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第48回帝王賞JpnI

ハイペースを早め先頭から押し切る
  成長途上の4歳馬がジーワン初制覇

世界に誇るフォーエバーヤングこそ不在だったが、現在のダート中距離を象徴する各馬が参戦。特に昨年のジャパンダートクラシックJpnIでフォーエバーヤングに迫り、フェブラリーステークスGIでも3着に好走したミッキーファイトがビッグタイトルを手にできるか注目が集まった。

さらにJRAからは昨年のJBCクラシックJpnIの覇者ウィルソンテソーロ、東京ダービーJpnIを制したラムジェット、平安ステークスGIIIを勝って勢いに乗るアウトレンジ、この路線の安定株ノットゥルノが出走。古豪メイショウハリオが競走除外となったが、相変わらずの層の厚さで上位人気を形成した。

地方勢では川崎記念JpnIで2着に入って健在を示したディクテオン(大井)、ダートグレードで好走を続けるシンメデージー(高知)に期待が集まった。良馬場でも前残り気味で推移する大井コースを舞台に、13頭による頂上決戦のゲートが開いた。

最内枠からヒーローコール(浦和)が勢いよく先手を奪い、ミッキーファイトが2番手。これをマークするように他のJRA勢が直後につけ、地方の有力どころもこの一角。前半の3ハロンは35秒4とハイペースで進んだ。

3コーナーの手前でミッキーファイトが先頭に立ったのを合図とするように、各馬の鞍上の手が動く。ノットゥルノ、ウィルソンテソーロが4コーナーで並びかけ、3頭横並びで直線を迎えた。

しかし、ここからミッキーファイトが再加速。むしろ追ってきた2頭が苦しくなり、4番手で直線に向いたアウトレンジが外に持ち出すと、2頭に替わってミッキーファイトを追う。1完歩ずつ迫るアウトレンジだが、ミッキーファイトもしぶとい。手に汗を握る攻防は、クビ差でミッキーファイトに軍配。3度目の挑戦で初のGI/JpnIタイトルを獲得した。

殊勲の鞍上、クリストフ・ルメール騎手は「最後の直線は本来なら止まっておかしくなかったですが、能力で押し切ってくれました」と笑顔でパートナーを称えた。前残りの馬場ではあったが、ハイペースを強気に運んで押し切る好内容。「スーパースターホースに成長していく、その未来が見えた気がします」と、今後への大きな期待を口にした。

管理する田中博康調教師も「3コーナーから厳しい流れになったと見ていましたが、よく持ちこたえてくれました。経験を積んできたのが生きてきたと思いましたし、心身ともに充実してきた印象です」とパワーアップに目を細める。今後については「幅広く考えていますが、成長途上の段階。確実ではないですが、国内の大きなレースを目指していくことになるのでは」と話した。いずれはフォーエバーヤングとの再戦もあるはず。さらなる成長次第で肉薄、それ以上の結果も見えてくる。

2着のアウトレンジは3コーナーで少し進路が狭くなったが、メンバー最速の上がり時計をマークして勝ち馬に迫った。松山弘平騎手は開口一番、「悔しいです」と無念の表情。「脚もたまっていたし、勝ち馬の後ろにつけて、いい形で進められました。力強い走りだったと思います。ただただ、悔しいです」と話した。とはいえGI/JpnI初挑戦での結果なら高い能力を示した形。クビ差だけに悔しさも十分に推し量れるが、これだけの走りができれば今後もチャンスは巡ってくる。

地方勢ではディクテオンが0秒8差の4着に追い上げた。「ためが利かなかったし、前が止まらない馬場だったけど、よく追い込んでくれました」と矢野貴之騎手。JRA所属として臨んだ昨年(3着)に続く好走で、まだまだトップクラスで戦えることを証明した。パワー優先の馬場になれば、GI/JpnI制覇も夢ではない。

一方、高知のシンメデージーは直線で伸び切れず9着。吉原寛人騎手は「勝ちに行く競馬だったけど、最後は脚が上がってしまいました」と肩を落とした。ただ、大井コース以外の12戦は全て3着以内に好走しているだけに、小回りに替われば違うはず。今後の巻き返しに期待したい。

取材・文大貫師男

写真いちかんぽ(築田純、早川範雄)

Comment

C.ルメール騎手

力をしっかり発揮してくれて、ジーワンタイトルにふさわしい走りをしてくれました。スタートから落ち着いていて、向正面でも冷静さを保っていました。ペースを上げたあともスムーズな走りができていたと思います。身体がとてもパワフルで、後方からの競馬もこなせる点がストロングポイントです。

田中博康調教師

鞍上には、内枠なのでロスがないところで、かつ、包まれずに運んでほしい、この馬の能力が抜けていると思って乗ってほしいと伝えました。3コーナーから他馬が早めに来ましたし、直線も長いので、よく持ちこたえてくれたなと思います。2歳の頃と比べ、随分と落ち着いて調整できるようになっています。