JOCKEYS HEART

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。

#06 深澤杏花(笠松競馬)

  • 深澤杏花騎手
  • 笠松競馬
INTERVIEW
INTERVIEW

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。

乗馬とは違うカッコ良さに魅せられて。

乗馬とは違うカッコ良さに魅せられて。

 もともと小学校4年生から乗馬をやっていて、馬が好きで、最初は牧場で働きたいと思っていたんです。でも、たまたまテレビで競馬を見て、最初は馬にしか興味がなかったんですけど、騎手が馬をゴールに導いているのを見て「あぁ、カッコいい」。乗馬とは違うカッコよさがあるなと思って、騎手になりたいと思いました。身長も低かったんで、一回挑戦してみようかなと。ただ、その時は水泳もやっていたので、乗馬と両立するのが難しくなって。水泳は中学校3年までやろうと決めていたので、乗馬はやめて、中学を卒業したら競馬の方に行こうと。卒業してからは競馬のことを何も知らなくて、いきなり教養センターを受けても受からないと思ったので、馬の学校に一年通って、翌年教養センターに入りました。

周りについていけなくて…。

 教養センターでは訓練ばかりではなく、旅行やキャンプなどのイベントが定期的にあって、その時は遅くまでワイワイおしゃべりしたり、騒いだりして楽しかったですね。先生も優しくなるし(笑)。あとは、ふだんは食事制限があるけど、イベントの時は好きなものを食べたり、飲めたりもするので。次の日までに体重を落とすのは大変でしたが(笑)。逆に辛かったのは馬をうまく御せなくて、なかなか周りについていけなかったことですね。自分ではやっているつもりでも、うまくできなくて。乗馬をやっていたけど競走馬とは違うので…。競走馬はガツガツ行くから、自分でしっかり制御しないとダメなんですよね。難しかったです。だから何回もやめたいと思いましたね。オーバーしたことはないけど、体重コントロールが難しかったり、同期とうまくコミュニケーションがとれなかったり。でも、自分で決めたことなので投げ出したくなかった。今はしんどくても、いつかはできるだろうと思って頑張りました。

不安だらけのデビュー戦。

不安だらけのデビュー戦。

 所属する競馬場は自分で希望を出せるんですが、私は騎手の人数が少なく、努力次第で乗鞍が増えると聞いて、笠松を選びました。でも調教師の先生が採用してくれなければ行けないので、調教師の先生に自分のビデオを送りましたね。笠松に行きたい理由とか、センターの成績を送ってアピールして、晴れて希望の笠松に所属することができました。デビュー戦は2020年の4月1日。ちょうどコロナで無観客だったので、緊張せずに乗れたという点では、よかったです。でも実際は、10頭立ての真ん中くらいだったので、「周りの先輩たちに迷惑かけたらどうしよう」って、レース前から不安だらけでしたね。ゲートが開いたら、先輩たちも新人だから何をやらかすかわからないので、チラチラ見ながらレースをしてくれるんですけど、なかなか距離感がつかめなくて。内に入ろうと思っても、「まだいるからダメだ」という感じで、結局ずっと外を回らされてゴールした感じでした。

いくつものパターンを、頭に。

 レース中は常に、馬の負担にならない乗り方を心がけていますね。お尻がついちゃうと馬の負担になるので、お尻をつかないように体幹で自分の身体を支えて乗る感じです。でも理想と現実は違って、いつも苦労しているのが現状です。レース前は3日前に乗る馬が決まるので、それからは過去のレース映像を見て、自分が乗る馬や対戦する馬の研究をします。「この馬はこう来るだろうから、こうしよう」とか、色々なパターンを頭に入れておくんです。でも実際ゲートが開いたら、予想していたパターンと違うことがあるので、次のパターン、次のパターンという感じで切り替えて。でも思い通りにうまくいくことはほとんどないですね。人気馬の後ろにいたら、その馬が上がったら一緒に上がれると思っていたら、逆に下がってきて自分の馬も下がってしまったり。だから、面白いという部分もあるんですけどね。

声援が、エネルギー。

声援が、エネルギー。

 自分の夢は、リーディングをとれるような騎手になること。かなりハードルの高い目標ですね。早く乗れる騎手になって、いい馬にどんどん乗せてもらえるようにならなきゃです。今はあまり人気のない馬に騎乗することが多くて、人気馬よりはプレッシャーなく乗れるので、掲示板は狙おうとか、この馬には負けないとか目標を決めて、色々試しています。デビュー当時は無観客だったけど、その後入場制限が解除されて、お客さんも入るようになって。コロナ対策のため、大声での声援は控えてもらわなくてはいけないんですけど、やはり声援は励みになりますね。最後の直線では声が聞こえるので。自分への声援じゃなくても、頑張らなきゃという気持ちになって、もうひと段階ギアがあがります。だから、せび競馬場に来てレースを見て、馬や騎手を応援してもらいたいですね。