好時計で逃げ切り重賞初制覇
未完の大器が三冠目へ挑む
3歳ダート三冠のラスト、ジャパンダートクラシックJpnIに向けての前哨戦として、昨年からダートグレード競走に格上げされた不来方賞JpnII。タイトルとしての価値だけでなく、1着馬に与えられる大舞台への優先出走権を賭けて、JRAから5頭、地方勢は地元岩手から7頭の計12頭が集い、覇を競った。
遠征してきたJRAの各陣営からは、「3歳限定で重賞勝利のチャンスはあるし、勝てば大舞台に出られる」(ハグを管理する藤岡健一調教師)という、勝利への高い意欲が感じられた。また、例えばルヴァンユニベールは、2月までに2勝しながら京浜盃JpnIIには出走できず、春の大舞台への挑戦を断念。残る秋一冠に賭けていた。北出成人調教師の「春の前哨戦への出走は叶わなかったが、レパードステークス2着でオープンクラスの賞金になってしまったこともあり、先々に向け賞金を加算させたかった」との戦前の談話には、意欲だけでなく3歳ダート路線を行く馬の路線選定の難しさも窺われた。
この日は東北地方に前線が横たわり、丁度雨雲の縁に当たった盛岡では、午前から断続的な降雨に見舞われた。第6レースの前後ではおよそ30分ほど強い雨が降り、ダートコースの馬場状態は稍重から第7レースで一気に不良へと変化。その頃到着したJRAの調教師の中には、前走レパードステークスGIIIでの敗因のひとつに道悪が掲げられたロードラビリンスの松下武士調教師のように、心配そうにレースと馬場の様子を見つめる姿も見られた。
スタート後の正面直線、JRA所属の4頭が馬群から抜け出すが、先を争う様子はない。結局、外からナルカミが先頭に立った。これは馬のリズムを最優先するという陣営のこの日のテーマに沿った立ち回りだったようだ。番手にルヴァンユニベールとハグが併走、その直後にメイショウズイウンの順で並びが決まると、そこからは淀みなくレースが進み、手元の計時で1000メートル通過が1分そこそこ。その後残り800メートルを過ぎた先の3コーナーで一旦ペースが落ちたものの、すぐ再加速するという緩急のついた味なレース振りを見せたナルカミが、最後まで後続を寄せ付けることなく逃げ切り勝ちを収めた。勝ちタイムの2分1秒2は、2014年JBCクラシックJpnIでコパノリッキーが出したコースレコードにコンマ4秒と迫る、速い時計だった。
ライバル達は、まさになすすべなし。終始前を固めたJRA勢の5頭は、道中3番手のルヴァンユニベールが2つ位置を下げた以外はそのまま流れ込み、勝ち馬から2馬身半差の2着にハグ、更に2馬身半差の3着に「したいレースは出来た。ただもう少し乾いた馬場の方が良かった」(武豊騎手)というメイショウズイウンが入った。
地元岩手のリケアカプチーノは6着。上位5着までを占めたJRA勢から2馬身半の差で、7着は大差離れたことからすると、JRA勢と近しい力量は発揮したと言っていい。吉原寛人騎手は「雨で軽い馬場になった分、JRAの馬に上がりで速い脚を使われてしまった」と敗因を分析。「(転入初戦の当地戦で見せた)外に張る面を出さず乗りやすくなっていたし、しっかり力をつけていると感じ取れた」と、今後に向けての期待感を示した。
ナルカミの田中博康調教師からは、戦後改めてジャパンダートクラシックJpnIへの出走意思が表明された。同馬もまた、春二冠には間に合わなかった。ナチュラルライズの三冠達成が注目される中、秋に向け力を蓄えてきた新勢力の動向からも、目が離せない。
取材・文坂田博昭
写真佐藤到(いちかんぽ)
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田中博康調教師
スタミナがあり、ストライドが最後まで落ちることなく力を発揮して馬が頑張ってくれました。体のバランスや線の細さ、気性面と課題がある中でのこれだけのパフォーマンスに伸びしろを感じます。レモンポップに続いていけるよう、同じ勝負服で戸崎さんで、馬と一緒に厩舎としても頑張って行きたいです。






戸崎圭太騎手
勝たないと次の大舞台に立てなかったので、プレッシャーを感じていました。勝ててホッとしています。揉まれたことはないので、そこだけがまだどうかなと思いますが、今日は(課題と思われていた)左回りと、距離も問題ありませんでした。速度も力もあり、雄大なフットワークで走るのが良いところです。