早めの仕掛けで直線突き放す
目標とした舞台で重賞初制覇
岩手競馬に夏の訪れを告げる大一番、東北優駿。雨模様だった昨年とは異なり、上空を覆う白い雲の間から時折明るい日が差す好天となり、最高気温も28度近くまで上がる中で熱戦が展開された。
戦前から、リケアカプチーノが大きな注目を集めた。昨年7月に高知でデビューし、ネクストスター高知など2つの重賞で2着した経歴をひっさげ岩手に転入。前走のダイヤモンドカップ(盛岡1800メートル)で、南関東などからの強力な遠征馬を相手に2着と奮戦した実績が、素直に評価された。
一方、地元・岩手デビュー馬の中では、前走で重賞のイーハトーブマイルを勝って臨むユウユウコラソンが注目された。自厩舎(佐藤祐司厩舎)所属の同馬を2歳の時から手がけてきたという佐々木志音騎手は、この日が20歳の誕生日。「馬が、冬の休催期間中に移籍していた南関東から春に岩手に戻ってくると、すごくパワーアップしていた。そこから更に勝たせてもらって前走で重賞も獲れて、ここまで来たのは光栄なこと」と話し、大舞台への意欲を示した。
向正面から馬場を1周半する2000メートル戦。戦前の予想通りブリスタイムが先手を取ると、3番人気のユウユウコラソンがこれを追う。一方、1番人気のリケアカプチーノは発馬直後の行き脚がつかず、一旦最後方まで下がった。しかし、「想定はしていた」という吉原寛人騎手の冷静な対処で、1周目の4コーナーを回るまでには「マークしたいと考えていた」ユウユウコラソンの直後3番手まで位置を上げた。
ブリスタイムが、10馬身以上後続を離す大逃げを打つ中、早々に戦端を開き2周目2コーナーで進出を開始したのは、「強気に、出し切る競馬をしようと思っていた」(吉原騎手)というリケアカプチーノ。外から並びかけられたユウユウコラソンが「思ったより早く相手が来て、自分も動かなければ」(佐々木騎手)とこれに抵抗すると、2頭併走のままブリスタイムをたちまち飲み込み、リードをとっていく。取り残された馬群の中からは、2番人気のサンロックンロールだけが抜け出して2頭を追い、他の馬たちには追随する力は残っていなかった。
ユウユウコラソンもよく抵抗した。しかし、手応えには歴然とした差があった。2周目3コーナーで単独先頭に立ったリケアカプチーノは直線でリードを広げた。圧倒的な力を誇示した王者のゴールを観衆が暖かい拍手で迎えると、引き上げて来た人馬は検量所の前を通り過ぎてスタンド方向に赴き、声援に応えた。
2着には、サンロックンロールが追い上げたが7馬身差。山本聡哉騎手は「前が止まったところをあわよくば、というレース。概ね狙い通りで、悪くない走りだった」と、前向きに振り返った。更に9馬身離れたものの、3着には勝ち馬に正面から挑んだユウユウコラソンが粘った。佐々木騎手は「リケアカプチーノと一騎打ちになって負けたら仕方がないから、積極的に乗れと調教師にも言われていた。厳しい展開だったが、コラソンなりに頑張ってくれた」と馬を労った。
リケアカプチーノを管理する菅原勲調教師は、2003年まで上山・県営新潟との間で持ち回りで行われていた時代に、騎手として当レースを8回制覇。調教師としても、4年前にリュウノシンゲンで制して以来2度目の優勝となった。レース後には、「騎手の時から“ダービー”は目標にしていたので、このレースを勝つのは嬉しい」と話し、メイセイオペラなど数多くの名馬を“ダービー”の栄冠に導いた師の勝利が東北優駿というレースの存在感を改めて印象づけた、今年の一戦となった。
取材・文坂田博昭
写真 佐藤到(いちかんぽ)
Comment

菅原勲調教師
大本命だったので、確実に勝ってくれてホッとしています。前回とほぼ同様の良い状態で今回まで来られました。スタートが良くなかったが、どこからでも行ける馬なので道中で挽回してくれると思っていました。力がここでは違った感じ。これから古馬に挑戦するには、もう少し力をつけないとと思います。







吉原寛人騎手
ホッとしています。先のレースのことも考えて、緩い競馬ではなく出し切る競馬をしたいと思っていました。勝負しに行きながら丁度流れの速いところを攻めて乗りましたが、よく辛抱してくれました。距離も苦にしないタイプで、バテない感じの馬。早く仕掛けても脚が上がらず、力を出し切れたと思います。