女性騎手たちと親交のある、
競馬リポーターの大恵陽子さんが、
彼女たちの日々の様子や
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発信していきます。
(毎週金曜 更新予定)

COLUMN

Vol.47 来年の目標!


早いもので、2021年も今日で終わり。
今年2月にオープンしたこの「LADIES JOCKEYS」のサイトや当コラム「Yoko’s Weekly Report」をご覧いただいたみなさま、ありがとうございます。

大晦日の今日も水沢、大井、笠松、園田、高知でレースが行われ、元日の明日は川崎、名古屋、高知で開催があります。

変わらず競馬は続いていきますが、1年の区切りを迎えて今年の振り返りと、来たる2022年の目標をみなさんに聞きました。
五十音順に、どうぞ。

神尾香澄騎手(川崎)

トップバッターは今年4月にデビューした神尾香澄騎手。
元々はサッカー女子で、フォワードで静岡県女子選抜チームに入ったこともありました。

川崎競馬では2003年5月に引退した戸川理彩さん以来3人目となる女性騎手で、神尾騎手のデビューに合わせ、川崎競馬場には女性騎手控室が作られるなど、環境も整えられました。

「デビュー当時は全く余裕がなかったのですが、先輩方が厳しくも温かく指導してくださり、2021年は大きな怪我などもなく無事に過ごせました。
まだまだ注意されることもありますが、しっかり受け止めて一歩ずつ成長していきたいです」

どの業界でも1年目は注意されることが多いものですが、素直に受け止めて自分の糧にできているのは素晴らしいことです。

「来年の目標は、納得のいくレースをすることです。
自分はもちろん、馬主、調教師、ファンの方、他の騎手、多くの人が納得してくれる騎乗をしていきたいです。そこまでの道のりは険しいと思いますが、自分のするべき努力をして、どんなレースも一生懸命に乗っていきます!」

木之前葵騎手(名古屋)

今年9月29日、スタートで落馬して鎖骨を骨折した木之前葵騎手は、ジョッキー人生で初めての手術・入院をした一年でした。

「怪我をして3ヶ月間、休んだ年になりましたが、入院中にレースを見ていると『早く乗りたいなぁ』と思いました。改めて馬に乗ることが好きなんだということを実感しました」

手術後は復帰への焦りや不安を抱えるジョッキーも多いと聞く中、馬への愛情が気持ちの支えとなったようです。

そして、1月1日の名古屋競馬で復帰が決定しました!
初日は1レースと2レースの2鞍。まずは無事に復帰戦を終えてほしいと願います。
女性騎手だけによる戦い「レディスジョッキーズシリーズ(LJS)」も10年ぶりに復活し、来年は参戦したい気持ちを強く持っています。

「休んでいた分、来年はたくさんレースに乗りたいです。
11月23日から始まったLJSは盛岡も高知も怪我で騎乗できず、2月18日名古屋での2戦を残すのみですが、そこは勝ちたいです!」



  • ▲ちょっぴりピンボケですみません。昨年2月のレディスヴィクトリーラウンド(LVR)佐賀で木之前葵騎手(左)と中島良美騎手

佐々木世麗騎手(園田・姫路)

今年4月にデビューし、12月28日時点で86勝を挙げる活躍でデビューイヤーを飾りました。
園田・姫路競馬ではここ何年間かで劇的に減量制度が変わったため、単純比較が難しいにせよ、兵庫県競馬の新人最多勝記録の44勝、女性騎手の新人騎手最多勝記録(デビューから1年)の66勝を更新して新しい風を吹き込みました。

順調なデビューイヤーとなったように見えますが、本人としては悔しさも抱えているようです。

「もったいないレースがたくさんあったな、と思います。取りこぼしをなくしていきたいです」

そう思えるのも、プロとしての高い自覚と、多くの経験を積んだからこそでしょう。来年の目標はこう話します。

「今年の勝利数を更新することです。それはこれから毎年続けていきたくて、デビュー1年目より2年目、3年目と、どんどん上手になっていくのだから、勝利数も上げられると思います。実際にそうするのは難しいことだと思いますが、目標ですね」

関本玲花騎手(盛岡・水沢)

今年はNHKドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」にもエキストラ出演した関本玲花騎手。
騎手としては今年を振り返ってどうだったのでしょうか?

「去年は脱臼してしまって休んだ時期がありましたが、今年は大きな怪我をせずに無事に過ごすことができて良かったです」

12月は水沢競馬が雪による中止が続きましたが、怪我なくオールシーズンを戦えたことは大きな意味があるようです。

さらに、プライベートでは「ずっとしたいと思っていたヘアドネーションをして、微力ではありますが、人の役に立てることを初めてできたなと思います」とのこと。

ヘアドネーションとは、病気などで髪の毛を失った子どもたちのために自分の髪の毛を寄付し、ウィッグを作る活動です。
髪の毛を寄付するには、ある程度の長さが必要で、関本騎手はロングヘアに伸ばしていたのですが、バッサリと短くしたのでした。

さて、来年の目標は「乗り方を少し変えてみたところがあるので、そこをもっと自分の理想に近づけて今より追えるようになりたいです」ということ。

どこをどう変えたのか、気づいた方、いらっしゃいますか?
来年も関本騎手の騎乗に注目ですね。

竹ケ原茉耶騎手(ばんえい帯広)

世界で唯一、馬がソリを曳いて障害を越えながら力と速さを競うばんえい競馬。
そこで活躍する竹ケ原騎手は

「今年は勝てなかったです」

と肩を落としました。

ばんえい競馬は北海道開拓の歴史から生まれたとあって、人と馬が一緒に生きている雰囲気を受けるのですが、竹ケ原騎手は4頭のばん馬の世話もしています。

「初勝利を挙げたヤマトハンターの孫・フウリンカなどを担当しているのですが、今年は担当馬を勝たせてあげることもあまりできませんでした。他の騎手が乗った時でも、やっぱり担当馬には勝ってほしいなと思います」



  • ▲初勝利を挙げた馬の孫で、自身でお世話もするフウリンカと竹ケ原茉耶騎手

ただ、最近は馬場が軽いという話も聞こえてきます。
ばんえい競馬といえば、障害を上る時などに何度も止まって馬の体力を回復させて、また少し進んでは息を整えて、というレースをイメージしますが、少しレース内容に変化があるようです。

「脚がない馬はなかなか勝つのが難しくなっています。
スタートから第2障害までが速くて、ついて行けないと勝負にならないですし、ついて行けても第2障害や降りてから止まってしまうこともあるんです」

以前のようなパワーが求められる馬場を望む声もあるようですが、現状で勝つことも考えていきたいところ。

「来年は担当馬をもうちょっと勝たせてあげたいですし、自分自身もレースに騎乗して勝ちたいです」



  • ▲LVRばんえいエキシビションでは宮下瞳騎手と談笑

中島良美騎手(浦和)

コロナ禍の今年は都市部を中心に、感染状況に応じて無観客競馬となることも少なくありませんでした。
特に南関東4場(大井、船橋、川崎、浦和)では無観客期間も長く、中島良美騎手はいろんなことを感じたそうです。

「コロナ禍が続く中、開催を継続させていただけたことに大変感謝しています。
有観客開催が再開されて、お客様の声援のありがたみを改めて感じた1年でもありました」

一方で中島騎手自身は今年、肩の脱臼に悩まされました。

2月末、調教中の落馬で亜脱臼し、翌月に再び脱臼。
リハビリを経て復帰すると、しばらくは脱臼をせずに過ごせていたのですが、ヤングジョッキーズシリーズ川崎第2戦のパドックで騎乗時に再び脱臼してしまいました。
これまで脱臼癖はなかったのが、急にこのような事態になり、脱臼するたびに無念さや悔しさを募らせていたことと思います。

来年の目標も、やはりそれに関連して
「怪我が多い1年だったので、まずは焦らずしっかり怪我を治すことを来年の目標としたいと思います」
とのこと。

手術を終え、復帰に向けた準備を進めているようで、またレースに戻ってくる日を待っています。

濱尚美騎手(高知)

濱騎手も昨年10月、レース中に落馬し左大腿骨を骨折するという大怪我がありました。
足の大きな骨で、療養中に落ちた筋肉を戻すことにも時間を要し、レースに復帰したのは今年2月28日でした。

「怪我を乗り越えて、馬に乗せていただけることへの感謝の気持ちが何よりも深まりました。
今まで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなく、たくさんの事や人に感謝の1年になりました」

その一つは、不安な思いで過ごしていた療養生活中に届いたファンからの応援の言葉でもありました。

「来年の目標は『今の自分を越えること』です。
数字では、騎乗数も勝ち鞍も今年より多くしたいです。誰かと比べるのではなく、自分自身に勝ちたいです」



  • ▲濱尚美騎手(左)と深澤杏花騎手(右)

深澤杏花騎手(笠松)

昨年4月にデビューした深澤杏花騎手は今年、レースに乗りたくても乗れない時間が長く続きました。
まだデビュー2年目で、たくさん乗って、たくさん考えて、時に失敗しながらも前に進んでいきたかったことと思います。
それでも、先を見据えた時間の過ごし方をして乗り越えました。
以前、コラムで取り上げたパーソナルトレーニングなどもその一環でしょう。

「今年は自粛期間もあり、騎乗の機会が少ない一年でした。
自身を見つめ直し、競馬再開後は目標としていた1開催に1勝ペースで勝てて良かったです」

来年の目標はこう話します。

「積極的な騎乗を心掛けて、今まで以上にチャンスをもらえるように頑張ります。
目標は、昨年以上に勝利することです!」

12月27日時点で、2021年は10勝。
来年はさらなる飛躍を期待しています。

宮下瞳騎手(名古屋)

今年11月に女性騎手初の地方通算1000勝を達成した宮下瞳騎手。

「自分でやると決めたことだから」と、慌ただしい日々に手を抜くことなく、家事も仕事も丁寧に取り組む姿に「私もがんばろう!」と背中を押されている人も多いのではないでしょうか。(私もその一人)

しかし、1000勝への道のりは平坦ではありませんでした。
5月には騎乗馬がレース中に故障し、落馬。
脳震とう、肋骨骨折、肺挫傷、さらに後日、首の骨折も判明し、約1週間は激しいめまいと吐き気に襲われていました。

「今年は怪我があって、少しリズムを壊した時がありましたが、みなさんのおかげで目標にしていた1000勝を達成できて本当に嬉しかったです。
本当に皆さんに感謝しています」

来年の目標については
「復帰してから鼻の骨折や5月の落馬など怪我をしているので、来年は怪我をせずに無事に1年を過ごしたいと思います」

と、まずは無事にオールシーズンを戦うことを前提に「また年間100勝を達成したいです」と、2年ぶりの記録への意気込みを話しました。

来年も女性騎手みなさんの無事のご活躍を祈っています!

  • 大恵 陽子競馬ファン歴25年 女性競馬リポーター

    グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。

  • 大恵 陽子
    競馬ファン歴25年
    女性競馬リポーター

  • グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。