小眼球症という病気で生まれつき左目の見えないサラブレッド、福ちゃんことドコフクカゼ(川崎・長友豊厩舎)。オーナーである(株)ワークシフトの代表・治郎丸敬之さんのSNSなどを通じ、デビュー前から『片目のサラブレッド・福ちゃん』として全国的に注目を集めていました。
7月31日の川崎競馬場でデビュー戦を迎えました。誕生した時から見守ってきた多くのファンが集合。オレンジ色の応援タオルを手に駆けつけ、熱気と興奮に包まれていました。新原周馬騎手を背に、最初は砂を嫌がり後方から進めましたが、向正面で進出していくと、最後は4着に力走。
長友調教師は「無事に競走馬になって、競馬を走り切ることができたのでホッとしました。福ちゃんは生まれた時から左目が見えないことが普通の環境で育ってきているので、(日常は)他の馬と変わらないです。育成ではエクワインレーシングさんが丁寧に乗り込んでくれて、小向に来てからは志村(直裕)厩務員が根気強く教えてくれました」とコメント。
普段の福ちゃんは「学習能力が高く、優等生。カイバも残さないですね。才能はあると思います」と期待を寄せていました。
そして、8月19日の川崎2Rで2戦目を迎えました。単勝1.4倍の圧倒的な支持を集めた福ちゃんは、再び新原騎手を背に後方から進出。最後の直線では外から一気に突き抜け6馬身差をつけて圧勝しました。
「砂を完全に克服したわけではないですが、こんなに我慢をしてついていけるとは思わなかったので驚きました。想像以上の成長を感じます」と、パートナーのがんばりを称えていた新原騎手。
治郎丸さんも愛馬の初勝利に「冷静にしていようと思いましたが、こみ上げてくるものがありました。生まれてきてから2年半、ようやく娘を社会に送り出したような気持ち。たくさんの人たちに応援してもらって喜んでもらい、競馬冥利に尽きます」と笑顔を見せました。
今後については「福ちゃんのお母さんは3歳夏ぐらいから血統の良さが出てきたタイプなので、福ちゃんも来年ぐらいに競走馬として完成するのかなと思っています。無理はさせずに福ちゃんファーストでレース選択をしていきたいです。ゆくゆくは大きなレースを使って勝ちたいです。夢ですね」と語りました。
左目が見えないというハンデを乗り越えて、競走馬として確かな一歩を踏み出した福ちゃん。優しい人たちと出会い、多くの愛に包まれてきたこの物語が、さらにどのような未来を紡いでいくのか、静かに見守らせていただきたいです。



高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。現在は南関東競馬を中心に取材活動中。
<掲載媒体>
・南関東競馬(南関魂)
・大井競馬
・WEBハロン
・サンケイスポーツ
・馬事通信
・東京馬主ニュース
・川崎競馬馬主協会ニュースなど