2番手から直線突き放し完勝
転入後負けなしで重賞初制覇
一昨年、昨年と連覇したハクサンアマゾネス(金沢)が引退し、新たな女王誕生に期待が集まった一戦。優勝したのは単勝1.7倍の1番人気に支持されたヴィーリヤで、一見、順当な勝利だったが、直前のアクシデントを乗り越え、人との縁が繋いだ勝利だった。
夕方の突然の大雨で良馬場から一気に不良馬場へと変わった園田競馬場は、メインレースを迎える頃には通り雨も過ぎ、ナイター競馬特有の雰囲気に包まれた。
アンティキティラ(高知)は別府真司調教師によると左後肢の腫れのため出走取消。11頭立てで行われた。
好スタートから行く構えを見せたのはプリムロゼ。先手を取りきると高知の永森大智騎手は手綱を抑えたが、ペースはそこまで落ちたようには見えず、その外にヴィーリヤがつけた。序盤、ヴィーリヤは口を割りながら走っていたが、最後の直線に向くとプリムロゼから馬体を離して交わしにかかり、4馬身差で勝利を収めた。
兵庫転入後の6連勝はすべて1400メートルで逃げ切りだったが、初の1700メートルで2番手に控え、重賞初制覇を飾った。
「逃げにはこだわらず、折り合いだけを気を付ければ大丈夫かなと思っていました」と兵庫移籍後7戦すべてで手綱をとる杉浦健太騎手が話せば、田中一巧調教師も「この馬のリズムを崩してまで逃げなくてもいい、と騎手に伝えていました」とプランを明かした。
「ハミ受けがわがままで、ハマりが悪くて収めようとすると反抗するタイプ。見た目ほど掛かっているわけではありません」とも田中調教師は続け、序盤の口を割ったシーンはさほどの影響はなかった。
それよりも気になったのは状態。返し馬を終えるまで田中調教師はずっと見つめていたのだが、その理由は2日前の調教中にアクシデントでヴィーリヤが怪我をしていたからだった。「自分で乗って歩様を確認して、これなら問題ないと思い出走を決めました」と。この結果に誰よりも胸を撫で下ろしたことだろう。さらにこんな思いを続けた。
「今日、『先代に手を合わせてから来ていただけますか』と奥様にお願いしたんです。力を貸してもらえますように、と」
先代とは、ヴィーリヤをJRA時代に所有していた菊池五郎オーナーのことで、兵庫移籍後も所有する予定だったが移籍と前後して逝去し、靖二オーナーが継いだ。
「菊池五郎オーナーにはキクノグロウをはじめ開業の頃からとてもお世話になりました」
そうした思いがあり、先頭でゴールした瞬間は涙が溢れそうになったようだが、グッと堪えた。そして、表彰式を終えた頃、地元記者たちがざわつき始めた。
「あれ、昔騎手をしていた上村勇人じゃない?」
そう、ヴィーリヤの生産者は、2008年から11年まで兵庫で騎手をしていた人物だったのだ。2年後輩にあたる杉浦騎手は「こんな強い馬に出会えて幸せです」と笑顔が弾けた。「1700メートルを克服してくれて、レースの幅が広がって楽しみが増えました」
今後についてはレース後の状態を見ながらオーナーと相談するとのこと。元々は早めに夏休みに入る予定が、切り替えて出走を決めた一戦で重賞制覇を果たしたヴィーリヤ。今後の走りに期待が寄せられる。
取材・文大恵陽子
写真桂伸也(いちかんぽ)
Comment

田中一巧調教師
前走はかなり競りかけられても最後は追わずに勝って、強さが本物になってきたと感じていました。これまで追われたことがなく、追ってどうかと思っていましたが、直線半ばで勝利を確信しました。遠征するには経験を積まないといけないと思っていました。レース後の歩様も問題ありません。








杉浦健太騎手
初めての距離で戸惑っていた部分もありましたが、それを考慮してもしっかり走ってくれました。スタンド前で折り合い、この馬のペースでいけば大丈夫と自信を持って乗りました。2着プリムロゼにも乗ったことがあり、逃げたらしぶといイメージなので、早めに勝負をしにいきました。