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ヤングジョッキーズシリーズTR 門別

貫禄の逃げ切り佐野騎手
  長浜騎手は技ありの1勝

ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)は、今年も夏の門別から幕を開けた。トライアルラウンド門別の2戦に、東日本地区から地方競馬8名、JRA5名の若手騎手が集い、覇を競った。

昨年、地方競馬所属騎手のYJS出場資格が変更され、4月の時点でデビュー2年目の騎手には、今年から出場資格が与えられる。そのうちの一人、地元北海道所属の渡邊準己騎手は、厩務員から試験に合格して騎手に転じた、今年の秋に29歳となる“オールドルーキー”。彼はシリーズへの意気込みとして「若い人達に感じる気迫とか気合いに、負けないようにしたい」と、まずは率直な心持ちを語る一方で、「勝ちたい気持ちがみんな強いと思うので、その中で年齢なりの『落ち着き』を出していきたい」とも話した。

実際、今回の出場騎手の年齢を見ても、地方競馬においては概ね20歳前後から20代中盤まで幅広く、渡邊騎手のように騎手経験は短くても人生経験はより重ねた人も現れるようになった。各々異なる背景がある中で彼らが見せるプレーは、“若さ”からイメージするようなただただがむしゃらな面であったり、勢いに任せたプレーばかりではないのかも知れない。騎手紹介式で指名された渡邊騎手は、「まずは人馬無事にゴールすることを目標に頑張って行く」と挨拶した。過去にはレースの中で大きな事故も起きたYJSではあるが、参加騎手の多様化も相俟って、騎手達の意識がかつてに比べ高まっていることも窺われた。

第1戦はワンターンの1200メートル戦。明確な逃げ先行馬不在の組み合わせとなり、戦前から展開面が注目された。

ゲートが開き「みんな顔色を窺い、迷いながら行くのか行かないのかという感じ」(渡邊騎手)の牽制状態から、腹をくくってハナに立ったのは佐野遥久騎手(川崎)だった。「番手の馬が良い感じで抑えてくれたので、誰も来ずラッキーと思っていた」という逃げは、前半3ハロン36秒0というスローでもなく速すぎることもない絶妙のペース。最後2着まで追い上げた3番人気の石神深道騎手(JRA)が戦後「前が残りそうな逃げで上手かった」と話し、4コーナーで内をすくって早めに追い上げ3着に食い込んだ11番人気の遠藤汰月騎手(JRA)も「最後は脚が上がってしまった」と振り返ったように、後続が文字通り手が出せない佐野騎手の完璧な逃げ切りが決まった。馬に関しては戦歴や時計で大きな差のない組み合わせだったが、最終的に1番人気は佐野騎手。馬だけでなく、今回の出場騎手の中では随一の実績を持つ彼への期待感の表れとも感じられ、またそれに応えた彼の判断と運びも見事だった。

第2戦は馬場を1周する1700メートル戦。こちらは、逃げ先行で結果を出している有力馬に騎乗する2番人気の長浜鴻緒騎手(JRA)と3番人気の藤田凌駕騎手(北海道)による先行争いが予想される組み合わせ。

スタート後飛び出した両者が、その予想通り競り合いながら最初の2コーナーまで併走の形で進み、淀みのないペースとなった。しかし、内側にいて「このままだと気が入りすぎてもたないと思った」と長浜騎手が、向正面で一旦番手に下がってから相手の外にスイッチ。押し出されるようにレース中盤から先頭に立つこととなった藤田騎手が「うまいこと切り返され、してやられた」と振り返ったこのプレーでレースの様相は一変した。

互いに余力を残したまま直線に向いた両者の攻防は、直線半ばで先頭に躍り出た長浜騎手が最後2馬身半の差をつけて勝利。藤田騎手も、6番人気の水沼元輝騎手(JRA)に3/4馬身まで迫られながらも2着は守った。

一方、1番人気の舟山瑠泉騎手(JRA)は、道中5番手から差を詰めたものの、及ばず4着に終わった。舟山騎手自身戦後に「もうちょっとやり合ってハイペースになってくれるかなと思ったが、そうはうまくいかなかった」と振り返ったように、大方のファンも含め戦前の予想が覆される展開と結果だった。それを演出したのが、他ならぬ長浜騎手の向正面での好判断と好プレー。彼がデビューした2年前、ここ門別のYJSトライアルラウンドで1勝を挙げたときにはシンプルな逃げ切り勝ちだったが、今回の勝利は以後の大きな成長を感じさせた。

長浜騎手は勝利の後、「YJSはファンの方や関係者からの注目度も上がるので、良いアピールになればと思っている」と話した。今回の2戦に見られるように、参加騎手の騎乗振りはいわゆる馬乗りの技術だけでなく、駆け引きにおいても格段に進歩しており、冒頭に述べた意識の面も含めてYJSが『若くて未熟な騎手達のレース』から『将来のスターを目指し技を競うシリーズ』へと進化し、大いに注目に値するレースになったと今回強く感じた。このあと西日本地区でも9月15日に金沢で幕を開け、東日本地区では9月29日の船橋へと続いていくYJSでの若手騎手達の戦いに、多くの耳目が集まり興味が広がっていくことを、願ってやまない。


取材・文坂田博昭

写真早川範雄(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 佐野遥久騎手(川崎)

ハナに拘りはありませんでした。みんな行かなかったので、行かせていただきます、という感じです。直線はとにかく長かったですね。昨年、ファイナルラウンド中京で勝てず、結果総合優勝も出来なかったので、今年はリベンジマッチ。まず本戦に行けるように、ひとつひとつ丁寧に乗っていきたいと思います。

第2戦1着 長浜鴻緒騎手(JRA)

操縦性が良い馬だったので、一旦下げて番手につけたのですが、それがうまくいきました。人気の馬(の追い上げ)が怖かったのですが、僕の馬もタレている感じはなかったので、振り切ってくれと思いながら乗っていました。馬を信じて積極的に騎乗して結果が出たので、これを続けていこうと思います。