直線抜け出しアタマ差で凌ぐ
JRA勢が上位3着まで独占
JBC2歳優駿JpnIIIは、今年も門別競馬場での開催。今年は事前の申し込みと抽選により一般入場者数を制限したが、それでも開門時刻を迎える頃には、JBCデーの始まりを待ちわびる200名あまりの来場客が列を作り、早い時間から場内を賑わわせた。
地方勢は北海道所属馬のみで6頭、JRA勢は全て1勝馬で5頭が参戦。経験においてまさる門別勢がJRA勢を凌駕する活躍を遂げることもしばしばあるだけに、気になるのはやはり今年の門別勢の力量だ。戦前、幾人かの調教師に今年の2歳戦の印象を尋ねたところ、この中距離のカテゴリーにおいては「レースのたびに勝ち馬が入れ替わり、混戦だった」と口を揃えた。その中で、タルマエドンを送り出す田中淳司調教師は、「JBC(2歳優駿)はやはりひとつの目標」と話し、またアンサラーなど3頭を出走させる角川秀樹調教師は、「春から秋までの半年で結果を出さなければならないのが門別の競馬。だから結果を求められる場だと思う」と、当レースに向けての意識を語る。それぞれに管理馬の健闘を誓う両師の言葉からは、当レースに向けてのこの地の関係者たちの、特別な思いが感じられた。
今年は、昨年よりも1時間10分早く15時40分の発走、この日を除いて全日程ナイター開催の門別のメインレースとしては、まだ陽がある中でのいつもと違う雰囲気の中、レースが始まった。
スタートは2歳戦らしくばらついたが、「能力はあるが気性面の難しさがどう出るか」(角川調教師)が注目されたソルデイスターはスタートを決め、予想通り他馬をリードする。アンサラー、イケメンモンスター、タルマエドンといった、実績ある門別勢がすんなりとこれに追随。一方のJRA勢は、2番人気のワンダーマーベルこそその直後の位置を取ったが、出負けした1番人気のオーリエイトは、鞍上の吉村誠之助騎手が懸命に馬を促しながら巻き返し、1コーナーまでに中団の外目の位置を確保。出遅れた3番人気のマルカルーカスは、最後方から挽回の機を窺う形となった。
2コーナーを回って3馬身ほどリードを取ったソルデイスターだったが、向正面ではペースがやや緩んだのか先団は固まり、3コーナーからは各馬我慢比べの様相となった。リードを保つソルデイスターに対して、好位にいた門別勢の手応えが苦しくなる中、外を回ってそれらを交わして進出したのがオーリエイト。直線半ばで粘るソルデイスターを交わし、あとは優勝のゴールへ……と思いきや、最後の最後、後方から追い込んで来たマルカルーカスが、明らかに違う脚勢で外からぐんぐんと迫る。見る者すべてが息をのんだゴール前の攻防は、オーリエイトがアタマ差凌いで先着。優勝をもぎ取った。
2着マルカルーカスの幸英明騎手は、「3~4コーナーでもう少し早く僕が動かしてあげられたら」と、自身のプレーを悔やんだ。発馬や道中の反応などに課題は残しながらも、終いは「ズブいなりに、こちらがアクションを起こした分だけハミを取ってくれた」と、馬の動きには手応えを感じていた様子。それだけに、僅かな敗戦に残念さが募ったようだ。一方、3馬身離されたとは言え3着と奮闘したワンダーマーベルの横山琉人騎手は、「外に勝ち馬がいたので、内を掬うしかなかった」と4コーナーのプレーを振り返る。苦しくなった門別勢が前に並ぶ狭い間隔を割って抜け出したシーンも「根性を出し、躊躇せずに入って行けた」と、2歳馬らしからぬ馬の立ち回りを称えた。
勝ったオーリエイトは、社台コーポレーション白老ファームの生産馬。表彰式に臨んだ同牧場の工藤和司氏は、「生まれた時から身体は大きかったが、気持ちは優しい仔。それがどんどん成長していった」と、生産馬の大舞台での活躍に目を細める。その気持ちの優しさがレースで災いする面もあるそうで、管理する小栗実調教師は「まだ荒削りで心配もあった」と、レース前の心中を語った。ただレース前日に自ら調教に跨がり、「状態の良さを感じ、大丈夫と思った」と、最終的には自信も抱きつつ馬を送り出したようだ。小栗調教師にとって北海道・日高は、浦河にあるBTC(軽種馬育成調教センター)などでJRA厩務員になる前の修業時代を過ごし「競走馬のイロハを教わった」場所。初めての重賞勝利を門別であげたことには、「有り難いことですし、恩返しと言ったらおこがましいが、印象に残るレースになった」と、感慨深げに話した。
レース後、改めて田中調教師と言葉を交わした。管理馬タルマエドンの6着という結果以上に、「やはり今年は中央の方がレベルが高かったね」と残念そう。「2歳戦全体の流れは、調教だけでなくそれより手前のセールなどでの競走馬の“仕入れ”の段階から決まっていく」と話す同師の言葉に、次の世代の戦いがすでに始まっていることを強く感じた。また来年、この舞台を賑わわせる馬たちの蹄音が、うっすらと聞こえてくるような気がした。
取材・文坂田博昭
写真いちかんぽ(岡田友貴、浅野一行)
Comment

小栗実調教師
派手な勝ち方ではありませんでしたが、ポテンシャルを持っていることは再認識しました。様々な課題がある中で、背中の良さや心肺機能の良さがこの馬のメリットだと思います。年内はオーナーと相談になりますが、来年に向け、地方重賞や海外など色んな選択肢の中からレースを狙っていきたいと思います。














吉村誠之助騎手
勝ててホッとしています。想定通りには行かず、道中で臨機応変に対応しなければならなかったのですが、非常に良く馬が応えてくれました。(ゴール前は)ヒヤヒヤしましたね。まだ改善すべき点もありますが、より大きい舞台を目指せると思っているので、人馬共に頑張っていければと思っています。