スタート後手も直線一気に差し切る
ダートグレード3勝目で牝馬の主役に
エンプレス杯JpnIIは上半期の古馬女王決定戦ともいえるダートグレード競走。地方馬にとってはグランダム・ジャパン(GDJ)古馬春シーズンの最終戦でもある。
副題には“キヨフジ記念”と付くが、川崎でデビューしたキヨフジは中央に移籍し、1951(昭和26)年の優駿牝馬(オークス)を制して地方競馬出身で初めて中央のクラシックホースとなった馬。第1回から37回まで『キヨフジ記念』として実施されていた。
第72回の今年は8頭立てと少頭数にはなったが、現在の牝馬ダート路線を牽引する一線級の実力馬、実績馬が顔を揃えた。
好ダッシュを決めたレイナデアルシーラが掛かり気味に飛ばす。スタンド前では田口貫太騎手がなんとかなだめ、2番手にアピーリングルック、マーブルマウンテンと続き、昨年の覇者で1番人気に推されていたテンカジョウは外の3番手までポジションを上げてきた。スタートで後手を踏んだメモリアカフェは後方からの追走となった。
テンカジョウが3コーナー過ぎで前をとらえにかかって直線を迎えると、メモリアカフェは直線入口でもまだ差のある5番手。しかしクリストフ・ルメール騎手がノーステッキのまま追ってくると、先頭に立っていたテンカジョウを外から鮮やかに差し切り、1馬身差をつけてゴールとなった。
メモリアカフェは兵庫女王盃JpnIIIから連勝。川崎2100mでは関東オークスJpnII以来の勝利で、ダートグレード3勝目とした。
表彰式で“調教助手”の台に上がったのは、4月30日付で騎手を引退したばかりの石神深一調教助手。現役時代はオジュウチョウサンとのコンビで障害のJ-GI競走を数多く制するなど活躍した。柄崎将寿調教師とは競馬学校の同期生で、初めてタッグで制したタイトルとなった。
「終いが切れる馬なのでゆっくりでいいと思っていたし、ルメール騎手がこの馬の末脚を信じて乗ってくれているんだと思って見ていました。あれだけじっとできるのはさすが一流ジョッキーですね。メモリアカフェは付きっきりで調教を付けてきた我が子のような存在。繊細な女の子なのでその日の機嫌を察知するようにして精神面を重要視しながら負荷をかけています。その積み重ねがこうしてパワーアップにつながると本当にうれしい」と石神助手が日々注いだ努力が実った。
単勝1.8倍に支持されていたテンカジョウは2着。「スタートが良くて流れに乗って道中のリズムも良かった。上がっていきたいタイミングで動けて、追い出しを我慢する余裕もあったくらい。直線も手前を替えてくれているのですが、勝ち馬が思った以上にすごい脚。強かったです」と話した松山弘平騎手は、悔しさよりメモリアカフェの強さを讃え、脱帽していた。
メモリアカフェの柄崎調教師は、「今後についてはいくつかの選択肢があり、まずはひと息入れて疲れを癒やしてから決めるつもり。そのまま夏を休ませて秋に備えるのか、短期放牧にして夏のレースを使うか。スパーキングレディーカップも視野には入っています」と話した。
実績牝馬たちをごぼう抜きにした4歳馬が牝馬ダート路線の主役に躍り出た。
なおGDJ古馬春シーズンは、このレースでは7着だったものの、クイーン賞JpnII・2着、若草賞土古記念を制したマーブルマウンテン(大井)が優勝。2位はサノノエスポ(高知)、3位はキミノハート(兵庫)となった。
取材・文中川明美
写真築田純(いちかんぽ)
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柄崎将寿調教師
思ったより後ろからの競馬で、終始ドキドキしていました。この馬の強みは操作性の良さで、どこの位置からでも競馬ができるところ。2100メートルは長いと思いますが、関東オークス、エンプレス杯と勝って、距離をこなしてくれましたし、1600メートルも守備範囲。レースに合った走りができます。













C.ルメール騎手
前走ですごく良い競馬をしてくれたので勝つ自信がありました。前半は進んでいかず良いポジションを取れませんでしたが、今日は長い距離なので心配していませんでした。直線でいつも通りの脚を使えると思いました。ムチも入れず楽勝。だんだん強くなっていくのでジーワンレベルを期待しています。