中団からスパート決めDG初制覇
22年ぶり地方他地区勢に栄冠
かつて兵庫の実況を担当した吉田勝彦アナウンサーが、JRAや他地区との交流レースの際に「兵庫県の馬」というフレーズをよく盛り込んでいた。もちろん単純な所属紹介といえばそれまでだが、吉田アナウンサーだけに「我々の」という兵庫所属馬に対する思い、そして長年アラブのメッカとして、もうひとつの頂点だった兵庫県競馬のプライドを感じずにはいられなかった。
その兵庫のオディロンが、南関東伝統の長距離重賞を制覇。他地区勢の勝利は2004年のミツアキタービン(笠松)以来で、交流化されて31回の歴史に初めて『兵庫』の文字が記された。
道中は中団の6、7番手を追走。JRA勢や3連覇を目指すセラフィックコール(川崎)、2023年の覇者グロリアムンディ(船橋)あたりを見ながら、仕掛けのタイミングをうかがう。2周目の3コーナーで仕掛けると勢いよく前を捉えにかかり、直線の入口で3番手まで浮上。先に抜け出したセラフィックコールを目掛けて、吉村智洋騎手のステッキがうなりを上げた。そしてゴール手前で半馬身抜け出すと、そのままフィニッシュ。7番人気の評価を覆し、重賞3連勝で初のダートグレードタイトルを手にした。
吉村騎手にとっても、これが初のダートグレード制覇。「素直にうれしいですね。馬に感謝を伝えたいです」と晴れやかな表情で話した。最後の直線で少しふらつきながら走るオディロンを、左へ右へステッキを持ち替えながら修正。それでいて、しっかりと前進させる“兵庫の剛腕”の真骨頂がここにあった。「兵庫の最強馬として戦いに来て、しっかり結果が出たことによって、『兵庫の馬も強いんだぞ』というところを見せられました」。南関東で活躍を見せた兵庫勢といえば、近年ではやはりイグナイター(JBCスプリントJpnIなど)になるのだが、それとはまた少し違う、長距離で見せる力強さ。いずれにしても兵庫のプライドが、再び南関東のダートに熱を響かせた。
管理する森澤友貴調教師もダートグレードタイトルは初。当初は佐賀記念JpnIIIに向かう予定だったが、後肢に疲れを見せたため回避し、ここへ矛先を向けた。「間に合うかどうかと思っていましたが、最終的には一番のデキ。12キロのプラス体重も調教を積みながらの結果なので、気にはならなかったですね」と懸命な調整が実を結んだ。今後はオーナーサイドとの相談次第としたが、「川崎記念や名古屋グランプリあたりが視野に入ってくると思います」とのこと。地方通算1851勝を挙げた父の憲一郎調教師(引退)から受け継ぐ兵庫の誇りを胸に、オディロンとともに全国へと飛躍する。
一方、悔しさをにじませたのはセラフィックコールの吉原寛人騎手。「展開は良かったのですが、外に出すために少し仕掛けたらハミを噛んで、結果的に仕掛けが早くなった感じでした。スタート(での出遅れ)も内コースを気にしていた感じで……」と話した。3連覇こそならなかったが、転入初戦での結果だけにこれから上昇カーブを描くはず。「力は抜けていると思うので、次走でまた改めて」と前を向いた。
1番人気に推されたナルカミ(JRA)は5着。2周目3コーナーで先頭に立ったが、最後の直線で伸びきれなかった。「雰囲気は良かったし、自分の形に持っていけたのですが……。少し距離が長い感じもあります」と戸崎圭太騎手。昨秋のジャパンダートクラシックJpnI以来、勝利から遠ざかっているが、4歳馬だけにまだまだ伸びしろはあるはず。ベストの距離で、また存在感を示すに違いない。
取材・文大貫師男
写真宮原政典(いちかんぽ)
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森澤友貴調教師
長くいい脚を使うタイプで、ジョッキーがベストなタイミングで仕掛けてくれました。どこまで通用するか分からなかったですが、このメンバーで、このレースができるとは……。夢が広がる一戦になりましたし、今後は胸を張ってダートグレードを使っていきたいと思います。






吉村智洋騎手
2周目の向正面で有力馬が動いていったので、いい眺めになりましたし、4コーナーでは、差し切れるなと、感じる手応えでした。ダートグレードはなかなか勝てるものではないですし、勝とうと思って狙っても勝てるものでもないですからね。またもうひとつ上を目指して頑張っていければと思います。