ハイペースで波乱決着
自慢の末脚で重賞初制覇
南関東牝馬三冠の2戦目は、3連単162万3110円の大波乱に終わった。上位3頭は三冠初戦の桜花賞に未出走で、いわゆる“別路線組”。ハイペースで流れたこと、広い大井のコース特性が結果を大きく左右した。
レース前は3強対決の構図が描かれていた。1番人気に推されたのは桜花賞馬のプラウドフレール。目下重賞3連勝と勢いは断然で、東京2歳優駿牝馬も制していることから右回りにも不安はない。これに、広いコースで巻き返しを期すゼロアワー、豊かなスピードがあるホーリーグレイルがどう対峙するかが焦点だった。そしてレースでもホーリーグレイル、プラウドフレール、ゼロアワーが馬群から抜け出す形で最後の直線を迎え、あとはこの順番がどう入れ替わるか、に思われた。
しかし、直線の半ばで様相が一変。前半3ハロン35秒4は、桜花賞で好時計をマークし、卓越したスピードを証明している3頭にとっても厳しい流れだった。
プリンセスの称号を手にしたのは、4番人気のベルグラシアス。道中は後方の13番手を進み、3コーナーから外を回って位置取りを上げると、4コーナーで4番手へ。直線でも勢いそのままに脚を伸ばし、2着に2馬身半差をつけてゴールを駆け抜けた。重賞は初挑戦だったが、牡馬相手の準重賞・スターバーストカップで2着に食い込んだ実績があり、前走も5馬身差の圧勝と勢いにも乗っていた。町田直希騎手は「流れが速くなったので、チャンスがあるなと思っていました。これだけの走りをしてくれて『ありがとう』という気持ちですね」と馬をねぎらった。冷静なペース判断と的確な仕掛けは“追い込み巧者”の面目躍如。今後もこのコンビに注目が集まる。
2着には13番人気のグレアネオンライトが入った。出遅れを喫したが、無理をせず後方の15番手で脚をため、直線で末脚を爆発させた。本橋孝太騎手は「前走よりいい状態だと感じていましたけど、出遅れたのが痛かったですね。注意はしていたのですが……」と悔やんだ。精神面のさらなる成長が鍵を握るが、勝ち馬に次ぐ上がり時計をマークした内容を見れば、今後も展開次第でチャンスが巡ってくる。
9番人気のドナギニーが3着。10番手前後を追走し、4コーナーで外に持ち出すと鋭く伸びた。「落ち着きが出てきましたね。体も途上なので、これからだと思いますよ」と本田正重騎手。もともと陣営も広いコースが合うことを口にしており、今後もこの舞台での好走が期待できる。
二冠を狙ったプラウドフレールは5着に敗れた。「位置取りは悪くなかったけど、前の馬を追いかけすぎてしまいました」と張田昂騎手は話したが、ホーリーグレイルが3コーナーの手前で引き離しにかかり、後ろからはゼロアワーがマークしてきている難しい状況。ハイペースであることは分かっていても、追いかけざるを得ない立場だった。それでも5着に残ったのは実力の証明。巻き返しの余地は十分にある。
取材・文大貫師男
写真宮原政典(いちかんぽ)
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市村誠調教師
パドックではいつもと変わりなかったですね。変わらないことはいいことだと思っていますし、イレ込んでいたのは関係者だけでしたね。道中もいつも通りの競馬でしたし、しまいに伸びてくれるかなと思って見ていました。最後は力が入りましたね。次走はのじぎく賞か、関東オークスを予定しています。
町田直希騎手
この馬のペースで走らせるつもりでいたので、それに展開が向いてくれればいいなと思って乗りました。3~4コーナーあたりで手応えがありましたし、直線に向いて追い出してからも反応してくれました。あとは馬を信じて追いました。まだまだ馬が良くなってくる感じなので、これからの成長に期待したいです。