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ヤングジョッキーズシリーズTR 盛岡

2レースとも断然人気馬が敗れる
  5着・1着の山本騎手が首位に立つ

盛岡競馬場スタンド4階からは岩手山が見える。この日の山頂は厚い雲に覆われていたが、岩手地方気象台は初冠雪を観測したと発表した。東北地方では冬がすぐそこまで近づいてきている。冬眠に備えて餌を求める熊の出没情報も市街地で後を絶たない。騎手紹介式が行われる午後3時過ぎ、盛岡市内の気温は10度だが、山間部にある競馬場はさらに数度、低かった。控室から出てきたジョッキーたちは異口同音に「寒いっ」と口にし、これが2度目の盛岡遠征の石田拓郎騎手(JRA)は「東北を甘く見ていました」と、勝負服の下は半袖のアンダーシャツ1枚。一方で及川烈騎手(浦和)はフェイスマスクを持参して防寒対策を行っていた。

第1戦は2年前に同舞台の重賞・ハヤテスプリントを制覇したスタードラマーが単勝1.3倍の抜けた1番人気。最終的には2~3番人気も7倍台まで下がったが、パドック周回中はスタードラマーが1.1倍で2番人気以下は10倍以上だった。ところが、その断然人気馬を最後方から差し切って勝ったのはコスモコロネットと石田騎手。「ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)初勝利なので、嬉しいです」とデビュー3年目の石田騎手は喜んだ。

スタードラマーは2着。これまでに騎乗した騎手の話や、近走で850メートルを走った馬もいるメンバー構成などから石神深道騎手(JRA)は「前の馬が厳しい展開になると思って、レースを組み立てました」と、中団に控えることはプラン通りだった。ところが、誤算は直線入口。「後ろの馬が来ることを予測できていれば。(勝ち馬が)内を選ぶとは思いませんでした」と反省した。この日のダートは途中から稍重に変わって水分を含んでおり、地元の騎手たちも内ラチ沿いを空けて走っていた。第1戦も前半はそうだったが、4コーナーから直線にかけて、各馬の進路取りが内外マチマチで、それが結果的に明暗を分けた。

3着は「また身長が伸びました」と170センチ超えの所蛍騎手(船橋)が3~4コーナーで進路を外に切り替えて伸び、4着に若杉朝飛騎手(北海道)、5着は4コーナーで前が壁になったため「外を通るよりは」と最内を選択した山本大翔騎手(船橋)だった。

第2戦も単勝1.2倍の人気馬がいる構成。その馬に地元の坂井瑛音騎手が騎乗するとなれば盤石かと思われたが、ここでも1番人気は2着で、勝ったのは直線で外から脚を伸ばしたラージフィールドと山本騎手だった。「1戦目で内を走って思った以上に伸びなくて、他のレースを見てもその傾向だったので、外に出して馬場の軽い所を走らせたいと思っていました」と思惑通りに運ぶことができた。

一方で、断然人気で敗れた坂井騎手は「これで負けたら引退だって岩手の騎手みんなから言われていたんです……」と意気消沈。引退は冗談としても、地元の意地を見せてこいという期待もかけられていたのだろう。4コーナーでは大外に進路を取ったが、その一つ内にいたのが勝った山本騎手。「あそこに行こうと思えば入れたので、判断の差ですね」と、ここでも馬場読みが結果を分けた。

3着佐藤翔馬騎手(JRA)はここまで6戦して3着3回、5着1回と勝てぬものの高ポイントを獲得。55ポイントとし、JRA東日本暫定3位をキープして2年連続のファイナル進出に向けて着実にポイント加算をした。

4着に2023年YJSファイナルラウンド優勝の横山琉人騎手(JRA)で、騎乗したマカベウスは20年平和賞の勝ち馬だったが「4コーナーで勝つかなと思いましたが、自分で止めるような走りでした」と伸びを欠いた。5着は高橋優騎手(大井)で4コーナーで内をすくって一旦は先頭に立ったが、その胸中は「内を通りたくなかったですが、手応えが良かったのでブレーキを踏むよりは」というものだった。

盛岡ラウンドを終えて、2勝目を挙げた山本騎手が76ポイントで地方東日本暫定1位に躍り出た。また、坂井騎手は「1番人気に支持してもらったのに、ファンに申し訳ないです」と何度も謝っていたが、2着20ポイント加算で暫定4位。

JRA東日本は前述の佐藤騎手のほか、横山騎手は引き続きトップを維持。この2人の間に第1戦を勝った石田騎手が割って入り、66ポイントで横山騎手に並んだ(合計得点が同じ場合は、騎乗した全ての競走を対象に、上位の着順を得た回数の多い順に順位を決定)。

次回の東日本地区トライアルラウンドは中1日で10月23日大井競馬場。残すは2ラウンドで、ここからの転戦組もいてそれぞれに気を引き締めていた。


取材・文大恵陽子

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 石田拓郎騎手(JRA)

序盤はあまり進みませんでしたが、「しまいに脚を使えればいいよ」と聞いていました。手応えがあって勢いよく回ってこられて、スペースがあったのですぐにスッと抜け出せました。一つ勝てればファイナル進出の可能性が高まると思っていたので、勝てて嬉しいです。

第2戦1着 山本大翔騎手(船橋)

道中は思ったよりも進まずに中団からとなりましたが、コーナーでは内で脚を溜めて、直線で上手く馬場の軽い外に出すことができ、伸びてくれました。盛岡での騎乗は今日が初めてでしたが、地元・船橋と似ている印象です。内の砂が深く、そこを考えながら乗りました。