女性騎手たちと親交のある、
競馬リポーターの大恵陽子さんが、
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(毎週金曜 更新予定)

COLUMN

Vol.50 初心を忘れずに


先日発表されたJRA賞馬事文化賞は書籍「馬のこころ 脳科学者が解説するコミュニケーションガイド」が受賞しました。

馬の調教や騎乗者の指導に脳科学を取り入れる認知科学者のジャネット・L・ジョーンズ氏の著書を和訳したもの。
昨夏、「競馬場カバンの中身を教えてください!」と木之前葵騎手(名古屋競馬)に取材した時

「最近はこれを持ち歩いて読んでいます」

と話していたのが、まさにこの本でした。

「馬の気持ちを分かりたくて、買ってみました」

と、発売から1カ月経たずして読みはじめていた木之前騎手。

「この本を読んでいると、初心に戻れます。
あー!私、元々は馬が好きだったのに、こういうことは良くなかったのかな?と、読みながら考えます」

と、馬に接しはじめた頃を思い出し、いろんなことを考えたようです。

ジョッキーとして馬と接するようになってからは様々な葛藤もあったことでしょう。
その時々で最善を尽くしてきたつもりが、時を経て振り返るとそうじゃなかったのでは!?と自責の念に駆られたこともあるかもしれません。

これって、競馬に限らず私たち一般社会でもある話。
一生懸命に、かつ丁寧に対応すべきと取り組んだ案件が、あとから振り返ると「やりすぎだったかもしれない」と感じることもあります。

ふとした瞬間に立ち止まり、初心に帰って考え直す時間は必要なのかもしれません。

そうそう、「初心」と言えば、木之前騎手の重賞初制覇は新春ペガサスカップをカツゲキキトキトで勝ってのものでした。

今年の新春ペガサスCは今週18日に行われたように、本来は1月に実施されるのですが、カツゲキキトキトが3歳だった2016年は雪で延期され、3月の名古屋大賞典当日に組まれたのでした。

前走の重賞・スプリングカップでは兄弟子の大畑雅章騎手が乗って8馬身差の圧勝。
その時、すでに次走の新春ペガサスCでは木之前騎手が乗ることが決まっており

「自分はどうなるんだろう」

と不安も感じたようです。

迎えた当日、単勝は1.4倍の支持を集める抜けた存在。
周りの関係者からは冗談半分にレース前から「おめでとう!」と言われて緊張した一方、スタート前は「意外とワクワクしていました」といいます。

レースは3番手外から運び、4コーナーでは先頭と2馬身ほどの差があって交わせるか不安もあったようですが、「ステッキに反応してくれました」と、直線で5馬身差をつけて勝利を収めました。

さて、話を書籍に戻し、木之前騎手に“読んでいる範囲で”要約をお願いました。

「扱い方の基本が書いてあります。馬を従わせる方が手っ取り早いので人間優位にやりがちですけど、本当は違うんだよ、という内容で、馬に理解させて行動を促すことがいいんです、というような内容でした。
まだ読了できていませんが、馬のことを考え直しました」

私も近々、読んでみたいと思います。

  • 大恵 陽子競馬ファン歴25年 女性競馬リポーター

    グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。

  • 大恵 陽子
    競馬ファン歴25年
    女性競馬リポーター

  • グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。