高知のタフな良馬場も大歓迎
夢膨らむ兵庫所属馬の完勝劇
内ラチ沿いの砂厚は約14センチ。高知競馬場のダートコースは、日本で最も砂が深いと言われる。特にタフな良馬場は波乱に繋がりやすい“魔境”。実際、数多の遠征馬が“初高知の壁”に跳ね返されてきた。
ところがオディロンとコンビを組む兵庫の名手・吉村智洋騎手はきっぱり言った。
「馬場の深さを苦にする馬ではないと思います」
12月31日、高知競馬場。1着賞金2000万円のグランプリ・高知県知事賞は、今回から近畿・四国・九州地区の交流戦に生まれ変わった。開かれた門扉をくぐって高知へやって来た唯一の遠征馬は、兵庫のオディロン。元々JRAのオープン馬で、兵庫へ移籍後に重賞を2勝。前走の園田金盃で無敗の三冠馬・オケマルを力強く差し切ったインパクトは絶大で、単勝1.6倍の1番人気に推された。
2着惜敗が続いているステイヤー・エクセレントタイムが2番人気、大晦日に全国リーディングを決めた打越勇児厩舎のウインヴェルデが3番人気に推された。
例年を上回る3300人強の観客が見守るなか、高知県知事賞のゲートが開いた。砂けむり舞う良馬場を駆ける12頭、タマモマスラオとダノンジャスティスが並走してペースを握る。ウインヴェルデは4番手を確保し、オディロンはスタートで立ち遅れるも滑らかに上昇して5番手を追走、エクセレントタイムはその内の6番手でレースを進める。
2周目の向正面でオディロンがするするとポジションを上げ、馬なりで4コーナー先頭。直線で後続を突き放した。
「今年のグランプリホースは、兵庫のオディロンです!」(橋口浩二アナウンサー)
絶妙な位置取りで運んだウインヴェルデが5馬身差の2着、エクセレントタイムが懸命に脚を伸ばして半馬身差の3着に入った。
吉村騎手はこう振り返る。
「ゲート内でごそごそしていたので、多少の出遅れは覚悟していました。道中は折り合いもついてリラックスして走っていましたし、直線で抜け出したあとはフワッと遊んでしまうほど余裕がありました。極端なスローペースになって囲まれたりしない限りは勝てるだろうという自信がありました。それくらいこの馬のことを信頼しているので、今日はプレッシャーもなかったです」
森澤友貴調教師は言う。
「寂しがり屋なところがありますが、競馬になるとキリッと前向きさを見せるプロフェッショナルで、オンとオフをしっかり切り替えられる馬です。ジョッキーも言うように、折り合いにまったく問題がなくてコントロールがつきやすく、仕掛けるとすごくいい反応をしてくれて、長くいい脚を使ってくれます。今日のパフォーマンスを見ると、グレードレースにも挑戦したくなりますね」
なお、森澤調教師も吉村騎手も「できれば雨は降らないでほしい、良馬場がいい」と願っていたそう。高知のタフな良馬場をクリアできるかどうかを不安視していた筆者の目は、完全に節穴だった。
高知フリークにとっては悔しい結果であったが、実は……森澤調教師はにっこり笑って言った。
「私の両親が高知県出身というご縁もあって、遠征の機会をうかがっていました。なかなかその機会がなく、開業から20年経って、ようやく今回が初めての高知遠征なんですよ」
兵庫リーディングに9度も輝いた父の森澤憲一郎元調教師も、臨場してオディロンに声援を送ったという。高知・兵庫の交流の深化を象徴するような親孝行。悔しさがほろりほどけて、また1頭応援したい馬が増えた大晦日だった。
※レース後に妹尾将充元騎手が聴き取り、書き起こした騎手のコメントはこちら。
取材・文井上オークス
写真桂伸也(いちかんぽ)
Comment

森澤友貴調教師
前走の園田金盃が激しいレースだったため疲労が大きかったのですが、歴戦のたくましさで回復し、理想的な調整で臨むことができました。今回は輸送もあり体重が減ったので、少し間隔を空ける予定です。馬の状態を見ながら、佐賀記念、船橋のダイオライト記念、姫路の白鷺賞を選択肢として考えています。







吉村智洋騎手
格式の高い高知県知事賞を勝てたらいいなと思って、大晦日にはるばる来たのでよかったです。オディロンは操縦性が抜群。いま力をつけていて、充実期に入っているのではないでしょうか。厩舎のケアの賜物で、脚元の状態も安定してきているそうです。グレードを獲るチャンスが来るかもしれないですね。