単騎逃げで後続を寄せ付けず
人気に応える完勝で二冠制覇
“逃げ切り”と簡単に評することができないナチュラルライズの見事な逃走劇だった。
ダート競走の体系整備により、ダート三冠の二冠目となって2年目の東京ダービーJpnI。
ナチュラルライズが単勝1.5倍で、クレーキングが3.9倍、カナルビーグル4.7倍、ナイトオブファイア11.1倍。以下はアメージングの55.5倍で人気は実績上位馬に集中していた。
好スタートを切ったスマイルマンボが一旦は先頭も、これに並びかけたナチュラルライズはスイッチが入ってしまったかのように折り合いを欠き、首を上げながら1コーナーを回った。そこからは制御不能になったかのように差を広げて単騎逃げ。「これは無茶だ」「もう無理だ」と周囲からは嘆くような声も上がっていたが、ラップを見れば12.4-11.5-12.3と前半は36秒2のミドルペースに近い逃げだった。しかも向正面ではペースが落ち、そこで息が入った。
ナチュラルライズが先頭のまま直線を迎えると後続が懸命に追いかける。がらりと入れかわってしまうのではないかと一瞬思ったのはまったくの杞憂で、ナチュラルライズは残り400メートルから11秒9のラップでペースアップ。羽田盃JpnI同様内にササりながらラチを頼って差を広げ、ライバルたちを寄せ付けなかった。
「内にササったら普通は伸びないけどナチュラルライズはそれでも伸びてくる。馬の能力でしょうね」と伊藤圭三調教師はうれしそうに口にした。
勝ちタイムは2分3秒8(不良)。2023年ミックファイアによる2分4秒8のレースレコードを1秒0更新する完勝で、羽田盃JpnIからのダート二冠制覇。
羽田盃JpnIでは、好位でなだめながら折り合いに専念し、直線あっという間に先頭に立って弾ける独壇場だったが、今回は逃げ切り勝ち。
「能力には疑う余地がないと思っていたので、馬のリズムを大事にしようと考え、たとえハナになったとしても問題ないと先生と話していました」とレース後に横山武史騎手が話した通り、“馬のリズム”に重きを置いた陣営にとっては想定内の展開だったのだ。
羽田盃JpnIで着用していたチークピースを今回はパシファイアに替えて、追い切りでも2度着用して効果を確認してからレースに臨んだ。パドックから返し馬に向かう際も、他の馬とはタイミングをずらして返し馬に入った。
「他馬と一緒の本馬場入場になると返し馬でテンションが上がってしまうのでそのための対策のひとつ」と伊藤調教師は話してくれた。
ナチュラルライズはこのあと休養に出され、秋に向けて英気を養う。秋の目標はジャパンダートクラシックJpnI。直行プランを考えているというが、三冠目も同じ大井2000メートルが舞台。三冠馬誕生も夢ではない。
2着は2番人気のクレーキング。中団から直線では脚を伸ばしたが2馬身半差届かなかった。
「ウェットな馬場でコーナーでグリップがきかなかった。手応えはあったし、ポジションもよかったが今日は前の馬が強かった」とクリストフ・ルメール騎手。
午前中から強く降った雨は第5レースの頃には小やみになったが、たっぷり水分を含んだ白い砂は不良馬場から回復しなかった。
地方最先着は大井のシーソーゲームでさらに2馬身半差の3着に健闘した。
「ペースを落としすぎず流しすぎず乗ってハマってくれた。馬場も合っていた」と御神本訓史騎手。直線ではナイトオブファイアと競るシーンもあったが、シーソーゲームが2馬身振り切った。
「今日はスムーズに行きすぎて、脚をためることができなかった」と4着ナイトオブファイアの矢野貴之騎手は悔しさを表し逆転を誓った。
取材・文中川明美
写真いちかんぽ(早川範雄、岡田友貴)
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伊藤圭三調教師
1800メートルから距離が延びて1コーナーまでの距離が長かったため、馬が走りたがって先頭に立ってしまいましたが、最後まで頑張ってくれました。2、3番手の競馬をイメージしていたのですが、ジョッキーが臨機応変に乗ってくれました。前走はパドックも返し馬も少し入れ込んでいる感じがありましたが、今日は落ち着いて大きくのびのび歩き、返し馬も落ち着いて走っていました。










横山武史騎手
馬のリズムを大事にしてこの馬の力をしっかり出し切ることだけを考えていました。難しい面のある馬で不安もあったのでこうして勝てて本当に良かった。新馬戦前の調教に乗った時から、間違いなく重賞は勝てるという手応えがありました。理想通りに成長してくれて馬には本当に頭が上がりません。