逃げ馬をねじ伏せJpnIで重賞初制覇
昨年覇者ウィルソンテソーロは3着
今年も例年同様、スポーツの日の3連休最終日に行われたマイルチャンピオンシップ南部杯JpnI。舞台となる盛岡競馬場は、10時の開門の段階で、入場を待つ人々の列が広大な駐車場の端まで延びるほど朝から盛況となった。レースのほか、場内に数多く設営された臨時の飲食店やイベントを楽しむ来場客は時を追って増えていき、宵の口の最終レースで行われたメインレースの時には、スタンド前のスペースは立錐の余地もないほどぎっしり。競馬場は最高峰レースの熱気に包まれた。
今年は、JRA所属が7頭、地元岩手所属が4頭の11頭立て。JRA勢では、昨年当レースの覇者ウィルソンテソーロ(1番人気)の参戦が注目されたほか、前走でエルムステークスGIIIを勝ってここに臨む4歳馬ルクソールカフェ(2番人気)や、芝で重賞5勝の実績を持ち、今回ダート戦に初めて挑むレーベンスティール(4番人気)の参戦も、戦前の耳目を集めた。
だが、まだ重賞勝利のない“チャレンジャー”たちが、展開の鍵を握ることとなった。ゲートが開くと、「逃げが“Aプラン”だった」という小崎綾也騎手に促されたストレングス(6番人気)が、すかさず先手を取った。一方、前走で早め先頭の競馬をしていたメイショウハチロー(3番人気)の逃げを予想する向きもあったが、福永祐一調教師は戦前から「これまで様々な形で競馬をさせてきた。どんな競馬でも出来る」と話しており、実は自在な運びには自信があった様子。発馬後すかさずストレングスの直後の位置を確保し、初めて騎乗する吉原寛人騎手にとってもこれは「過去のレースを見ての想像通り、イメージ通り」という運びだった。
2列目の外を、位置を求めたペリエール(5番人気)と、無理に競りには行かなかった地元岩手のヒロシクンが固めると、ルクソールカフェは更にその外、内から4馬幅目を回り、ウィルソンテソーロは、ずらりと並んだ2列目を見る形でその直後。先団の隊形が決まると、向正面を過ぎ、3コーナーを回るまでその並びに殆ど変化がなかった。初ダートのレーベンスティールは、戸崎圭太騎手が戦後「テンのスピードの乗りが違った」と振り返ったように位置が取れず、更に後ろの位置に甘んじた。
小崎騎手の「自分のペースを守りつつ、相手を牽制しつつ」という絶妙な騎乗により、ストレングスの作ったペースは、3コーナー過ぎまでの1000メートル通過が昨年よりもコンマ9秒遅い59秒2。この流れは、直後にいたメイショウハチローにとっても「前が少し残るぐらいのペース。理想的な展開」(吉原騎手)。他の馬たちは全て、この2頭、2人の騎手の術中にはまっていた。
最後の直線では、そのまま後続を突き放した両馬の一騎討ち。ストレングスがゴール寸前まで粘ったが、鋭い末脚で襲いかかったメイショウハチローがこれを捉え、3/4馬身先着。初の重賞制覇でJpnIのビッグタイトルを手にした。
ゴール後、メイショウハチローが満場埋め尽くした観衆の方まで進み出ると、人々は興奮を抑えきれないように「吉原」「ありがとう」などと次々に歓声を上げ勝利を祝福。吉原騎手も笑顔で手を挙げて、これに応えた。
大魚を逸した形のストレングス。小崎騎手はレース後「これがジーワンか……」といかにも悔しげにつぶやく。「4コーナーもリズムよく回って来られた。馬は最後まで力を出しているし、内容も良かった」と振り返った表情にも、無念さがにじみ出ていた。
一方、ウィルソンテソーロは伸びきれず、2着から3馬身差の3着に敗れた。「走れる分、頑張りました」との川田将雅騎手の短い談話から敗因を察するのは難しいが、今年と同じような位置から差して勝った昨年とはレースの流れが違ったことは間違いなく、そのほか馬の状態面などについては、続報と今後の動静に注目したい。
騎手としても当レースを2回制している福永調教師は、今回の勝利が調教師としてGI/JpnI初制覇。「騎手の時から縁のある競馬場で、初めて大きいレースを勝てたのも何かまた縁を感じる」と喜びを語るとともに、「亡き松本好雄オーナーが初めて預けてくださった馬で、ジーワンを勝つことが出来て光栄。恩義に少しでも報いることが出来たかなと思う」と、人との縁についても明かした。気になるメイショウハチローの今後の動向については、「間隔を詰めると(体に)カタさが出るので、JBCに関しては馬の体調と相談」と、見通しを話した。
これで、11月3日に行われるJBCの、3歳以上カテゴリーの前哨戦が全て終了。期せずしてその最後を、開催場である金沢所属の吉原騎手がしめた形となった。取材の最後には「自分も3競走騎乗するので、是非現地(金沢)か、モニターで応援よろしくお願いします」とPR。いよいよ、大一番が間近に迫っていることを、改めて印象づけた。
取材・文坂田博昭
写真いちかんぽ(佐藤到、早川範雄)
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福永祐一調教師
成長曲線的にはまだこれからかなというところはあったのですが、今回非常に体調も良く、長距離輸送も上手にクリアして、良い馬体で挑めました。枠も良く、騎手も上手く乗ってくれましたし、全てが完璧に運んだからこその勝利。今後は馬の体調次第ですが、来年のフェブラリーステークスには使いたいです。















吉原寛人騎手
理想的な展開で、直線で外にも出せて完璧でした。昨日今日は特に内枠がこういうコース取りで勝ち負けしていたので、馬場も向きました。使い出してから長く良い脚を持っているので、最後まで走りきってくれて感謝しています。レース後は凄い声援で感動しましたし、これが競馬の醍醐味だなと感じました。