どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。
#11 塩津璃菜(兵庫競馬)
- 塩津璃菜騎手
- 兵庫競馬
どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。
ジェットコースターが好きで、競走馬でもスピードを感じてみたかった

小さい頃からやんちゃで暴れまわっていました。保育園の時は木登りが得意で、鬼ごっこで捕まらないように木の上に登ったりとか。高い所が好きっていうのもあって、初めて馬に乗った時は逆に低いなと感じました。
乗馬を始めたきっかけは馬が好きだったから。小学4年生の時に自宅近くに乗馬クラブがあると知って、「行ってみたい」と親に伝えたら、すぐに「いいよ」と言ってくれました。馬に乗っていると上下の揺れが心地よくて、始めた頃はすぐ眠たくなっていました。寝ながら乗っていたこともあったかも(笑)。手綱を引っ張る時に滑ってしまったりしたので、握力をつけました。乗馬の大会とかに出てみたいなと思っていて、乗馬クラブが休みの日以外はほぼ週6日通って、他の習い事はすべて辞めました。
そこからジョッキーになりたいと思ったのは、スピードを感じてみたかったから。速い乗り物が好きで、ジェットコースターは先頭で乗りたいタイプなんです。両親は競馬はしないんですけど、気持ちを伝えたら賛成してくれました。
地方競馬教養センター入所前に厩務員として働いた日々
地方競馬教養センターを受験したんですけど、体力がなくて懸垂もできなくて不合格。その後、長南和宏厩舎で厩務員として働きました。きっかけは園田・姫路競馬で昔、ジョッキーをしていた方が岡山の銀行で働いていて、父が知り合ったことです。その方に長南調教師を紹介してもらって、すぐに「働きたいです」と伝えました。
西脇トレセンに住み込みでアルバイトをしていたんですけど、振り返ると地獄のような日々でした(苦笑)。深夜1時に起きて、ジョッキーが調教で乗る馬を厩舎から馬場まで乗って行って、調教が終わったら手入れ。たまに丸馬場でダクを踏むこともありました。競走馬は速歩でも走るペースが速くて、思った以上に引っ掛かるなって思いながら乗っていました。
毎日ハードに動く分、すごくお腹も空いて、厩務員さんにスーパーに買い物に連れて行ってもらってお肉や野菜をたくさん買って、炒め物を作ったり自炊していました。冷蔵庫にある物で適当に作るんですけど、最近は肉巻きおにぎりが得意かな。
心臓がバクバクだったデビューの日

デビューの日はすごく緊張していました。西脇トレセンから園田競馬場まではジョッキーみんなで専用バスに乗って移動することになっていて、車中では寝るんですけど、この日は心臓がバクバクして寝られなかったです。ゲートの中でも「上手く出られるかな?」と心臓がバクバクしていました。でも、乗っていた馬が経験豊富な馬だったので信用して乗ることができました。
結果は12着。馬にずっと頼りっきりだったので、自分も進歩しなきゃと思いました。反省することばかりで、その日は部屋に帰ると布団に潜り込んで一人反省会をしていました。
初勝利の騎乗馬は元々、下原理騎手がよく乗っていたので馬を信用して乗りました。ワンターンの820m戦だったのでスピードについていけるか不安だったんですけど、意外と大丈夫でしたし、馬もゲートから速かったのでよかったです。勝ってひと安心しました。その時から「わたし、ジョッキーになったんだな」と少しずつ思い始めました。
低い姿勢で乗れるように

いまの目標は、鴨宮祥行騎手みたいなカッコいいジョッキーになること。騎乗フォームも追う時の姿勢もカッコいいなと思います。調教でもレースでも、姿勢を低く、背中を真っ直ぐにして乗れるよう意識しています。でも、なかなかできなくて。体が硬いので、股関節をほぐしたり、テレビを見ながらストレッチをしています。
その手前の目標としては、ゲートを出た時の姿勢をもうちょっと折りたためるようになりたいです。
毎日深夜1時20分から、多いと約17頭の調教に乗る日々なんですけど、いま好きな馬がいるんです。所属厩舎の馬で、馬房に行くと抱きついています。ちょっと嫌がられることもあるけど、たまに心を許してくれて、それが癒しの時間です。