JOCKEYS HEART

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。

#04 竹ケ原茉耶(ばんえい帯広競馬)

  • 竹ケ原茉耶騎手
  • ばんえい帯広競馬
INTERVIEW
INTERVIEW

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの 想いをお伝えします。

きっかけは、家の馬のレースビデオを見て。

物心ついた時から、騎手志望。

 騎手になろうと思ったのは、「中学校卒業したらなる!」と言っていたので、その前かな。そもそもうちは親が馬主登録を持っていて、騎手や調教師の方と会う機会があって、身近だったというのがありますね。それと、自分の家の馬が走っているレースを1年分タビングしたビデオが家に届いていて、それを見たりしているうちに「騎手になりたい」って、親に言ったんだと思います。“ばんえい”を選んだのは、今から考えると甘かったのですが、平地※って落馬とか危険なイメージがあったけど、“ばんえい”はスピード勝負じゃないから、危なくないと思い込んでいて。それと親が“ばんえい”の馬主だったこともあって、入り方がわかっていたというのも大きいですかね。

※平地=障害レース以外の競馬レースのこと。
競走馬の背に鞍をつけて騎乗するスタンダードなレース。

中卒で競馬の道へ進むつもりが…。

 自分としては、中学校を卒業してすぐ北海道へ行くつもりだったんですけど、さすがに親は高校までは行って欲しかったらしく、知り合いの調教師の方に「高校だけは行け」と言ってもらうように、お願いしていたみたいです。私は私で、高校の卒業が近づいて、就職とか進学とか考える頃になると、騎手以外のことをしてもいいかなと思って、親にチラッと「競馬場に行かない」と言ったら、「行け」と。「行かないで、どうすんだ」くらいの勢いで言われました(笑)。結局、私も元々やるつもりだったので、卒業して厩舎に入って、2年後の試験まで厩務員として働いて。でも最初の試験は、たいして勉強していなかったので、一次試験の一般教養で落ちちゃいました。それで勉強して、再チャレンジして免許を取った感じです。

スタートからゴールまで、記憶なし。

初勝利も、喜び半分。

 デビュー戦は、まったく覚えてないです。覚えてないっていうのは、スタートからゴールまでの間がまったく記憶がなくて。レース前は、周りの騎手に「緊張してるのかぁ〜?」とイジられたのは覚えてますけど。からかうのが大好きな人たちなんで(笑)。でも、こっちはそんなの気にしている場合ではなかったです。覚えているのは、レースが終わって部屋に戻った時、手袋を脱いだら血が出ていたこと。たぶんレース中に、どこかにぶつけたんだと思うけど、夢中だったせいか、痛みは全然感じませんでした。

馬ソリに轢かれて、全身骨折。

 騎手になって思うのが、自分の力だけではどうにもならないことが大変だなと。自分と自分が乗る馬、それに一緒に走る9頭の馬がいて。雨や雪が降ったり、その日の馬のコンディションもあるし、自分だけ体調ととのえて「よし、行くぞ」と思ったところで、思い通りにはいかないので。それが、すごく大変だなと思います。あとは、平地は危ないイメージがあったから、“ばんえい”を選んだって言いましたけど、全然そんなことはなくて。馬ソリに轢かれましたよ。攻め馬※で後ろから馬が突っ込んできて、自分の馬と馬ソリの間に入っちゃって、馬はそのまま進んで、轢かれて。背中の骨が7本折れて、なんだかんだで全身十何本か折れて。この時は、馬のせいじゃないんで納得できたけど、もし馬のせいだったら、立ち直れたかわからないですね。

※馬の調教のこと。毎日行われる。

その馬にとって、一番いいレースをさせてあげたい。

私を知ることで、地方競馬を知ってもらえたら。

 騎手として心がけているのは、1着2着になれなくても、なるべくその馬の力を引き出して、いいレースをさせてあげること。“ばんえい”は、障害までに馬を止める※ことがあるので、例えばゴールまでに3回止めて2着でゴールした時、「あぁ1回止めなければよかった」や、「もう1回止めてあげればよかった」とか思わないレースをしたいです。止める、止めないの判断はレース結果に大きく影響するので。止める回数もそうだし、止めている時間も。障害の前で5秒止めたのと7秒止めたのでは、トータルタイムで10秒違うことがあります。あとは、最後の障害を下りてから追っていい馬、煽るのがいい馬、ハミをかける※のがいい馬、いろいろなタイプがいるんで、それを見極めてレースをしたいです。追っていい馬の場合、最後の障害を下りて早く追いすぎると、ゴールまでもたなかったりするので。レースが終わって自分に後悔がなければ、その馬にとって一番いいレースをさせてあげられたと思えるかな。

※ばんえい競馬は直線200mのセパレートコースで行われ、途中に2つの障害(台形状の山)がある。第1障害は低く、第2障害は高いので、第2障害の前で息をととのえるために意図的に馬を止める。

※“ハミ”という馬の口に噛ませる金具を口角にしっかりとかけることで、手綱から騎手の動きを伝えること。

予測不能が、ばんえい競馬のオモシロさ。

 “ばんえい”の魅力ですか?平地よりは人気通りにいかないところですかね。馬場や馬のコンディションで変動がおきやすいので。3連単で何百円とかみたことないし、万馬券がつくことが多いです。あとは馬が止まるところ。ゴール手前の5mから動かなくなる馬もいますし(笑)。最後まで何が起きるかわからないです。平地だったら、一番後ろからきてゴール手前の30m〜40mから一気にかわして1着になることはないけど、“ばんえい”はありますからね。だから、第2障害までは全然後ろの方にいても、自分の馬券が当たるかも!と思って見て欲しいです。