
向正面では木之前騎手が囲まれたように見えたが、3コーナーで外に出すと、1頭だけ違う手応え。「ステッキは入れていないです。ビジョンを見たら余裕かなと思ったので最後はカッコいい姿勢でゴールしました」と6馬身差の圧勝劇を披露した。2着は6番人気の塩津騎手。第1戦に続き人気以上の走りを見せた。ゴール前で深澤騎手を捉えた関本騎手が3着に食い込んだ。
シリーズ全4戦の結果、女王に輝いたのは87ポイントで木之前騎手。前回に続き連覇達成だ。2位は62ポイントの佐々木騎手でこちらも2回連続の準優勝。3位は61ポイントで関本騎手となった。
見事にトップを守り切った木之前騎手。本人のキャラクターもあるが、シリーズ中も常に楽しそうな姿が印象的だった。「昔は体の疲れがあったり体力がついてこなかったのですが、最近は余裕があるんです。ホットヨガに通っていてけっこういいんですよね。疲れない体の使い方がようやく分かってきた気がします。馬乗りが楽しくて仕方ないです」と充実一途の様子。「LJSはとても楽しくてモチベーションが上がります。明日の名古屋競馬もがんばれそうです!」と取材しているこちらが元気になるような、はつらつとした笑顔で締めくくった。
女性騎手の皆が口にするのは「来年もLJSを開催してほしい」ということ。騎手自身や、ファンの皆さんが楽しんでいる姿を見て、来年以降もこのシリーズがさらに盛り上がり、競馬界全体を明るくしてほしいと改めて実感したLJS2025だった。
取材・文秋田奈津子
写真桂伸也(いちかんぽ)
Comment
総合2位 佐々木世麗騎手(兵庫)
2年連続の2位で悔しい気持ちの方が大きいです。また葵さんに負けてしまいました。でも1戦目を勝てたのはとても嬉しいです。地元だったので乗りやすかったです。動くタイミングなどのアドバンテージはかなり大きかったと思います。また来年もがんばります。
総合3位 関本玲花騎手(岩手)
2戦目は、直線でポイント上位の佐々木騎手と深澤騎手が見えたのでなんとか交わしたいと必死に追いました。去年は、第2ラウンドしか乗れなかったので今年は頑張りたいと思っていました。表彰台に残れて良かったです。LJSでしか女性同士で乗れないのでこういう機会をもらえて有難いです。
総合優勝 木之前葵騎手(愛知)
第2戦は余力があったのでいつから動こうかなと考えていました。4コーナーが内が開きやすいと感じたので、外がダメなら内でもいいと考えていました。馬に力があるからこそできる乗り方でしたね。背中が良くて騎乗者のことを信頼してくれる馬でした。賞金は車の修理代に使います(笑)。