道悪巧者が圧巻の逃げ切り
26年ぶりにレコード更新
年に一度のビッグレースを楽しみに開門から多くのファンが訪れた浦和競馬場。しかし当日は雨が降ったり止んだりの悪天候で、第7・8レースは馬場コンディション調査のため取り止めとなった。その後はなんとか天気はもってくれたが、水の浮く超高速の不良馬場の中、メインレースを迎えた。
2024年からJpnIに格上げされ、上半期ダート短距離戦線の頂点を決める位置づけとなったさきたま杯。昨年は、GI/JpnI馬3頭によるハイレベルな決着で、大盛況だった。そして今年もフルゲート、好メンバーが揃った。
1番人気は、黒船賞JpnIII、かしわ記念JpnIを連勝し勢いに乗るシャマルで単勝2.1倍。2番人気は今年のフェブラリーステークスGI優勝馬コスタノヴァで3.1倍。3番人気はJRAのダート重賞で2勝をあげているエンペラーワケアで3.8倍。チカッパが9.4倍と続き、JRA勢に人気が集中した。
ただ、舞台はトリッキーな浦和コースということもあってか、地方馬の活躍が目立つレースでもある。プラチナカップの勝ち馬ティントレットや、重賞2勝馬ムエックス、地元生え抜きの1400メートル巧者アウストロなど、南関東の実績馬も顔を揃えた。
ゲートが開くと、コスタノヴァが大きく出遅れて最後方からとなった。内枠のシャマルが逃げようとするところに、アウストロが積極策で並びかけ、好スタートを切ったティントレットも11番枠から果敢に先行争いに加わった。それでもシャマルはハナを譲らず、向正面に入ってもこの3頭は雁行状態で進んだ。やや離れた4番手にムエックス、その外にチカッパ。エンペラーワケアはさらに離れた6番手を追走していた。
3コーナー手前で振り切りにかかったシャマルは直線に入ってもそのスピードは落ちることなく、あっという間に後続との差を広げ5馬身差でゴールイン。前走のかしわ記念JpnIと同じように、川須栄彦騎手は喜びを爆発させた。
接戦の2着争いは、直線馬群の中ほどから伸びたムエックスが制し、大外から豪快に追い込んだエンペラーワケアがアタマ差の3着に入った。出遅れたコスタノヴァは「小回りは合わなかった」(クリストフ・ルメール騎手)と11着に敗れた。
道悪の鬼の本領発揮とばかりに、その実力を見せつけたシャマル。これが重賞9勝目で、JpnI・2連勝(3勝目)を飾った。そして勝ちタイムの1分23秒2は、1999年セタノキングの1分23秒8を26年ぶりに更新するコースレコード。まさに独壇場だった。
レース後、何度も何度も相棒を愛撫しながら戻ってきた川須騎手。「絶対に負けられない戦いだと思っていました。シャマルのことを信じていましたし、ゴールの瞬間は感情が爆発しました」とインタビューで熱い気持ちを口にすると、場内からは多くの祝福の言葉が投げかけられ、“川須”コールも沸き起こった。
さきたま杯JpnIは4年連続の出走だったが、過去3年は、3着、競走中止、3着と結果が出なかった。松下武士調教師は「コース自体は合うと思っていたので、やっと勝てました。馬場が悪くなるのは良いと思っていましたし、行ききってくれたのが勝因ですね。レコードは獲りにいこうと言っていました」と満面の笑顔だった。この後は、休養に入るとのことで、秋のローテーションが気になるところだ。大目標は船橋のJBCスプリントJpnIになりそうだが、始動戦としてはマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIや、韓国遠征も選択肢にあるそうだ。下半期はどんな走りを見せてくれるのか、今から楽しみでならない。
2着のムエックスはダートグレード初挑戦ながらも実力を示した。「このメンバーでも通用するところを見せられて嬉しいですが、やはり2着は悔しいです。速い流れにも対応できましたし、距離適性もありますね」と張田昂騎手。JRAから船橋に移籍してから馬券圏外は1回のみと、7歳ながらまだ底を見せておらず、この後の活躍がますます期待できそうだ。
先行有利の馬場で大外から伸びてきたエンペラーワケアも見せ場十分だった。川田将雅騎手は「浦和のこの馬場では、この馬の良さは出ません。なにより無事に終わってくれて良かったです」とコメントした。
あいにくの天気ではあったが、浦和競馬場には約6800人のファンが足を運び、さきたま杯JpnIでは浦和競馬1レースあたりの売得金額レコードを更新した。シャマルの圧勝劇を含め、記憶にも記録にも残る一日となった。
取材・文秋田奈津子
写真いちかんぽ(早川範雄、宮原政典、NAR)
Comment

松下武士調教師
前走も良い状態でしたが、その状態をキープできていました。ゴールの瞬間は本当に嬉しかったです。これまで噛み合わなくて結果が出ていない時期がありましたが、若い時と状態自体に差はないと思います。この走りを見たら衰えは全然ないでしょうね。スタートが良く器用に競馬ができることが強みです。












川須栄彦騎手
このような馬場で時計もすごく速い決着が続いていましたし、いいスタートを切ってくれて最初のコーナーまでに主張することができて良かったです。シャマルと息を合わせることだけに集中してスパートのタイミングを窺っていました。どんな条件でもベストを尽くして走ってくれるところが一番の魅力です。