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2026ワールドオールスタージョッキーズ


クローズアップ

2026年8月22日・23日 JRA札幌競馬場

吉村騎手は3度目の出場
 横山典弘騎手が3度目の優勝

ほろ苦い思い出が残る北海道に2年ぶりに戻ってきた。地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ(JCS)で逆転優勝を果たし、地方代表としてワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)に出場となった吉村智洋騎手(兵庫)。2019、24年に続き3回目の出場となった。

2回目の出場だった一昨年は、JRA初勝利を挙げた後に加え、同年3月に子息・誠之助騎手がJRAデビューを果たしたことで、JRAのレースに対する解像度がグンと上がっていた。ところが、1日目は2戦とも2桁着順で、合計ポイント2点。10年以上取材してきて、初めて見るほど覇気が消えた表情だった。

今回はというと、「もう3回目なんでね」と、いい意味で肩の力が抜けた状態。それでいて、「そろそろ優勝しないと、息子にも格好がつきません」と冗談交じりに優勝への情熱を見せた。

存在感を示せなかった初日

1日目は第1戦からB評価の馬に騎乗。2~3番手から運んで2勝を挙げたウチュウノセカイで、現級に昇級後の2戦はいずれも逃げていた。この日は内の3枠3番。スタート一歩目こそ躓き気味だったが、大きな影響なく好ダッシュをつけると、ハナを切った。大きく競りかけられることなく4コーナーに差しかかったが、そこで手応えが怪しくなり、後続に飲み込まれて13着。この週から芝コースはBコースに替わり、内ラチが外側に移動されたが、「芝の感じからは外の方が伸びそうでした」と吉村騎手。馬場傾向を含めて追い風は吹かなかった。

勝ったのはアスミルと武豊騎手。「ここは、と思っていました」と笑顔が弾けた。

第2戦はC評価のタイキラフター。2走前には馬群の外から伸びて3着に入っていた。陣営からの指示は「勝負所で外に出して動いてほしい」というもの。レースではその通り3コーナーで外からスーッと脚を伸ばしてポジションを上げていったが、「脚が溜まる場面がなかったです」と、それ以上の伸びは見られず、9着だった。

勝ったのはキャントウェイトと横山典弘騎手。なお、松山弘平騎手は発走直後に落馬し、規定により1点となった。

1日目を終えて、ポイントは3点。「前回より1点、多いですね」と本人は苦笑い。「うーん……」と唇を噛んだ。エキストラ騎乗2鞍でも存在感を示すには至らなかったが、地方競馬では逆転劇をたびたび見せてきたジョッキー。今年の地方競馬JCSだけでなく、19年もファーストステージで足切りをギリギリ免れての逆転優勝だった。そこにわずかな望みをかけて、2日目に向かった。

理想の競馬でも悔しい3着

2日目はエキストラ騎乗で存在感がやや増してきた。第1レースはダート1000メートルで出遅れながらも、脚を伸ばして5着。第8レースは未勝利馬での格上挑戦ながら、外から脚を伸ばして6着だった。

その第8レースで特大の存在感を見せたのがベテラン・横山典弘騎手。馬の気持ちに寄り添った大胆な騎乗で知られる彼は、このレースで2番手以降を10馬身以上離す大逃げを打った。本人は「ただ単に暴走しただけです」と謙遜したが、山本直アナウンサーが「遥か後ろの馬たちは前の影が見えているかどうか」と実況するほどの展開を、見事に押し切って勝利を収めた。

ここで“ヨコノリ・ムード”に大きく空気が変わった。

そうした空気の中、吉村騎手は第3戦でA評価アオハルブルースに騎乗。力強く追うタイプの彼にとって、ダートは得意とする舞台。一昨年も僅差の3着を演じた。

騎乗馬は昇級初戦。いきなりどこまで通用するかがポイントの1つであったが、当日朝、兵庫の先輩でもあり、同馬の前走に騎乗した岩田康誠騎手からこう情報を得られた。

「いい馬。トビが大きな馬なので、内で窮屈になるよりは、2~3番手外で運んだ方が走ると思う」

好スタートを決め、気合いをつけてポジションを取りに行くと、まさにその展開になった。3コーナーで逃げ馬に並びかけ、4コーナーで先頭に立った。あとは264.3メートルの直線をこのまま押し切るだけに思われた。ところが、直後から勢いよく脚を伸ばしたのは、アドバイスをくれた岩田康誠騎手の子息・望来騎手。D評価のマーシヴィガラスで力強く脚を伸ばして勝利を手にした。

吉村騎手は必死に追うも、さらに武豊騎手にも交わされて3着。

「理想の競馬で、自分の勝ちパターンになりましたが、最後に脚が上がってしまいました」。そして「勝ちたかったですけどね……」と続けた。

総合9位でも衰えぬ闘志

最終戦は新馬戦以来の芝レースとなるD評価・ショウナンヤッホー。1つでも上の着順を目指したが、後方のまま13着でフィニッシュした。

このレースを制したのは、第8レースで空気を一変させた横山典弘騎手。ミリオンクラウンで好位から脚を伸ばし。当シリーズ2勝目を挙げた。

こうなれば、横山典弘騎手の優勝は濃厚。63ポイントを獲得し、前身のワールドスーパージョッキーズシリーズも含め単独最多の3回目の優勝を決めた。

2位には、初出場で「小さい頃から日本のレースを見て育ったので、日本に来たいと思っていた」というザック・ロイド騎手(オーストラリア)。少年時代に学校で勉強した日本語は「ほとんど忘れてしまった」と言いつつも、「アリガトウゴザイマス」と挨拶した。

3位は短期免許でもおなじみのダミアン・レーン騎手(オーストラリア)で、シリーズ通してすべて掲示板内を確保した。

優勝した横山典弘騎手は「ここに出るだけでも大変。この年齢でこの場に立てて、まさか優勝できるなんて、ユタカ、辞められないね」と1年後輩で57歳のレジェンドに向けて笑みを見せた。

ベテラン健在をアピールした2日間。吉村騎手もデビュー25年目で兵庫ではベテランの域にさしかかってきた。今年は3月にオディロンでダイオライト記念JpnIIを勝って自身初のダートグレード制覇を果たしたほか、ゴッドフェンサーでは東京ダービーJpnI・5着と、一線級の舞台での活躍も増えた。

3回目のWASJは19ポイントで9位と振るわなかったが、「優勝するまで出続ける、という心です」と燃やし続ける闘志も、「WASJは3回目なので、いつも通りやることは変わりませんでした」と冷静に話す姿も、キャリアを積んできたからだろう。

地元に戻れば、10月の園田オータムトロフィーではゴッドフェンサーと兵庫三冠挑戦が待っている。過度に一喜一憂せず、着実な歩みを進めていく。


取材・文大恵陽子

写真桂伸也(いちかんぽ)、NAR