馬群を割って接戦制す
2年半ぶり重賞2勝目
3歳ダート三冠が創設され、ジャパンダートクラシックJpnIが10月上旬に行われるようになった2024年以降、シリウスステークスGIIIに3歳馬の出走がない。3歳馬は負担重量の恩恵があり、ハンデ戦でもあり3歳馬が出走してきた場合、ユニコーンステークスGIIIを勝っていたカフェファラオ(20年)が54キロで挑んで優勝。7月にジャパンダートダービーJpnIが施行されていた時代、2着に健闘した馬たちでは、オメガパフューム(18年)が53キロで出走して勝利を収めた。キリンジ(23年)は、それ以前にも兵庫チャンピオンシップJpnIIで2着の実績があったことも含め54キロと恵まれたが、12着と奮わなかった。ハピ(22年)は、ジャパンダートダービーJpnI・4着、レパードステークスGIII・3着を経て出走してきたが、53キロの軽ハンデで出走し、2着に追い込んできた。
ダート三冠の創設に伴い、3歳中距離のレース体系にも変化が生じた。不来方賞JpnIIがダートグレードとなり、9月上旬に施行。牝馬はマリーンカップJpnIIIが3歳限定となり、9月末か10月上旬に移行した。3歳馬はレース選択が広がった上に、古馬との対戦でフルゲートの激戦が想定されるシリウスステークスGIIIに目が行かなくなっている点は、少し寂しい印象を受ける。
その一方で、古馬の一線級は、頭数が少ない傾向が続いている日本テレビ盃JpnIIに向かう傾向が強い。また、今年はJBC開催が金沢競馬場で行われることから、アウトレンジのように59キロを背負うことがわかった上でも、コース経験を重視して白山大賞典JpnIIIに出走した馬もいる。シリウスステークスGIIIは、着実に力をつけて重賞に挑んできた新興勢力と、近況で賞金を加算できずにいる古豪が合い交わる戦いとなってきた。
ラムジェットは、ダート三冠が創設された24年に東京ダービーJpnIを制し、昨年のチャンピオンズカップGIで3着に健闘するなど実績面が重視され、今回はトップハンデの59キロを課せられたものの1番人気に支持された。2番人気のギュルヴィは、春に丹沢ステークスを勝ってオープン入りを果たし、重賞初挑戦となったマーキュリーカップJpnIIIで3着に食い込んだ。新興勢力の代表として、高い支持を受けた。
レースは、近2走で中団以降から運んでいたダイシンピスケスが馬なりで先頭に立ち、ギュルヴィが2番手につけ、早い段階でペースが落ち着く。前半5ハロンのレースラップは、12.6-11.4-12.1-13.6-13.1=62.8と、1コーナーを回った後の4ハロン目以降は急激にペースダウンし、16頭が団子状態で進む。ラムジェットはペースが上がる前に、好位を取りに行った。
スローペースの時は、勝負所で先行勢がペースアップし、後続に脚を使わせようとする。実際、後半5ハロンのレースラップは、12.8-12.6-12.1-12.3-12.7=62.5と、後半3ハロンのところでラップが上がっていることがわかる。ラムジェットの三浦皇成騎手が、激しく手を動かして喰らい付こうとしていることが、それを物語っている。
そのラップが上がっていた時に、馬群の中で手応え良く運んでいた古豪がいた。ヴァルツァーシャルだ。抜群のスタートを切ったが、リズムを重視した形で馬群の中で我慢させる。直線入口で、ラムジェットの内が空いていたと見るや齋藤新騎手は瞬時に進路を切り替えた好判断で、24年マーチステークスGIII以来、2つ目の重賞制覇に導いた。
どんな相手でも堅実に駆けていた近況を考えると、5番人気は意外と低評価にも思えたが、今年のマーチステークスGIIIで4着に敗れた時のハンデと同じ58.5キロを背負っていたことが影響したかもしれない。父のマクフィは、オールアットワンスやエーティーマクフィなど、芝短距離で活躍する産駒が目立っている。7歳馬とはいえ、今回見せた瞬発力は、マクフィ産駒が持つ天性のスピードがダートでも発揮されたと言えるだろう。
シリウスステークスGIIIはハンデ戦とはいえ、軽量馬より実績馬の活躍が目立つ。それだけ、古馬の層が厚いことを物語っているとも考えられる。オメガパフュームやカフェファラオなど、シリウスステークスGIIIを制した3歳馬は、その後のダート界を牽引する活躍を見せた。このような3歳馬は、ジャパンダートクラシックJpnIへ向かう公算が大きい時代となったが、ビッグレースへの出走を確実なものにしたい古馬たちの舞台として、シリウスステークスGIIIは重要な位置付けとなっている。
取材・文古谷剛彦
写真桂伸也(いちかんぽ)












