直線逃げ馬を競り落とす
連覇達成でグレード8勝目
5月5日、こどもの日に行われたかしわ記念。約5年をかけた大規模改修工事が終わり、リニューアル後の船橋競馬場で最初のJpnI競走。地域密着型の新しいホースパークには多くのファンが集まり、ビッグレースを楽しんでいた。馬をより身近に感じさせる空間に生まれ変わったことで、子供たちが馬を興味深く見つめている姿も目に留まった。子供の頃の思い出が、競馬に興味を持つきっかけになっていくことにも期待したい。
さて、今年はJRA6頭、地方から4頭の計10頭が出走。根岸ステークスGIII、フェブラリーステークスGIを連勝中のコスタノヴァが単勝1.5倍の1番人気。昨年の覇者シャマル(4.7倍)、かきつばた記念JpnIIIで初の重賞タイトルを手にしたロードフォンス(5.7倍)、佐賀・JBCスプリントJpnIの覇者タガノビューティー(9.5倍)と続いた。
結果、シャマルが川須栄彦騎手とのゴールデンコンビで連覇を達成。百戦錬磨のベテラン7歳馬が意地を見せ8つ目のダートグレードタイトル獲得となった。
レースは、ウィリアムバローズがハナを切ると、シャマルはすかさず2番手を追走。その後ろにロードフォンス、ポタジェ、コスタノヴァとJRA勢が続いた。1コーナーではすでに縦長の展開。
「他馬のことは気にせず、シャマルと息を合わせることだけに集中しました。終始抜群の手応えで、雰囲気よく直線を迎えることができました」(川須騎手)
4コーナーを過ぎてもウィリアムバローズがしぶとく粘り込みを図っていたが、シャマルが川須騎手のステッキに応えてジワジワと詰め寄り、力でねじ伏せるかのようにゴール前で半馬身差かわし切った。外から2頭が脚を伸ばし、2着からクビ差の3着がコスタノヴァ。半馬身遅れた4着がロードフォンスだった。
JRA4頭が横一線になったかのような大混戦に終止符を打った瞬間、川須騎手は馬上で大きくガッツポーズ。引き返してくるときにスタンド前を通り、多くのファンに喜びを爆発させていた。枠場に入る時や口取り撮影では、シャマルの首に抱きつき、愛おしそうになでていた姿は、最愛のパートナーへの愛情や優しさ、リスペクトが伝わってくるかのようだった。「馬に感謝です。いつも『ありがとう』という気持ちしかありません。最高でした」と川須騎手。
松下武士調教師も「相手はしぶとかったですが、よくかわしてくれました。勝負根性がありますね。7歳ですけど全然衰えを感じさせずに頑張ってくれています」と目を細めていた。
今後は6月25日の浦和・さきたま杯JpnIを視野に入れていく予定だという。さらには、かしわ記念JpnI・3連覇や黒船賞JpnIII・4連覇を目指し、シャマルの夢は続いていく。
なお、地方最先着は5着のギガキング(船橋)だった。重賞7勝の実力馬で、前走のオープン特別Vからコンビを組む野畑凌騎手は「砂を嫌がるところもありますが今日は我慢をしていたし、3~4コーナーでいつも置かれますが、今日はついて行けました。最初のペースが遅かったので(最後は)離されましたが、いい脚を使って前に食らいついてくれました」と振り返っていた。
取材・文高橋華代子
写真いちかんぽ(岡田友貴、早川範雄)
Comment
松下武士調教師
相手も最後はしぶとかったので、よくかわしてくれたと思います。使って良くなっていく馬で、かきつばた記念より黒船賞、黒船賞よりもかしわ記念と、コンディションも上がっていました。重(馬場)も得意でしょうけど、良でもやれるところをここ2戦は見せてくれていますね。
川須栄彦騎手
すばらしい状態でした。ある程度、前目の競馬にはなると思っていました。最後は前にいた馬も非常にしぶとかったですし、後ろからも絶対に差し込んでくる馬がいると思っていたので、負けてたまるかという気持ちでした。まだまだ活躍できると思いますし、僕自身も一緒にもっと勝っていきたいです。